おフランスの子育て事情・少子化対策

先進諸国の中でもトップクラスの出生率を維持しているフランスの子育ての様子、少子化対策をご紹介します。

夏休み

2006-07-28 | 子どもの余暇
フランスの有給休暇の日数は日本と比べるとなかなか立派なもので、さらに、まずほとんどの人が全部を消化します。でも、さすがに子どもの学校の休みと同じ長さの有給をもらえる人はいません(学校の先生だけは別ですが)。そこで、親と一緒に過ごせる以外の休みの時間の面倒を見てくれる方法はたくさんあります。

まずは、おじいちゃんやおばあちゃんの家に泊まりにいく。これはどこの国でもよくありますね。それから前にも書きましたが、実にいろいろな種類のキャンプがあります。キャンプはほとんどが民間の企業が企画、運営しています。営利目的ですから、それなりの費用はかかります(日本より割安ですが)。でも、企業によっては従業員の福利厚生手当ての一環として、子どものキャンプの参加費用の一部を負担してくれるところもあります。

私がすごいなと感心するのは、各市町村で休み中の子どもの託児をしっかり運営しているところです。レジャーセンター(Centre de Loisirs)とでも訳せばいいのでしょうか。対象は三歳から12歳まで。いつもは公立の幼稚園や小学校が夏休み中はレジャーセンターに早変わり。日本の学校の施設開放とは違います。きちんとプログラムがあって、資格を持ったスポーツのコーチや保育士が面倒を見てくれます。学校の先生ではありません。

写真の後ろの方に映っている建物は公立の小学校ですが、夏休み中はレジャーセンターの看板を立てています。南フランスなので椰子の木も学校の敷地内にはえています。

こういうセンターは泊り込みではなく日帰りですが、幼稚園や小学校の施設内で託児を行うだけではありません。貸切のバスを使って遠足にいったり、美術館の見学に行ったり、と内容もなかなか豊富です。ヴァカンスで避暑地に行かなくても、これだけでも十分楽しいものになっています。

たいていは親が休暇をとれない時に利用していますが、市町村の住民なら親が働いていなくても子どもは参加できます。役所の児童福祉課に行くと休み中のプログラムがもらえます。昼食と午後のおやつがついていて、ふつうは朝の八時くらいから夕方6時くらいまで。値段は市町村運営なのでもともと高くありませんが、日本の公共の保育園などと同じで親の所得に応じて三段階くらいに分かれています。

夏休み 子どもの遊び場

2006-07-26 | 子どもの余暇
フランス人に限らず、欧米では大人の時間をとても大切にします。
でも、大人がしっかりと楽しむかわりに、子どもだって子ども用の楽しみが必要、と休み中には次から次へと子ども用の施設も準備されます。

スポーツレッスンやサマーキャンプなどがそろっている、と以前にも書きましたが、その他にも、海辺や山の中の避暑地などで臨時の遊園地があちこちに建てられ、特に幼稚園児から小学校の低学年くらいの子どもたちが遊びに来ています。

一回づつチケットを買って乗るメリーゴーランドやトランポリン、のようなものや、時間単位、もしくは半日、一日という単位で子どもを預かり遊ばせてくれるところもあります。家族とヴァカンスに来ていている子どもたちがよく利用しています。子どもが遊んでいる間に買い物に行ったり、用事を済ませる親もあれば、そばのビーチで寝そべってのんびりと本を読んだり、昼寝をしている親もいます。

子どもが小さければ小さいほど、海や山で目を離すわけにいきません。でも、いつも親だけでみていたら、せっかくのヴァカンスなのに親だって休めないし、つまらない用足しだってあります。子どものほうも大人だけに囲まれているより、他の子どもたちと遊びたがります。

子どもたちは案外年齢の低い子でも、ヴァカンス地のレッスンや遊び場で他の初対面の子どもたちと抵抗なく遊び始めます。日本なら4、5歳くらいの子どもたちは知らないところでなかなか他の子たちとうちとけないんじゃないかな、と思うのですが。フランスの子どもたちは普段の生活でも休み中でも、こんな状況に慣れているのでしょうね。

ベビーフード

2006-07-21 | 海外事情
フランス人は人生を楽しむことに関しては貪欲です。
仕事にあまり意欲を見せない人でも、ヴァカンスをどう楽しもうか、となると突然積極的に準備を始めたりします。

また、普段から家事や育児にあまり手間ひまかけない方があか抜けている、という考え方をするので、ヴァカンス中には特に家事、育児の手間を減らそうとします。また、それで罪悪感を感じる様子も全くありません。「せっかくのヴァカンス中なのよ。休まなくちゃ。」なんて明るく言っています。

親が育児の手間を減らそうとする分、社会全体でこれを商売にしてお手伝いしてくれるものはたくさんそろっています。これはヴァカンス中だけに限りませんが。

スーパーに行くと、ベビーフードの種類の豊かなことといったら。まず、ミルクだけでも数メートルにわたっていろいろなメーカーの違う種類の粉ミルクが並び、さらにベビーフードの売り場の大きいこと。瓶詰め、レトルトパウチ、粉末等々。お湯を加えて作るものや、電子レンジでチンするタイプ。離乳食の初期からはじまって三歳児くらいまで。さすがは世界に名だたるフランス料理を生み出した国、というわけでもないのでしょうが。

利用者がたくさんいるから、つくる方もせっせとつくる。需要と供給の関係でしっかり成り立っています。

おフランスのテニスレッスン

2006-07-18 | しつけ
我が家の子どもたちも今週はテニスクラブでグループレッスンを受けています。

おフランス人の子どもたちと一緒にこうしたスポーツのレッスンを受けると、急に我が家の子どもたちがおとなしい子どもにみえてしまいます。教えている大人の考え方がそのまま習っている子どもたちに反映していると思いますが、とにかくフランスの子どもたちは攻撃的です。

日本でテニスのグループレッスンというと、大人でも子どもでも、ひとつのグループに8人から多いところで10人くらいです。

フランスでは、子どものレッスンはひとつのグループに最多でも6人までです。コーチに理由を聞いてみると、「それ以上では人数が多過ぎてきちんと目が届かない、と親たちから文句が出るから。」という答えが返ってきました。「日本では八人くらい当たり前なのに。フランスは人口密度が低いから、本当に大人数に慣れてないのかしら。」と思いながらレッスンを見て納得しました。

人口密度ではありません。子どもたちの言うことを聞かないことといったら。
年齢の低い子ども達はコーチがちょっと目を離すと、好き勝手に遊び始めるし、少々大きい子たちなら、平気でコーチに文句を言ったり、自分の失敗に腹を立ててラケットを放り投げたり。確かに一人のコーチで6人が限度です。

また、教える方も子どもたちの競争心を煽るような方法をどんどん使います。
レッスンの大半が試合で、グループ分けや試合の形式を変えていろいろな状況を想定しながら、その中でいろいろなスイングの練習や、ボールの動きの読み方を教えています。

各試合全部で、子どもたち一人ひとりにすべて細かく得点をつけ、得点表を作り一日の終わりにそれぞれの得点を集計する。高得点をとったから何がもらえる、というのではありません。どの子も他の子に負けるのが嫌で、高い点を取りたいからものすごく意欲を燃やして頑張るのです。

休み中のレッスンなんて等級を決める公式試合があるわけでもなく(フランスではいろいろなスポーツに子どもでも、協会主催の公式試合があります)、「そんなに攻撃的にならなくても、」なんて私は思ってしまいますが、子どもたちはいつでも勝とうとしながらプレイする。それがフランスでは当たり前のようです。

おフランスの教育

2006-07-16 | 海外事情
日本とフランスの文化を比べてみて、何よりも違うと思うのは教育です。教育制度ではなくて、教育の根本的な考え方です。

教育についての考え方については、少しづつ紹介していきますが、これだけお休みが多いので、休み中の子どものためのスポーツの集中レッスンやお稽古事、キャンプ等は手頃なお値段で豊富にそろっています。

フランス人の子どもたちのこうしたスポーツのレッスンを見ていると、つくづく違いを感じます。スポーツをするときの根本的な考え方です。

日本でスポーツのレッスンを受けるのは、そのスポーツで上手になるためですよね。
フランスではそのスポーツで勝つため。だそうです。

ワールドカップのJリーグについての某スポーツ評論家のコメントを思い出しました。
「日本の選手はパスが上手。技術的なレベルは高いが、欠けているものは試合に勝つという意気込みだ。他国と比べても、反則のためのイエローカードや退場になる選手の数が圧倒的に少ない。どんなに上手にプレイできても、最終的に試合そのものに勝てなければ意味がない。」というものでした。

「いや、勝つだけではない。スポーツはフェアプレイで参加することに意義があるんだ。」という考え方もありますね。どちらが良いかは人それぞれです。

フランスも優勝を逃してしまいましたが、ワールドカップの決勝戦の両チームの攻撃はすざまじいものでした。試合開始早々に、イエローカード、怪我人が続出。どちらの国の選手も試合に勝とうという精神は小さい頃から、しっかりと身についていますね。


おフランスの学校の休暇

2006-07-15 | 教育制度
おフランスの子どもたちはもう夏休みです。

欧米諸国は学校の新学期が9月に始まり6月が年度末です。6月のいつ頃に学校が終了するのかは国によって違いますが、フランスは6月末のほう。新学年が始まるのは9月の第一週ですので、夏休みは2ヶ月以上あります。

しかも学校のお休みは夏休みだけではありません。だいたい二ヶ月に一回、10日から二週間の休みがあります。「さすがヴァカンスの国だねえ。」なんて言われてしまいますが、九月に新学年が始まった後で10月の終わりから11月のはじめに秋休みが来ます。次に年末年始のクリスマス休暇。2月には謝肉祭で冬休み、4月の初めに復活祭。その二ヶ月あとは6月ですでに学年末です。

「そんなに休んで授業時間は足りているの?」という疑問も出てきそうですが、一日の授業時間が長くて、毎日集中講座みたいです。朝8時半に始まって終わるのは夕方の4時半ですから年間の合計で見ると日本の学校とあまり変りません。ちょっと違うのは、この時間帯は幼稚園の年少さんから始まって、小学校の最終学年まで一律に同じです。中学、高校になるとまた、時間割の組み方が変ってきます。日本の幼稚園、小学校の低学年は午後の1時か遅くても2時に下校ですよね。

どちらがよいのかは何ともいえません。どちらも一長一短です。フランスの制度では、学校がある時はあまりに集中して勉強させるので、子どもたちもストレスは溜まるし、疲れが溜まるし、で二ヶ月に一度くらい休みがないと本当にもたなくなります。


ガマンの国ニッポン おフランスのガマン

2006-07-14 | しつけ
ところでおフランスでは?
なにかにつけ「これは無理。」「あれも無理。」「とんでもない。こんなのはできないわ。」「受け入れるわけにはいかないわよ。そうでしょう。「ああ、つらい。」「疲れた。」「できなくて当たり前でしょ、ねぇ。」なんていうのを連発して、滅多にガマンなんてしません。辞書に「ガマン」ていう言葉載ってないんじゃないかな?

でも、つらい状況や不足等をガマンしないでせっせと悪いところを非難するからこそ、問題点に注目もあつまり、改善されていくこともあるのです。あのすばらしく手厚い保護の内容の労働法ができてきたのは、長年にわたるみんなの不平と非難の賜物です。

ところで、たった今自分で書いたことを覆すようですが、年がら年中フランス人の不平不満を聞かされていると「ギャーギャー文句ばかり言うのもいいかげんにしたら。こんなに大事にされてる国なんてほかにないわよ。すこしくらいガマン。」と時々言いたくなっちゃいます。やっぱり、私って日本人。

「ガマン」の国ニッポン 2

2006-07-13 | しつけ
日本では、子育て中の母親を取り巻く人たち、産婦人科や小児科の医者や看護婦、保育園の保母さん、教育関係者、育児の専門家や祖父母等は、母親に向かっていとも簡単に「ガマン」と「ガンバって」を連発します。母親自身の健康から育児に関する内容まで「妊娠、出産ではよくあることですからガマン。」「それくらいたいしたことないでしょう。ガマン。」「私だってこれくらいがまんしたわよ。」「お母さんなんだからちょっとくらいはがまんしなくちゃ。」「お母さんなんだから、これくらいできますね。ガンバリましょう。」と。

確かに、ひとつひとつはほとんど小さなことで、たいした「ガマン」でもないことが多いのですが、こんな調子で「これもガマン、あれもガマン、」とどんどん重なっていくと、いつの間にかすごいガマンの量になってしまっています。精神的にも肉体的にもくたくたになっているお母さんは多いんです。

そこに追い討ちをかけるように「ガンバって」がきます。使う方は意識していないかもしれませんが、くたくたに疲弊している人に「ガンバって」は、つらく残酷な言葉です。今の状態の「ガマン」や努力がまだ足りないから、「もっとやれ」ということですから。うつ病の人なんて「ガンバって」「元気出して」なんていわれたら、いっそう落ち込んでしまいます。人生誰でも頑張れない時なんてあります。そんな時には、ハッパかけるのではなく、「お疲れさま、これで大丈夫ですよ。少し休みましょう。」と労をねぎらって肩の荷を降ろしてあげなければいけません。

ガマンの国ニッポン

2006-07-04 | しつけ
たしか文化人類学者のルース=ベネディクトだったと思いますが、日本文化の研究著書で、日本の文化は端的に言うのなら「恥の文化」だ。と述べていました。これも日本文化の一面を上手に言い表した言葉だと思いますが、私流に言わせていただくと、日本は「ガマン」と「ガンバって」の文化だと思います。

普段意識して使っている人は少ないのかもしれませんが、この二つの言葉は日本では実によく使われます。しかも、出産、子育てに関しては特にこの「ガマン」と「ガンバって」は大行進です。日本では通常、簡単に不平、不満を言えば「わがまま、子供っぽい、ガマンが足りない。」などと非難されますが、そのかわりにジッと耐える人は美徳のように思われがちです。

もうかなり前の話ですが、「おしん」という女の子の人生を描いたテレビドラマが大人気になったことがありました。「おしん」の人生は幼い頃からとにかくつらいこと続きで、成人してからもひたすら「ガマン」の人生です。こんなドラマが大人気となるのは、日本人の「ガマン」を美徳として好む面を良く表わしているのではないでしょうか。(もっとも、中国にも輸出されてこちらでも大人気だったというから、アジア的好みなのかもしれません)フランスに輸出しても「おしん」は絶対にうけません。「なに、あれ!? マゾじゃないの。」なんていう反応が出ると思います。

さて、「ガマン」は一見美しい行為に見えるかもしれません。しかしながら、組織や社会にとって落とし穴があります。みんながつらい状況や不足等をガマンばかりしていると実際には、状況や問題の改善につながらないのです。誰かがガマンすることで、周りは何もしなくてもことが済んでしまうからです。でも、あんまりガマンばかり続けていると、いつかはガマンの限界が来てしまいますよね。

超スピードで進んでしまった日本の現在の出生率の低下は、ガマンの限界に来たお母さんたちが「もうイヤ」と「ガマン」を拒否し始めたことが大きな原因のひとつではないでしょうか。

妊婦さんの保護 どこまで?

2006-07-03 | 妊娠・出産
マタニティーマークはフランスでは必要ない、といったのは本人たちが堂々と主張するからです。妊娠したとたんに、みんなが自分の世話をしてくれるのが当たり前と考えているみたいです。交通機関や公共の場での優先席を譲ってもらうなら、本人が「私、妊娠しているからそこに座らせて。」と言いに行きます。

おフランスの社会全体が妊婦さんを大事にするのが普通なので、ここまでするのが普通になっていない外国人の私などの目から見ると、ちょっと行き過ぎじゃない?と思うこともあります。特に妊婦さん自身が「私は妊娠しているから」と言いながら、それを武器に何でも通そうとするみたいで。 本人たちにそんな意識は無いのかもしれませんが…

とんでもないところに堂々とすごい迷惑駐車して用事を済ませに行き、後ろから来た車が通れなくて数台がストップ。クラクションを鳴らされても「ちょっと停めただけよ。私は妊娠中だから仕方ないでしょ。」なんて涼しい顔をしていたり、なんていう場面に出くわしたことは何回かあります。

でも、それくらいに大切にされているのが普通になるくらいだからみんなどんどん子供を産む気になるのでしょうね。