やまさんのエンジョイ生活 Ver.2

趣味の登山、映画鑑賞、読書を日記風に紹介してます。

奥田英朗の世界

2013-11-29 | 読書

11月23日(土)        「イン・ザ・プール」

  

 

  「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

 最初にこの本を読んだのが正解だったのか!? このシリーズは他に2冊出ているがいずれ読まねば。伊良部は患者の話を聞いてないようで聞いているし、診ていないようで診ている。いずれの話も最後に納得できたり、または頷いたりしてる自分がいた。そんな伊良部と5人の患者の物語。

11月30日(土)        「最悪」

  

 不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説。

 今度は分厚い(650頁)作品。「小説がいちばん効果を発揮する心理描写を徹底的に駆使して人物たちの葛藤をダイナミックに際立たせ、物語の駆動にさらなる力を与えている。奥田英朗の小説には19世紀的なリアリズム文学の伝統があり、映像のダイナミズムと心理のダイナミズムの両方がある。犯罪小説の新しさであり、強さである」(解説から池上冬樹)

          

12月1日(日)        「ウランバーナの森」

   

 その夏、世紀のポップスター・ジョンは軽井沢で過ごした。家族との素敵な避暑が、ひどい便秘でぶち壊し。あまりの苦しさに病院通いをはじめたジョンの元へ、過去からの亡霊が次々と訪れ始めた……。ウイットとユーモア、そして温かい思いに溢れた喪失と再生の物語。

 「空白の4年間に何があったのか。彼の心を癒すような出来事が何かあったのではないだろうか。この作品はそんな興味からスタートしている。つまり、わたしは、フィクションで彼の伝記の空白部分を埋めてみたかったのだ。この物語にはいっさい彼を特定する固有名詞を出さなかった。彼はただの「ジョン」であり、周囲の人物はすべて架空のものである。」(作者文庫版へのあとがきより)

 非常に変わった本である。不思議な感覚とともに喪失と再生の物語。ウランバーナとはサンスクリット語で苦しみという意味。

12月3日(火)        「東京物語」

   

 1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊…。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、まぶしい青春グラフィティ。

「あの日、聴いた歌」 「春本番」 「レモン」 「名古屋オリンピック」
「彼女のハイヒール」 「バチェラー・パーティー」

奥田英朗の自伝的小説で、主人公・田村久雄の10代後半から20代後半、78年から89年までのある日を舞台にした6つの短編連作です。ジョン・レノン殺害、キャンディーズの解散、江川のプロ入り初登板など、当時の歴史的事件をリアルタイムで体験した久雄の、かといってそれだけに気を取られているわけでない生き生きとした実人生が描かれる。そんな時代を経験した者が読むといろいろなことを思い出してしまうのは私だけではないはず。

 

12月6日(金)        「邪魔」

    

 及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴1年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。(講談社文庫)  

 もうどこにも、逃れる場所はない。2002年版「このミステリーがすごい!」第2位、第4回大藪春彦賞受賞。九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。(講談社文庫)

  ■スーパーにパート勤務する平凡な四人家族の主婦・及川恭子
  ■恭子の夫が被害にあった放火事件を担当する刑事・九野薫
  ■オヤジ狩りを九野薫にしてしまった不良高校生・渡辺裕輔

 犯罪小説というよりも、「放火犯は・・・夫?」と疑惑を抱いた主婦の、苦悩と変容を描いた物語。実はモデルになった事件が存在します。それは1998年の「ザイエンス新潟支店毒物混入事件」。 作者はこの事件にインスパイアされてた作品!

 

12月11日(水)        「空中ブランコ」

   

 傑作『イン・ザ・プール』から二年。伊良部ふたたび!
ジャンプがうまくいかないサーカス団の団員、先端恐怖症のヤクザ……。精神科医伊良部のもとには今日もおかしな患者たちが訪れる 。

 

12月16日(月)        「無理」

      

 合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則―弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。久保史恵―東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。加藤裕也―暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。堀部妙子―スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。山本順一―もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。 (「BOOK」データベースより)

 今読んでる本(「野球の国」)に興味深いことが書かれていたので載せておく。

 >わたしは、プロットを一切立てないで書き始める作家である。『最悪』や『邪魔』といった長編小説も、行き当たりばったりで完成させた。インタビューなどでは、「どうなるかわからないから面白い」という類の発言をしてきた。しかし、それは虚勢。実を言うと、プロットが当てられないのである。

 >わたしのやり方はこうだ。とりあえず、書き出しだけは決める。こんな感じで主人公を登場させるか、と。そうしないと始まらないからね。で、計画的なのはそこまで。あとは、書きながら考える。次の展開が浮かんでくれば進むし、浮かんでこなければ進まない。
だから途中で必ず苦しむ。もうこんな仕事はやめようと思うぐらい苦しむ。
     (いずれもp192)

 今読んでる「野球の国」や「沈黙の町で」など別な箇所で書くことにします。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿