『今日もみんなで良いモノつくります!』

『経営について』の考え方と従業員の『究極のモノづくり』に挑戦する姿を伝えたいと思います。

『世界経営者会議(第8回) 24日 ②(後半) 』について

2006年11月05日 | 経営の事
今日は『世界経営者会議24日』の後半部分について書きます。

各基調講演者の講演内容が、‘同じ演題’についての講演になっているために、
少し重複してしまっているところがありますが、この重複の繰り返し中から新たな
概念を感じる事が出来れば幸いではないかと考える次第です。

この基調講演の内容をご紹介している一つの理由としては、読んで下さっている
方々と共に、これから少し先の未来のグローバル・トレンドを認識・共有し合い、経
営の舵取りに活かして行ければと思っているからなんですが、また、経営に携わっ
ていらっしゃらない方々も、我々「モノづくり」企業の良き理解者として、ご支援・ご
鞭撻を頂ければと思っています。

それでは、後半部分を書きます。

本田技研工業 福井 威夫社長

『合従連衡やTOBなどで、二つの企業体を単純合計した規模の大きさだけでは
自動車業界に於いては経営効率に直結しない』と考えている。

『10年前に生き残りに必要な会社規模として「400万台クラブ説」が取りざ
たされ、某社との合併説まで出た。当時、メーカーの強さや真の効率とは何か
を徹底的に議論した。』

『小さくても高い工場稼働率を保つ方が強いとの結論に達した。そして工場の柔
軟性を高め、需要に応じて人気車種の生産を余力のある工場に短時間で移す体
制を整えた。』

『会社の規模よりも顧客に目線を定め、期待に超える商品を供給することが顧客
のメリットに直結すると考えている。だから顧客にメリットがない提携はない。規模
ではなく質で勝負する。』

『長期成長を可能にする施策として、日本では先進のモノづくり体制を整える。埼
玉県に年産20万台の四輪車工場を建設し、新生産方式に挑戦する。北米では
四輪車とエンジンの工場を新設。インドなどでも増産する。2010年の世界販売
は四輪車では450万台超になる見通しだ。』

『成長の実現はホンダの商品を顧客が選んでくれるかどうかにかかっている。だ
から環境対応は重要だ。2010年までに世界の生産活動の二酸化炭素排出量
を2000年比10%削減する。新型ハイブリッド専用車や次世代ディーゼル を開
発しエタノール車も投入する。走行中にCO2が出ない新型の燃料電池車は08
年に市販する。』

『真の経営は長期的な目標を示し、従業員が夢を持って挑戦できる環境を整える
ことだ。それが変革を生むエネルギーを常に内在させることになる。チャレンジに
邁進してエネルギーが爆発するとき、集団はとてつもない力を発揮する。』

テキサス・インスツルメンツ トム・エンジバス会長

『1930年創業の石油探知会社を起源とするテキサス・インスツルメンツ(TI)は、
75年の歴史の中で戦略・事業を何度も変化させ、現在は世界有数の半導体企
業に成長した。』

『とどまることのない技術革新に対応するために、製品構成を変え、新たな領域
を開拓してきた。一方では社会的責任を尊重し、利益を出す前に誠実でなけれ
ばならないという基本となる価値は変わらない。』

『50年代にトランジスタがエレクトロニクス産業に与える衝撃を見抜き、石油探
知会社からエレクトロニクス企業に変身した。』

『1994年には半導体をはじめ防衛事業、ソフトウエアなど五つの事業を持ち、
年間売上高100億ドル、従業員6万人の企業となった。ただ、大きくなりすぎて
事業の焦点が定まらず革新者の地位も失いつつあった。』

『パソコン時代の次に、携帯電話やデジタル携帯音楽プレーヤーが普及すると将
来図を描いた。TIの強みであるデジタル信号処理プロセッサー(DSP)やアナログ
半導体に資源を集中、非中核事業は売却した。』

『前任のジェリー・ジャンキンスCEOは、利益と正しい行動のどちらかを選択する
場合は迷わず正しい行動を取るとよく言っていた。理想主義に聞こえるが、地域
社会や環境、従業員に正しいことは顧客や業績にも良い効果を及ぼす。』

『TIは多様性を尊重する。グローバルな市場競争に打ち勝つ為には世界中から
最高のエンジニアを集める必要があるからだ。様々な人に居心地の良い環境を
作るため、多様性を促進するプログラムが従業員によって創設・運営されている。』

『環境法制への対応は当初はコストと感じていたが、主体的に取り組むことで事
業機会の創出につながった。規制に先んじて行動し、鉛を使わない製品への転換
も世界の先頭に立った。新工場は節水と省エネルギーで経営改善にも貢献した。』

『物事が変化すればするほど、その根本は同じであり続けるという考え方が戦略
の基礎にある。市場に適切な製品を投入する戦略は時間と共に変化するが、どん
な経済情勢でも社会的責任を軽視することはできない。』

ここまでが、2日目の「基調講演」の全ての内容になります。

そして最後に、スタンフォード大アジア太平洋研究センター ダニエル・オキモト名誉
所長が2日目の会議を総括して『第8回世界経営者会議』閉幕しました。

総括の内容は以下の通りです。

『世界の主要企業がどう成長を生み出し、持続させるのかという戦略、景気につい
て学ぶことが出来た。』と述べた。

『企業の成長戦略は好ましい国際環境の中で進んでいる。円滑に機能するグロー
バル経済の中で進んできた。』と指摘。

『世界経済については「1990年から2006年までは非常に堅調で、安定していた。
2003年から2006年にかけ世界経済は平均で4.9%の成長を遂げた。地政学的
には激動の時期だったが経済は元気な成長期だった。ダイナミズムの源はIT(情報
技術)の爆発、あわせて大いなる流動性の時期、つまり資本がだぶつき体制へのシ
ョックを和らげた」と指摘。「4つの大きな成長エンジンがあった。米、欧、日本、中国
その他のアジア地域だ。これらが成長の駆動力になった。この特徴はひとつのエン
ジンが止まっても他のエンジンが元気に働き、安定性をもたらした。」』と述べた。

『米国経済について「最大のエンジンだ。2005年には米国の消費者は8兆7000
億ドルを消費した」と指摘。その一方で、「米国の消費は可処分所得を超え、米国は
日々35億ドルの外国資本を輸入、消費の資金手当てをしてきた」と語った。その上
で、「米国経済は無限にこのような借り入れを続けることはできない。いずれは通貨
の弱体化、生活水準の低下、成長の鈍化、もしかして景気後退になるかもしれない」
と分析した。』

『「米国経済が減速した場合、世界経済と企業成長がどうなるか。米国経済減速の
影響は大きいと思う。」と語った。さらに「日本と中国、アジアは内需を刺激すること
に注力しなければいけない。特に基本的な経済インフラ整備に力を入れなければい
けない。輸出市場を分散することが必要だ。」と呼びかけた。また、企業に対しては
「優れた企業は戦略の重要性、競争力、イノベーション、フォーカスの重要性をこれ
からも強調していくべきだ。」と訴えた。』


この総括の内容で全て「基調講演」に関することは終わりになりますが、この他に
‘4組の対談’がありますので、引き続きこれも紹介させて頂きます。


【対談】
※アドビシステム社 ブルース・チゼンCEO
※日本経済新聞 論説委員兼産業部 編集委員 関口和一(聞き手*)

*インターネット技術の新潮流「ウェブ2.0」をどうみるか。

『インターネットのぼっ興期に言われた(動画や音声を自由に扱う)アイデアがビジ
ネスとして実現したのが2.0だ。今まで以上に魅力的なコンテンツに双方向でア
クセスできる利用者参加型のウェブサイトが多数生まれた。これは動画を使った
ウェブサイトを簡単に作る技術を提供している我が社のビジネスに大きな追い風
になる』

*技術はどのようにはぐくんでいるのか。

『昔から研究開発に積極的に投資しており、ここ数年は売上高の20%を割いて
いる。その結果、グループやヤフーのサイトにも技術を供与している。技術者の処
遇にも気を配り、給与や待遇だけでなく社員のやりがいを重視ている。我が社の
ソフト製品が世の中を変革しつつあることを社員に日々訴えている。』

*昨年末にはアニメ作成ソフトなどを提供する米マクロメディアを買収したが。

『マイクロメディアの買収は企業文化が似ていたこともありうまくいった。今後の
M&Aは我が社の技術を補完する小さな企業が対象になる』


【対談】
※楽天 三木谷 浩史会長兼社長
※カルチュア・コンビニエンス・クラブ 増田宗昭社長

三木谷氏
『グループの全サイトでウェブ2.0と呼ばれる消費者同士のコミュニケーション機能
を準備中だ。ネット通販では店長の意見や先に買った人の声を聞くことができ、個
人が気に入った商品を並べて自分の店をもつこともできる』

『アフィリエイト(成果報酬型)広告大手の米リンクシェアを買収したのは個人間の情
報交換が大きな消費を生み出すと考えたからだ。ネット通販、金融、メディアを統一
ブランドでつなぐモデルは米ネット企業にもない。来年は米国で事業展開を加速させ
たい。』

増田氏
『企業広告やマスメディア中心だった情報はブログ(日記風のホームページ)などを
通じて消費者同士で活発に交換されるようになった。小売業の立場でみると、10
00万人のネット会員に販促情報を直接届ける利点は大きい。』

『ただネットの発展でリアルの店舗が駆逐されるとは思わない。米国でもアマゾン
ドットコムが登場した後の書店、音楽配信のiチューンズが始まった後のCD店とも
売上高を落としていない。リアルの店舗の強みを保ちながら、映像配信など顧客
が望むサービスを展開していく。』

三木谷氏
『企業が成長する方法にはM&Aも提携もある。重要なのは情報の共有だ。相乗
効果を出すには情報をさらけ出して戦略を構築する必要がある。』

増田氏
『確かにビジョンを掲げ、情報共有することが成長の条件だ。私は持っている情報
を社員に余さず開示し、社員の情報も経営陣が把握するよう心がけている。』

『個人的には「1.3の法則」を意識している。1人で起業した後は社員が30人にな
った時や、100人になった時が経営戦略を変える節目だ。ディレクTVで失敗した
時は社員500人くらいで1000人の壁にぶつかった。現在は3000人を超える勢
いで次は1万人の壁だ。』

三木谷氏
『組織が大きくなっても、こんなことをやりたいという社員の思いを阻害しないことも
重要。経営管理の仕組みを固めながらも、社員が自由闊達にアイデアを出せる環
境を心がけている。』

『既存メディアとの関係でも今後は活字や映像、ウェブのコンテンツは一体化して
いくはずだ。国や産業界も新しい企業や産業の変化をぜひ後押ししてほしいと考
えている。』


【対談】
※コンランホールディングス テレンス・コンラン会長
※ダイソン ジェームズ・ダイソン会長

ダイソン氏
『新製品を作る際、マーケティング部門に耳を傾けてはいけない。今回が売れて
いるかについてマーケティング部門は知っているが、これから何が売れるかとい
うことは発明家やエンジニアに耳を傾けるべきだ。』

『掃除機でも、マーケティング部門からは「ゴミは見えない方がよい」という声が
あったが、私はビンを透明にしてゴミが見えた方がよいと主張した。ホコリが集
まっているのを見ると満足できるからだ。透明なビンにして発売2年でベストセラ
ーになった。機能が消費者の目に見えたのがよかったと考えている。』

コンラン氏
『我々の中核能力はデザインとライフスタイル(生活様式)の設計であり、人々が
楽しめる環境を提供することだ。我々はロンドンの古い倉庫のある地区の再開発
に取り組んだ。不動産業者には手を入れても昼食に行くような人はいないと言わ
れたが、今やレストランが集まる。カンと肝っ玉でうまくいくと思えば、たいていう
まくいく。我々はデザイナーであるだけでなくイノベーターでありたい。』

ダイソン氏
『デザインを決めて製品開発することはない。開発は常に機能から始まる。見か
けが悪くても性能を発揮すれば利用者に受け入れてもらえる。』

コンラン氏
『同様に、見かけが良くても、座り心地の悪いいすは売れないだろう。』
ダイソン氏
『これから考えなくてはいけないことは、英国ではエンジニアになりたいという子
供が少なくなっていることだ。もっとエンジニアを育成しなくてはいけない。』


【対談】
※曙ブレーキ工業 信元 久隆会長兼社長
※一橋大学 伊藤 邦雄教授

伊藤氏
『選ばれる企業の条件として、経営がぶれないことが挙げられる。曙ブレーキ工
業は「摩擦と振動、その制御と解析」に理念を絞ることで、経営資源の集中にも
成功している。』

信元氏
『人材、資金といった経営資源が十分あるわけではない。(事業の)核となるもの
を絞り込んで経営している。ブレーキを考えると、運動エネルギーを摩擦を使って
熱にかえるという構造は70年以上変わらない。これに注力することが正しいのか、
社内で摩擦を使わないブレーキの開発を手掛けたことがある。しかし、結果は失
敗だった。サイズ、信頼性、コストを考えると摩擦ブレーキは10-20年はなくな
らない。一度深堀りすると違う光景が見えてくるものだ。』

伊藤氏
『コーポレートブランド経営というと、外部を意識したものになるのが普通だ。しかし、
曙ブレーキは社員の力を発揮させるためにブランドを活用している。』

信元氏
『1986年、米ゼネラル・モーターズとの合弁設立を機に、トヨタ生産方式を導入した。
しかし、それは単なる生産の方式や管理の方式ではなく、経営の哲学だと考えてい
る。生産現場に限らず、問題点を見つけ出すための手段にもなる。人事面では担当
者がどう感じているかを知るために社員との対話を重視している。部長クラスは全員
と、課長も希望者を中心に個人面談を実施している。なるべく聞き役に回って、今の
会社をどう理解しているのかを聞く考えだ。』

以上が、『第8回世界経営者会議』の「基調講演」とそれに纏わる「対談」の全容に
なります。
都合4回に分けて書いて見ましたが、色々な事をこの‘ブログ’で試みて見たいと
言う中での、その一つのトライでしたが、如何だったでしょうか!
私が下手な要約をするまでもないと考えますし、またこれ以上長くしたくありま
せんので、纏めるのは止めにします。

ただ、最後に一言なんですが、このブログの‘基調講演’の内容と言うのは、大変
貴重な資料になると思います。
良く読むと示唆に富む話もあると思いますので、時間がある時にもう一度読んで頂
ければ幸いです。

それでは、本当にお付き合いをして頂き誠にありがとうございました。

明日から中国出張です。
成都という四川省の省都に行って来ます。
今年はこれが最後(今年6回目)の海外出張になります。

何か面白い事があれば、報告したいと思います。


今日もみんなで良いモノつくります。


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