大野クローバー幼稚園日記

幸福ではなく信頼を選ぶ


わたしたちの社会では、よく「幸福であるかどうか」が問われる。テレビドラマのモチーフも、バラエティでお笑い芸人が過去のエピソードを披露するときも、男性誌や女性誌の特集ページでも「幸福」がテーマとなることが多い気がする。
幸福な結婚、幸福な家庭、幸福な毎日、幸福になるための家や家具や家電や本、時計、ファッション、健康食品やサプリメント、そんな感じだ。

だが、幸福という概念は主観的であり、かつ曖昧でもある。わたしは『55歳からのハローライフ』という作品で山谷の住人たちに取材したが、ホームレスに近い生活をしている何人もの人たちが「おれは気ままで、案外幸福なんだ」というのを聞いた。「これで充分だ」と納得さえすれば、その人は幸福を手に入れることができる。

今、わたしたちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交でいえば、日本は、緊張が増す隣国と、「幸福な関係」など築く必要はない。しかし、信頼関係にあるのかどうかは、とても重要だ。
幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くためには面倒で、長期にわたるコミュニケーションがなければならない。国家だけではなく、企業も、個人でも、失われているのは幸福などではなく、信頼である。


村上龍「賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ」より
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