『今日もみんなで良いモノつくります!』

『経営について』の考え方と従業員の『究極のモノづくり』に挑戦する姿を伝えたいと思います。

『‘JIMTOF’と‘産業革命’』について

2006年12月01日 | 展示会の事
JIMTOF(第23回日本国際工作機械見本市)の事を、覚えている内に少し書きたいと思います。また、この見本市の事だけを取り上げても、余り面白みもないかと思いますので、‘表題’に‘産業革命’を付け加えて、絡めて書きたいと思います。この‘日本国際工作機械見本市’は前にも少し書きましたが、2年に一回、有明の‘東京ビッグサイト’で開催されている訳ですが、今回はどんな新しいアイディアを盛り込んだ機械が出展されるのか楽しみでした。

それで‘出展機械’には大きく分けると次の様な特徴がありました。
(NC旋盤とマシニングセンターに絞って書きます。)
①MC系完全5軸MC      (※MCとはマシニングセンターの事です。)
⇒ 従来の立型MCタイプを完全5軸化したもの
  *ブロック(丸)材からの加工をワンチャックで展開する時に有利。 
②MC系テーブル切削主軸付(旋盤機能付)(リニア駆動式)完全5軸MC
  ⇒ ①を更に進化させた完全5軸MCで、テーブル部分が従来①はインデック ス
    機能で割り出すだけのものが、旋盤主軸として高速旋回。 
*高精度5軸部品の顧客向けで、最終形状に丸形状部分が残っている部品 に有利。
③NC旋盤系5軸複合旋盤
  ⇒ 従来のNC旋盤にMC機能を付加したもので、従来のターニングセンター やY軸
    旋盤を、更にMC5軸機能化した機械でタレット部分がMC主軸ヘッドになって、
    工具交換が可能。
  *最終形状に長めの丸モノ形状部分が残っている5軸形状部品に有利。 
④リニアモーター駆動方式のMC
  ⇒ ハイ・スピードと高精度位置決めの追求に有利。
⑤コンパクト・ライン化対応機械
  ⇒ 量産工場向け省スペース機械。
⑥航空機部品加工向け専用MC
  ⇒ ④と同じですが、奥行きよりもX軸の長手方向を重視した機械。
   *航空機業界の活況を受けて開発された専用MCで、アルミ材加工を中心 に
     業界向けリニアモーター駆動MC。
⑦リニアモーター駆動式門型タイプ大型MC
   ⇒ 大型部品の顧客向け、高精度位置決め・加工面品位向上を狙った機械。
⑧超音波微細加工NC旋盤
   ⇒新タイプの機械で、高精度の細長い軸加工向けの微細加工機械。
   *1秒間に4万回程度の超音波振動で刃物部分を動かし、切削抵抗を従来 の
    3分の1程度を実現しているNC旋盤。
   ※この機械が今回のJIMTOFでは、1番新しいアプローチの機械ではなかった
    かと思います。
⑨無人化対応システム ⇒ 省人化対応及び長時間稼動。
⑩ナノ制御機械
  ⇒実加工のワークで、ナノ制御のアプローチが可能な機械。この場合、ナノ 制御
   の保証ができる検査測定機器が必要です。また、機械設置などの環境整備 も
   必要で、資金のある大手企業の開発部門向け複合機械。
以上、簡単に纏めますと‘10項目’程度になります。
都合3日間、見本市(8日間開催)に行きましたが、それでも完全に全ブースを見て回れた訳ではありませんので、何か大事な技術を見落としているかも知れません。
特に今回感じたのは、どのメーカーさんも‘①’の‘5軸MC’を出展していた事ですが、まだ灰汁出しが完全に出来ていない機械も多く、従来から5軸MCの開発に取り組んでいるメーカーさんとの実力差を感じました。この完全5軸MCは、使用してみると良さが判るんですが、本当に便利な機械です。ノウハウ的な処もありますので、あまり詳しくは書きたくないのですが、様々な加工展開を可能にしてくれる機械です。そして、次に目を引いたのは‘④’の‘リニアモーター駆動タイプ’のMCでした。まだ、機械の購入価格が高い印象を受けましたので、何か高付加価値の部品加工を現在持っている企業さんには、導入してもペイして行けるかも知れませんが、一般向けに普及するには、まだ時間が掛かる感じがします。今後、弊社で増設して行きたい装置としては、‘②’と‘③’の複合タイプの機械です。ビジネスの方向性を見ながら、増設して行きたいと考えています。また、色々な部品加工を手掛けていると良く理解できるのですが、MCだと50番タイプの高速回転主軸タイプの機械が、仕事の能率が40番タイプとはかなり違いますので、可能な限り50番タイプのMCを増設したいと思っています。部品コスト対応を考えると、間違いなく有利な面があると考えています。
ところで、①~⑩には取り上げなかったのですが、弊社の取り組みの中で、オリジナルな‘モノづくり’の発想を反映した加工アプローチがあり、少しでも早くこの加工システムを構築し、弊社独自の技術として‘ブラックボックス化’して、ライバル企業との競争戦略のなかで、確実な差を築きたい加工アプローチがあります。

来年の中頃の構築予定ですが、この場ではまだ時期尚早で語れませんが、かなりの効果が現れると思っています。また、この業界ではかなり衝撃的な加工アプローチになる筈で、弊社の色々な経営数字にリアルに反映して来ると思っています。
成功すれば、どんどんこのシステムを取り入れたいと考えています。
弊社の来年開設する‘熊本工場’では、本格的な工作機械の設置を予定しています。ここでは、色々な機械加工のアプローチを積極的に試みて、お客さんの利益に繋げて行きたいと考えています。ここで最小限度に言える事は、更に完全5軸MCを増やして行く事です。今、機械選定の最終段階に来ていて、多くのメーカーさんとの打ち合わせがあり、また、現在ある既存の3工場の設備の増設・移動なども重ねて打ち合わせ中です。
『産業革命』とこの『JIMTOF』との関係なんですが、今でも工作機械の重切削タイプの機械は、‘滑り面’方式の機械が一番最適なのは変わりありません。
その滑り面方式と言うのが開発されたのが、遡る事、‘産業革命’の時までになります。NC旋盤もMCも、この‘滑り面’方式構造の機械には、今の最新の技術でも重切削加工では勝てません。未だに、この方式が機械剛性が一番高い構造になります。機械の構造として、それ程すばらしい技術が当時開発されて、今に至っている事になります。ただ、サブミクロンオーダーの追随性では、現在主流のリニア・ガイド方式には少し後塵を拝していますが、通常の精度モノの加工にも問題なく今でも通用する機械構造です。また、このリニア・ガイド方式も、私がこの会社を創立した頃から採用され始めた方式で、当時はかなり評判が悪く、リニア・ガイドと言うだけでダメ出しされた時期がありました。世の中、本当に変わりました。今では、どのメーカーさんもリニアになってしまいました。

ところで、薩摩の島津家の資料館で「尚古集成館」と言うのが、鹿児島の磯庭園(旧島津家の別荘)の一角にあります。そこに、薩英戦争後にイギリスから購入したものだと思われますが、4番?タイプの当時としては、かなり大型の立型フライス盤が展示されていたかと思います。他にも、昭和40年代まで活躍していた‘紡績機械’も展示されていたと記憶しています。百年の歳月を越えて活躍していた訳ですから、只驚くばかりです。こうして少し考えて見ると、当時のイギリスの‘政治力’を支えていたものは、紛れもなく、国力としての‘産業’、‘モノづくり’だった事になります。産業革命は、第2次大航海時代へと繋がり、ご存知の、あのぺりーが浦賀に遣って来る‘4隻の黒船’へとなる訳ですが、蒸気機関が安定した長い航海を可能にしました。江戸幕府は、‘グローバルスタンダード’の洗礼を受けた事になります。
まさしく、鎖国と言う‘クローズド(ローカル)・スタンダード’の中での政治・経済は、歴史的な転換を迫られた訳です。‘浦賀’と言えば、幕末の横須賀の事を思い出しますが、勝海舟と一緒に咸臨丸でアメリカに渡った‘小栗上野介(オグリコウズケノスケ)’(幕末の最後の勘定奉行)が幕閣の反対を押し切って、オランダのロッテルダムから購入した‘3トンスチームハンマー’は、平成9年まで稼動していたそうです。

※マザーマシンとは、金属等の素材一般を加工する機械の事ではなく、その素材そ
のモノを製造するプラントの事を言います。更に厳密に言えば、素材の原料を製造
するプラントの事を言います。‘小栗’は安易な完成品の購入に独り強く反対しま
した。この考え方に、誰も賛成・理解できる人間はいませんでした。この反対を押し切っての‘マザー・マシン’購入でした。彼は、アメリカから‘螺子(ネジ)’を一本握り締めて帰国します。当時、日本では螺子職人が一本一本、鑢(ヤスリ)で研いで製作をしていました。彼は、外国から購入するのではなく、産業の国産化を夢見ていました。そして、嫌と言う程の欧米との産業力の差を肌で感じ、それに追い付く為にも、‘マザーマシン’の必要性を感じていた事になります。彼の購入した、このスチームハンマーがあったからこそ、日露戦争での日本海海戦で無敵と謳われた‘ヴァルチック艦隊’に勝利したと言われています。この機械は、歴史的なマザー・マシン’となり、明治以降の富国強兵策の先駆けのシンボル的な設備ではないかと、私は思っています。また、‘小栗上野介’彼こそが、日本の現代の‘産業の父’ではないかと思います。‘産業力’が、紛れもなく‘政治力’を支えています。政治が経済を支え、そしてまた、経済が政治を支える基本形は、‘モノづくり’産業の本当の繁栄ではないかと思います。‘金融’に走り過ぎず、本当の‘モノづくり’に取り組む事が、未来の平和を約束している様に思えて来ます。

『産業革命』(1760~1830)について少し書いて終わりにします。
何故、イギリスから産業革命(工業生産の機械化に伴って起こった経済・社会の大
変動)が起こったかと言いますと、
 *毛織物業が盛んで、工場制手工業(マニュファクチュア)が普及していた。
 *農業の大規模化で、土地を失った農民が安い労働力の担い手になった。
 *石炭・鉄の資源が豊富で、石炭が燃料として利用され始めていた。
 *17世紀にヨーロッパで展開された「科学革命」の中心地であった。
 *大西洋交易圏の覇権を確立していて、富と広大な海外市場を確保していた。
この様な諸条件の中で、‘毛織物業’を守る為に、インドからの「綿布」(キャラコ)の輸入を禁止した事から、綿花その物の輸入に変わり、それが切っ掛けで‘紡績機械’の改良(技術革命)がされました。また、ワットの蒸気機関の改良で、紡績機械が蒸気で動かせる様になり‘動力革命’が起こりました。その後、各分野での機械生産化が進みます。重商主義(商業を重視した経済思想)の中心的政策である重金主義、貿易差額主義、また三角貿易等の手法による植民地支配が産業革命を支えた事になります。イギリスの産業革命は、示唆に富む事を教えています。
初期の中小資本の軽工業の成功が新規産業への進出を遅らせてしまい、大資本を必要とする重化学工業への転換が遅れてしまった事で、結果、後発の南北戦争後のアメリカとまたドイツの猛追を受ける事になってしまいます。(‘産業革命’とは、本当はこんなに簡単には説明し難いのですが、端折って説明すると、上記の様に纏められるかと思います。)私達も学ばなければいけません。一つの成功に安住している場合ではありません。その成功を活かして、次の成長の準備を進める必要があります。安住していると、直ぐに新しい技術を持った企業に追い抜かれてしまい、今の競争には生き残れない、と常々考えています。一つの成功体験に慢心してはいけないと言う事です。

弊社も、内なる‘産業革命’を従業員一同と力を合わせて起こし、世界にチャレンジできる企業になりたいと思います。


今日もみんなで良いモノつくります。 
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