おフランスの子育て事情・少子化対策

先進諸国の中でもトップクラスの出生率を維持しているフランスの子育ての様子、少子化対策をご紹介します。

フランスの医療制度 2.出産費用

2006-05-27 | 医療制度
最初にちょっとご説明しておきますが、日本とフランスとでは健康保険の支払いの方法が違います。日本のように、保険証を提示すると、はじめから自己負担額のみを支払って、残りの差額は医療機関側が保険組合に請求するという制度を採っている国は少ないんです。

欧米諸国の一般的な方法では、患者が医療費をまず全額医療機関で支払い、医療機関は払い戻し請求用の用紙を作成して患者に領収書とともに渡します。この用紙が請求書を兼ねていることも多い。患者はこの用紙を医療保険団体に提出して、自己負担分との差額が払い戻される、というシステムです。保険でカバーされる率は治療の種類、加入している健康保険団体によって異なりますが、歯科以外はたいてい、70から90%の割合でかえってきます。

しかしながら、こと産科(婦人科は別扱い)にかかわる治療に関してはほとんどの費用が全額カバーです。妊娠期間中の定期健診、各種検査などはもちろん、出産費用も一般的には「ただ」です。もちろん経済的にゆとりがあって、入院待遇がかなりよい私立病院で出産すれば、入院費は多少払うことになりますが、出産費用が無料なことにはかわりがありません。一般的な病院であれば、出産費も入院費もただです。

日本は妊娠・出産は病気ではないからと医療保険の対象にはならず、定期健診から出産まで全額負担。出産お祝い金はくれるけれど、もちろん、出産費と入院費を全部カバーできる額ではありません。

私が第二子を産んだ十…年前には、さらにこれに消費税まで課せられました。出産費が高額だから消費税だってすごい額になるんですよ。出産後の退院時の請求書を見て、「ゲッ!? 子供産んだら税金かけられるの。」と思ったことを覚えています。これでは少子化を奨励しているみたいですよね。罰金払わされたような気になりますから。

現在はさすがに出産費用は課税対象からはずされたようですね。


フランスの医療制度ー1. 不妊治療

2006-05-26 | 医療制度
子育てを支援するのには、育てる子供がいるのが前提ですよね。じゃないと話が始まらない。少子化対策は産んだあとのお世話をする前に、産みたいのに子供ができない人の援助からはじめないと。

というわけでフランスでは、妊娠する前段階、つまり不妊の治療もしっかりとサポートしています。なによりも、費用の面ですが全額ただ。不妊治療は長期間に及び、かなりの高額 (,年間百万円を超える) になるケースがほとんどです。ごく初期の検査や診療からはじまって、体外受精の処置にいたるまですべて健康保険で支払われます。「自分の子供を産むという当然の権利を守るための不妊治療が、所得の高いものだけに限られるなどということがあってはならない。」という考えがその根底にあるからです。

ほんの数日前のニュースで、日本でも現在の不妊治療費の助成金の上限を引き上げる方針を政府が固めた。と伝えていました。保険適用外の治療費の半分について現行の年間十万円から20万円まで引き上げるそうです。

せっかく援助を増額したのに非難するわけじゃありませんが、こんな額ではほとんどの場合、とても足りません。特に体外受精は一回の費用が高額で、しかも初回で成功するとは限らない。準備段階として事前にホルモン注射で通院したりして生活のリズムも乱れるし、こまごまとした出費もかさみます。さらに失敗すると精神的なダメージもすごく大きいんです。それに高額の請求書で追い討ちをかけられてしまうと、やはり長続きできずにあきらめてしまいます。

少なくとも、費用の面の心配はせずに本人の気が済むまで治療を続けられる環境が欲しいですよね。

メールアドレス : ofuransunokosodate@mail.goo.ne.jp

一口に少子化対策といっても...

2006-05-24 | 海外事情
少子化対策・育児支援というと児童手当、保育施設の充実が真っ先に出てきますね。でも実際には産む前の妊娠・出産支援からはじまって、一般的な子育て支援、ワーキングマザーのための子育ての支援、さらには税制や法律と本当にたくさんあるんですよ。フランスのやり方をみてみると、今の日本の対応が不十分で出生率低下に歯止めがかからないのも納得できます。「ここまでしなくちゃだめなの!?」と思うか、「こんなにしてくれるの羨ましい!!」と思うか… どちらでしょう。

それから政府や民間団体がやっている政策や援助だけじゃなくて、一般的な文化の違いや意識の持ち方にもずいぶん差があります。ライフスタイルのちがいにつながるから、これだって、出生率にすごく影響のあるものなんです。フランス人の意識と日本人の意識の違いも具体的な例を挙げてご紹介します。

でも、いくら出生率の向上に成功しているといっても、フランスだってユートピアみたいによいところじゃありません。成功しているところは参考にしても、逆にフランス社会の問題点を反面教師にして、日本も同じ問題をかかえこまないようにしないと。だから、フランスの悪い面についても(残念ながら、たぁ〜くさんあります!!!)書いていきます。

たとえば、高い失業率や大量の移民は深刻な社会問題です。今年の3月の、政府の失業対策に抗議する学生デモから始まって、ゼネストまで発展してしまったニュースは記憶に新しいですよね。

今の日本で、将来の人口減から来る労働力不足のために、外国人労働者を受け入れようと安易に主張している人たちもいます。外国人労働力の導入の可否を考える前に、まずは、フランス社会のかかえる深刻な問題を見てみることも必要だと思います。

なぜフランス?

2006-05-23 | その他
フランスと聞いて何を思い浮かべますか。

まずはブランド品のバッグや時計、化粧品、ワインなんてところでしょうか。もうちょっと詳しい人ならルーブル美術館、何人かの芸術家の名前くらいまで考えるかもしれませんね。

いずれにしても文化的に高く女性受けするおしゃれなイメージじゃないでしょうか。これは日本人に限らず、いろいろな国の人たちがだいたいこんな反応だと思います。写真で見ている限り、素敵なところが多いですよね。

でも、ちょっと社会科の授業的に国の経済状況などを見てみると、比較的温暖な気候で豊かな国土を持ち、食料の自給率はEU諸国の中でも群を抜いている農業大国です。

宇宙ロケット、航空機産業の分野ではアメリカやロシアと肩を並べる技術を持っている、といえば「えーっ、本当!?」と思いますか。それとも、「それくらい知ってたよ。」の方ですか。

プジョー、ルノー、シトローエンとならぶ自動車メーカーも産業のリーダー的存在です。日産の経営再建に尽力をつくしたルノーグループのカルロス・ゴーン社長は日本でも有名ですよね。

では、少子化・老齢化社会への積極的な取組み姿勢を政府が前面に押し出している福祉大国である。というのはどうでしょう。意外でしたか。

福祉の整った国、少子化対策が機能している国というとスウェーデンやデンマークといった北欧諸国だけがすぐ出てきますよね。

2004年のフランスの出生率は1.89パーセント。ヨーロッパ諸国(現在のEU諸国)の中でもトップクラスなんですよ。しかも現在でも上昇中です。おしゃれなパリジェンヌと子だくさんのお母さんとはイメージが合いませんか。

私はたまたま、日本とフランスの両方で子育てを経験することになりました。でも、保育や教育の専門家じゃありません。両方の国で、専業主婦もしましたし、ワーキングマザーとしてもフルタイムでもパートタイムでも子育てをしました。おかげで、両方の国の子育ての長所も欠点もずいぶんと経験させてもらいました。今でも、まだ子育ての最中です。

日本の少子化問題や子育て支援に少しでも参考にしてもらえたら、とフランスの1.89パーセントの出生率を支えるものを少しづつこのブログでお伝えしていきます。