週末にニュース番組でチラッと見たアメリカ大統領の就任式。
8年前。オバマ大統領誕生の時のあのワクワクとした気持ち。
人種や宗教の違いを乗り越えて手と手を取り合おうと語りかけたカリスマ大統領の姿に感動。
ニュース番組だけでなく、スカパーのCNNやBBCでもその姿を追いかけていました。
それに引き換え今回は・・・(あわわ)
21世紀になって17年。
まさか人種差別や女性蔑視の発言を繰り返していた人物がその中心にいることになるとは・・・
唖然・愕然・呆然。
ガッカリとした気持ちでニュースを見てました。
そんなタイミングでこの本を読み終えました。
時は1913年。
今から100年余り前の実話です。
激しい人種差別がまだあったアメリカ南部のアトランタ。
そこで白人の少女が殺されました。
逮捕されたのはユダヤ人のレオ・フランク。
しかし、この逮捕、十分な捜査がなされずと言うか・・・
南北戦争以来、南部と北部の貧富の差が広がりつつあった20世紀初め。
ニューヨーク出身で高学歴で工場の管理職にあったユダヤ人男性の白人層からの僻みや妬み・差別が生んだ冤罪でした。
ネットのない1913年。
しかし、メディアの報道で人々がヒステリックになり、世論を作っていく様は、どこか現代に通じるものがありました。
また、工業化の波に乗り遅れ貧困に苦しむ南部の白人達が、自分たちの窮状の原因を自分たちの努力不足ではなく工場を経営するユダヤ人達だとする考え方も、移民が職を奪うと言い放つ現代に似ているように感じました。
怖ろしいことに、数々の疑問を残したまま、世論に流され陪審員達はレオを有罪とします。
そして、その流れに裁判官さえもレオの有罪に疑問を持ちつつ贖えなかったのです。
全米のユダヤ人社会からの運動や他州からの現地の報道への疑問に動かされ、知事が再捜査を試みるものの、今度はこの知事が窮地に追い込まれるのです。
そして、再捜査を待たずに、レオは暴徒化した白人達の私刑により命を奪われます。
彼の無実が証明されるのは事件から70年以上も経った時の事。
当時まだ少年だった男性の告白からです。
読みながら感じた怒り・絶望感。
そして、怖いほどの現代との共通点。
同じ過ちが繰り返されないことを祈らずにはいられませんでした。