第21話:ORの話(1)ランダム到着の場合の到着間隔の分布
OR(オペレーション・リサーチ)は数学的手法を使った仕事のためのツールである。
有名なのは、古い話であるが、第2次大戦でベルリンに包囲されたアメリカなどの軍隊に対するリニアプログラミング応用の補給計画。などが有名である。
企業では、予測誤差の理論の基づく在庫管理や、待ち行列理論の応用で、受付窓口の計画など各方面で使われている。専門的に使うには、少しばかり勉強が必要だが、おおよその事を知っていれば、通常の算術的な考えから抜け出して、新しい視点から仕事の合理化を考えることができ、思いがけない成果を得ることが出来る場合もある。
アサヒ芸能という雑誌からのスクラップである。「黒い報告書」「美人ママの別れ話に逆上した中年男の不覚」思わず読んで見たくなる表題である。書き出しは、「飛行機が一機落ちると、次から次に落ちるし、警官の不祥事が一つ起きると、続けて起きる。どういう訳でこう同じような事件が続いて起きるんだろうな。航空機事故も警官の非行も滅多にないことなのになあ。この記事を読んでみろよ」と私は後輩のY刑事にその日配られた6月12日付のA新聞の記事を指で示した。云々・・・と続く。美人ママのことは気になるが、ここでは、ここにある「たまに起きることは続いて起きる」ことに焦点を合わせよう。
OR的には同じ問題を提起しているもう一つの記事を見てみよう。これもアサヒ芸能のコラム記事からである。
表題は「エラー偶発論は疑問」とある。内容を紹介してみる。
「エラーは偶発的現象だから仕方が無い。問題はエラーしたあと、どう処理するかだ」プロ野球のどの監督もこういう。しかし、エラーは本当に偶発的現象なのか。私はエラー偶発論に疑問を持つ。

吉田(阪神)は昭和28年入団以来、39年までの12年間に1481試合に出場、その間、288個のエラーを記録している。つまり502試合に1個のエラーの割合である。
広岡(巨人)は同じ要領で昭和29年以来、やはり39年までに1213試合に出場。227エラー、5.3試合に1個のエラーである。
この数字を比較すると、吉田、広岡の技術は全く互角といっていい。ところが、エラー内容を分析してみると、実は両者に大変な差があることに気がつく。
吉田は一度エラーをすると、やたらにポロポロはじく。逆に広岡は安定したベースでエラーを繰り返している。次の表を見ていただきたい。吉田は2試合連続エラーが57回広岡は25回。だが吉田は10試合以上間隔が空くと殆どエラーしていないのに、広岡は着実に(?)
繰り返している。このことは、精神的に動揺しやすい神経質な吉田は、1個のエラーでガクット参る。見かけは神経質だが実際はタフな広岡は、くよくよしないで気分転換が上手いから、エラーしても翌日の試合ではケロッとしているからではないだろうか。吉田、広岡だけの話ではない。このことは誰にでも通じる話ではないのか。エラーにはだから偶然的現象そのものよりも、選手個人の性格によってひょこひょこと顔を出してくるものだと思うのだが。

さて、雑誌からの引用ばかり並べたが、最後に私が乱数表から作成した「ランダム到着の場合の到着間隔の分布」のグラフを掲げる。この図は前掲の野球の図と殆ど同じ性格の表であることがわかると思う。
表の作り方について補足をしておくと。乱数表というのは0から9までの数字がランダムに並んだ数表であり、そのランダム性が検証されている表である。図の平均0.2の時の実線は、その乱数表の始点から数字を読んでいって、「0と1」が出る間隔をその間隔の頻度別にプロットしたものである。(例えば3・5・9・6・2・1・0・7・4・1・8・0・)の間隔は先ず1と0が続くので間隔0が1回。次いで0から7と4を超えて1となるので間隔2が1回。次ぎは1から8を超えて0が来るので間隔1が1回・・・のように数える。
図の平均0.4の時の実線は「0,1,2,3」の4つの数字が表われる間隔を同じように数えた間隔の数字の出現頻度をプロットした物である。
なお、図の0.4の時と0.2の時の点線で書いてあるものは、このような作業を無限にやったときの理論線である。
例えば1分間に平均4回エラーが発生する場合と、1分間に平均2回エラーが発生する場合のエラー発生間隔の分布はこの図のようになるということなのである。
この図のように到着間隔ゼロ。即ち続いて起きる確率が一番高いことが理解できることと思う。
長くなったが、要するに事故などは続いて起きる確率がいちばん大きいと言うことであり、その傾向は平均発生率が多いときは勿論だが、たまに起きる時でも続いて起きることが一番多いのである。
またこのことが分かれば、野球のエラーの話はグラフの間隔12回以後の部分で吉田の線が低くなり、広岡の線が高くなている部分的なところに目を注いで誤った判断をしており。また筆者の言うこととは矛盾して、このグラフは、エラー偶発論(ランダム発生)が概ね正しいことを証明しているものだと言うことが分かる。
算術的な数字に捉われず、グラフを理論的な目で見れば、明らかに広岡がエラーの少ない選手であり、吉田が広岡に及ばない実力の差は明らかだと判断できるのである。
OR(オペレーション・リサーチ)は数学的手法を使った仕事のためのツールである。
有名なのは、古い話であるが、第2次大戦でベルリンに包囲されたアメリカなどの軍隊に対するリニアプログラミング応用の補給計画。などが有名である。
企業では、予測誤差の理論の基づく在庫管理や、待ち行列理論の応用で、受付窓口の計画など各方面で使われている。専門的に使うには、少しばかり勉強が必要だが、おおよその事を知っていれば、通常の算術的な考えから抜け出して、新しい視点から仕事の合理化を考えることができ、思いがけない成果を得ることが出来る場合もある。
アサヒ芸能という雑誌からのスクラップである。「黒い報告書」「美人ママの別れ話に逆上した中年男の不覚」思わず読んで見たくなる表題である。書き出しは、「飛行機が一機落ちると、次から次に落ちるし、警官の不祥事が一つ起きると、続けて起きる。どういう訳でこう同じような事件が続いて起きるんだろうな。航空機事故も警官の非行も滅多にないことなのになあ。この記事を読んでみろよ」と私は後輩のY刑事にその日配られた6月12日付のA新聞の記事を指で示した。云々・・・と続く。美人ママのことは気になるが、ここでは、ここにある「たまに起きることは続いて起きる」ことに焦点を合わせよう。
OR的には同じ問題を提起しているもう一つの記事を見てみよう。これもアサヒ芸能のコラム記事からである。
表題は「エラー偶発論は疑問」とある。内容を紹介してみる。
「エラーは偶発的現象だから仕方が無い。問題はエラーしたあと、どう処理するかだ」プロ野球のどの監督もこういう。しかし、エラーは本当に偶発的現象なのか。私はエラー偶発論に疑問を持つ。

吉田(阪神)は昭和28年入団以来、39年までの12年間に1481試合に出場、その間、288個のエラーを記録している。つまり502試合に1個のエラーの割合である。
広岡(巨人)は同じ要領で昭和29年以来、やはり39年までに1213試合に出場。227エラー、5.3試合に1個のエラーである。
この数字を比較すると、吉田、広岡の技術は全く互角といっていい。ところが、エラー内容を分析してみると、実は両者に大変な差があることに気がつく。
吉田は一度エラーをすると、やたらにポロポロはじく。逆に広岡は安定したベースでエラーを繰り返している。次の表を見ていただきたい。吉田は2試合連続エラーが57回広岡は25回。だが吉田は10試合以上間隔が空くと殆どエラーしていないのに、広岡は着実に(?)
繰り返している。このことは、精神的に動揺しやすい神経質な吉田は、1個のエラーでガクット参る。見かけは神経質だが実際はタフな広岡は、くよくよしないで気分転換が上手いから、エラーしても翌日の試合ではケロッとしているからではないだろうか。吉田、広岡だけの話ではない。このことは誰にでも通じる話ではないのか。エラーにはだから偶然的現象そのものよりも、選手個人の性格によってひょこひょこと顔を出してくるものだと思うのだが。

さて、雑誌からの引用ばかり並べたが、最後に私が乱数表から作成した「ランダム到着の場合の到着間隔の分布」のグラフを掲げる。この図は前掲の野球の図と殆ど同じ性格の表であることがわかると思う。
表の作り方について補足をしておくと。乱数表というのは0から9までの数字がランダムに並んだ数表であり、そのランダム性が検証されている表である。図の平均0.2の時の実線は、その乱数表の始点から数字を読んでいって、「0と1」が出る間隔をその間隔の頻度別にプロットしたものである。(例えば3・5・9・6・2・1・0・7・4・1・8・0・)の間隔は先ず1と0が続くので間隔0が1回。次いで0から7と4を超えて1となるので間隔2が1回。次ぎは1から8を超えて0が来るので間隔1が1回・・・のように数える。
図の平均0.4の時の実線は「0,1,2,3」の4つの数字が表われる間隔を同じように数えた間隔の数字の出現頻度をプロットした物である。
なお、図の0.4の時と0.2の時の点線で書いてあるものは、このような作業を無限にやったときの理論線である。
例えば1分間に平均4回エラーが発生する場合と、1分間に平均2回エラーが発生する場合のエラー発生間隔の分布はこの図のようになるということなのである。
この図のように到着間隔ゼロ。即ち続いて起きる確率が一番高いことが理解できることと思う。
長くなったが、要するに事故などは続いて起きる確率がいちばん大きいと言うことであり、その傾向は平均発生率が多いときは勿論だが、たまに起きる時でも続いて起きることが一番多いのである。
またこのことが分かれば、野球のエラーの話はグラフの間隔12回以後の部分で吉田の線が低くなり、広岡の線が高くなている部分的なところに目を注いで誤った判断をしており。また筆者の言うこととは矛盾して、このグラフは、エラー偶発論(ランダム発生)が概ね正しいことを証明しているものだと言うことが分かる。
算術的な数字に捉われず、グラフを理論的な目で見れば、明らかに広岡がエラーの少ない選手であり、吉田が広岡に及ばない実力の差は明らかだと判断できるのである。