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南極海道五十三次

南極観測隊の同行教員の記録

世界で一番きれいな水

2012年01月12日 23時31分03秒 | 日記
1月12日(木)昭和基地にて
先日、訪れたラングホブデ氷河。世界各地の氷河の中でも特に人間社会から隔絶され、自然地理的にも隔離された南極の氷河の雪と氷を私なりに調べてみました。氷河上の雪がどれほどきれいか、雪を融かした水(融雪水)の導電率計を使って測ってみました。
水にイオン(+か-の電気を持った小さな粒、食塩などがその例)が融けていると電気が通り易くなり、導電率計の値は高くなります。逆に水にイオンが溶けていないほど値は低くなり、イオン性の物質が環境中に少ないということができます。私が昨冬に日本の蔵王の山頂付近の樹氷から採った雪の融雪水の導電率は約20([μS /m]以下、単位省略)でした。仙台の泉ヶ岳スキー場で降ったばかりの雪で約10です。10以下になることは少なく、なっても7程度です。それが住宅地の自宅前では高いときは80にもなり、山形自動車道の笹谷トンネル付近の雪では、300近くにもなりました。大気汚染物質や融雪剤…人間が出す様々な物質の影響、山野や海(日本海の海塩)など自然からの物質の影響、どちらもあるでしょう。


蔵王の樹氷

さて、南極ラングホブデ氷河の雪では、この値は1~2でした。前回の記事の写真にのせた氷河上の小川でも6程度です。南極の雪と氷の純粋さが伺えます。


氷河の雪の融雪水の導電率 約1~2(縦長の導電率計のディスプレイの上の数値、下の数値は水温)


氷河上の小川の導電率 約6

ただ、この水は実はそれほど美味しくありません。個人差もありますが、人間が美味しいと感じる水はもっとイオンが含まれた水だからです。例えば日本でパックされたあるミネラルウォーターは約100です。つまり美味しいかどうかはともかく、南極の雪とそれが融けた水は異常なほどきれいなのです。
この水が、もし汚れてしまったら・・・そして、それがもし人間のせいだとしたら・・・「その答えは氷河の流れだけが知っている」という言い逃れは通用しないかもしれません。


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1 コメント

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H2O (H)
2012-01-13 15:03:59
蒸留水では導電率はいくらになる?
純粋な水では導電率はゼロになるはずですが、それでも値がゼロにならないということは、微量の不純物が含まれている?からかな?
一瞬南極にも樹氷が!?と思ってしまいました…
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