花火と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは夏の夜空に広がる美しい打ち上げ花火です。
しかし、花火大会と言えば、その楽しさと同時に人混みや渋滞、そして家族連れやカップルで賑わう風景が目に浮かびます。
実を言うと、私はこれまで花火大会に行ったことがありません。
理由は単純で、人混みが苦手なのです。
それに、ひとりで花火大会に行くというのも、どうも気が引けてしまうのです。
花火大会というものは、その華やかさとは裏腹に、行く前からの大変さがついて回ります。
まず、どこで開催されるかを調べ、どうやってそこまで行くかを考える。
そして、当然のことながら、花火大会の日は周辺の道路が大混雑し、電車も混み合います。
それに加えて、会場に着いてからも場所取りの戦いが待っているのです。
これらを考えると、どうしても「花火を見たい」という気持ちが冷めてしまうのです。
でも、花火を全く見たことがないわけではありません。
そういえば、昔働いていた会社の近くで毎年大きな花火大会が開かれていたのを思い出します。
夏の夜、仕事に追われていると、ふと窓の外が明るくなり、花火の音が聞こえてくるのです。
その瞬間、仕事の手を止め、みんなで屋上に駆け上がりました。
サービス残業の一環として、全員が屋上に集まっては、わずかな時間だけでも花火を楽しむというのが、当時の会社の夏の恒例行事だったのです。
その屋上から見る花火は、まさに特等席からの眺めでした。
遮るものが何もなく、広がる夜空いっぱいに次々と打ち上げられる花火の美しさは、仕事のストレスを一瞬でも忘れさせてくれるものでした。
みんなでワイワイと「次は何色かな?」とか「この花火、すごく大きいね」と話しながら、笑顔を交わしていたのを覚えています。
そして、花火が終わると、またそれぞれのデスクに戻り、何事もなかったかのように仕事に戻るのです。
そのギャップが、妙に心に残るものでした。
とはいえ、あの屋上でのひとときが、私にとっての花火の思い出のすべてではありません。
やはり、花火大会には独特の雰囲気があります。
屋上からの静かな観賞もいいのですが、大勢の人々と一緒に歓声を上げるのも、きっと楽しいのでしょう。
それに、花火大会には屋台や出店が立ち並び、夏祭りの醍醐味を感じられるのです。
たとえ一人であっても、その場の雰囲気を味わうだけでも価値があるのかもしれません。
結局のところ、私は花火大会に行くことに対して二の足を踏んでしまう自分がいます。
それでも、あの会社の屋上で見た花火の美しさは、今でも私の心の中に残っています。
花火大会に行かなくても、あの特別な瞬間を共有した同僚たちと過ごした時間が、私にとっての夏の思い出となりました。
考えてみれば、ひとりで花火大会に行かなくても、心の中に刻まれたあの瞬間が、私にとっての「花火大会」だったのかもしれません。
今でも花火大会のニュースを目にすると、あの頃のことを思い出します。
そして、いつか、もう少し人混みに耐性がついたら、勇気を出して一人でも花火大会に足を運んでみようかと思うのです。
そのときは、あの屋上から見た花火とはまた違った、特別な思い出ができるかもしれません。
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