■高橋正子選
【最優秀】
★柿すだれ空の青さに明るさに/堀佐夜子
干柿にするため、軒にずらりと剥いた柿が干されている。柿すだれという。青空に映えて辺りが一度に明るくなる。「青さに明るさに」の畳みかけの明るさは、作者の気持の明るさでもある。(高橋正子)
【特選/5句】
★美しき人参の赤江戸料理/碇 英一
何気ない人参の赤い色であるが、江戸料理の小粋な彩りとなって、美しいと思わせてくれる。(高橋正子)
★桜紅葉乾きて句帳を零れけり/古田けいじ
きれいな桜紅葉を拾って句帳に挟んでおいたのが、日にちが経って乾いて軽くなり、句帳を持ち出したときに、はらりと零れ落ちた。その零れ具合もいい風趣。(高橋正子)
★諸霊祭胸骨縦に割られけり/おくだみのる
胸骨を縦に割られる大手術をされた作者であるが、自身が医者でおられるので、冷静に受け止められている。諸霊祭は、キリスト教の行事で11月2日に行われる。(高橋正子)
★脱稿をこの日と決めし一葉忌/かわなますみ
「一葉忌」に託す思いが知れる。ここを踏ん張って脱稿にこぎつけようという意思の強さが、一葉に通じるようだ。(高橋正子)
★星流る瀬戸吊橋に連なる灯/小河原銑二
瀬戸大橋の形に灯が灯り、その空を星が流れる美しい夜空が詠まれている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/20句】
★樹の中を落ちる黄葉に朝日射す/池田加代子
「樹の中」を落ちる「黄葉」だ。「樹の中」にあって、朝日の「黄葉」は、見事な発見だ。(高橋信之)
★新鮮な泥葱束ねて持ち帰る/大山 凉
「泥葱」が「新鮮」なのだ。生活の強さだ。(高橋信之)
★人参の焼菓子しっとり銀紙に/小川美和
銀紙に包まれた焼き菓子の食感の良さ、香ばしさに手作りの味わい深いあたたかさが伝わります。 (藤田洋子)
★枯葉散る日差しと風の交叉して/大給圭泉
散っていく枯葉ですが、交叉する日差しと風に生かされて最後のきらめきを感じます。(池田多津子)
★山裾のすすき明るく枯れゆけり/甲斐ひさこ
最後の輝きを「白く」ではなく「明るく」と表現したのが共感を覚え、人生も明るく輝いて散りたいと思うのが世の常であると思います。 ( 清水清正)
★冬林檎剥けば真白が息づきぬ/中村光声
林檎自体が剥けば白いが、冬ということで更に白さが際立つ感じがします。 (辻 保宏)
★葉の散りて空きりきりと晴れ上がる/小西 宏
落葉の後、裸木を透けて冬の青空がこの上なく美しくみえてきます。「空きりきりと」の表現が素敵で惹かれました。(甲斐ひさこ)
★冬の灯を点けて一番電車くる/おおにしひろし
つい最近まで、朝陽の中を来ていた始発。冬に入り、未だ明けぬ路を走る一番電車からは、その灯りが、沁み入るように届きます。 (かわな ますみ)
★外つ国に吾子よ勤労感謝の日/志賀たいじ
「今日は勤労感謝の日、外国で働いているご子息のことを感慨深く、愛しんでいる素敵な詩だと思います。リズムも素敵です」(小口泰與)
★冥王星落ちて冬田の真暗がり/野田ゆたか
「冥王星」と「真暗がり」がいいです。大きさのある不思議な魅力のある句。 (多田有花)
★その上に天守と空を冬紅葉/藤田洋子
松山城の冬景色を詠まれたと思います。松山城を懐かしく思い出して居ります。とても好きな句です。 (堀佐夜子)
★それぞれの柿の重さを吊しゆく/池田多津子
重量の異なる柿を吊るしてゆく。干す形態は色々あるが、2個を一組にしているのでしょうか。上手い具合に日が当たるように2個の高さを少しながら吊るすのでしょうか。 (古田けいじ)
★布団干す真青な朝の空あれば/松原恵美子
日に干すとふっくら暖かくなる布団。冬の澄んだ朝の日差しが目に浮かぶ。日常がしっかりと詠み込まれていて好きな句です。(野田ゆたか)
★りんご箱開けて数個を机上へと/祝 恵子
りんごのイメージが、限りなく膨らみ、好きな句です。(渋谷 洋介)
★暖房の周りの家族五角形/高橋秀之
冬の夜の、家族団欒が、なんとも楽しく伝わってきました。暖房という季語が、大きく息づいていると思いました。 (あみもとひろこ)
★冬もみじ山裾までも色尽し/藤田裕子
今年の紅葉は少し遅れたようですが、さいたまも今が盛りです。山裾まで紅葉で染まった状景はそれは美しいことでしょう。 (大山 凉)
★観覧車枯木立ぬけ冬空へ/あみもとひろこ
★彫り深き山より生まる北颪/小口泰與
★木枯らしにセーヌの浪の高かりし/友田 修
★えのころも薄も荻も枯れし野に/多田有花
【入選Ⅱ/31句】
★冬銀河君は佳き人待つくにへ/渋谷洋介
鎮魂の心が溢れている。冬の夜空に輝く銀河は、銀河鉄道のイメージも重なってこの句を引き締めている。(高橋正道)
★鐘撞きて湖東三山秋くるる/吉川豊子
紅葉で賑わっている昼間の湖東三山でなく、暮れようとしている静かなお山を詠まれたのに感じ入りました。(黒谷光子)
★庭先に葱を植ゑけり市立つ日/阿部 昭
葱を植えるという行為にささやかな生産の喜びも感じられると同時に、日常の行為に必ず付随する淋しさもあり、読み手によって両方に取れ、句に振幅の広がりが感じられます。下五がさらに意味を深めていると思いました。(齋藤良一)
★鉛筆の匂い懐かし冬灯下/今村七栄
冬の灯りの下に流れているゆっくりとした時間がいい。何かを書き始めようとする時のうきうきした感じが、久しぶりに触れる鉛筆の香りに上手に表現されていると思います。 (安藤かじか)
★帰り花中の一輪陽をまとう/篠木 睦
★大根の袋斜めにまだ余り/臼井虹玉
★皇居なる大き遺産や番鴛鴦/安丸てつじ
★朝寒やおんなの面の頬白し/児島浩平
★庄内の干大根厳重梱包で着く/宮島千生
★赤かぶの高々干され輝けり/松本和代
★落葉散る風音高き母の忌日/清水清正
★切り方で大根の味さまざまに/平田 弘
★初咲きの山茶花真っ白触れてみる/竹内よよぎ
★水鳥の水曳きてゆく夕暮れに/丸山草子
★白足袋の干されし軒の花八手/齋藤良一
★峠越え初冬の青き風に遇う/尾 弦
★冠雪の富士の耀き新幹線/黒谷光子
★谷深く木々を擽りつつ落葉/安藤かじか
★桜紅葉きれいな一葉拾いけり/岩本康子
★ぱらぱらと音成す竹や冬の径/かつらたろう
★斜め日を浴びて小鳥は枝の中/河野渓太
★おはようと枯葉集める隣近所/辻 保宏
★富士を背に日差し輝く懸大根/鈴木誠子
★新しき靴の弾力石蕗の花/黒沼風鈴子
★食卓を囲み勤労感謝の日/國武光雄
★下校する少女ら弾む冬日のなかへ/野仁志 水音
★外仕事する男らの焚火なり/村井紀久子
★お隣へまわす回覧息白し/飯島治蝶
★紅葉の空より近き所から/松本豊香
★酒そそぐほうれん草の鍋しゃぶに/高橋正道
★夕暮れの空を狭めて雁の竿/澤井 渥
【最優秀】
★柿すだれ空の青さに明るさに/堀佐夜子
干柿にするため、軒にずらりと剥いた柿が干されている。柿すだれという。青空に映えて辺りが一度に明るくなる。「青さに明るさに」の畳みかけの明るさは、作者の気持の明るさでもある。(高橋正子)
【特選/5句】
★美しき人参の赤江戸料理/碇 英一
何気ない人参の赤い色であるが、江戸料理の小粋な彩りとなって、美しいと思わせてくれる。(高橋正子)
★桜紅葉乾きて句帳を零れけり/古田けいじ
きれいな桜紅葉を拾って句帳に挟んでおいたのが、日にちが経って乾いて軽くなり、句帳を持ち出したときに、はらりと零れ落ちた。その零れ具合もいい風趣。(高橋正子)
★諸霊祭胸骨縦に割られけり/おくだみのる
胸骨を縦に割られる大手術をされた作者であるが、自身が医者でおられるので、冷静に受け止められている。諸霊祭は、キリスト教の行事で11月2日に行われる。(高橋正子)
★脱稿をこの日と決めし一葉忌/かわなますみ
「一葉忌」に託す思いが知れる。ここを踏ん張って脱稿にこぎつけようという意思の強さが、一葉に通じるようだ。(高橋正子)
★星流る瀬戸吊橋に連なる灯/小河原銑二
瀬戸大橋の形に灯が灯り、その空を星が流れる美しい夜空が詠まれている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/20句】
★樹の中を落ちる黄葉に朝日射す/池田加代子
「樹の中」を落ちる「黄葉」だ。「樹の中」にあって、朝日の「黄葉」は、見事な発見だ。(高橋信之)
★新鮮な泥葱束ねて持ち帰る/大山 凉
「泥葱」が「新鮮」なのだ。生活の強さだ。(高橋信之)
★人参の焼菓子しっとり銀紙に/小川美和
銀紙に包まれた焼き菓子の食感の良さ、香ばしさに手作りの味わい深いあたたかさが伝わります。 (藤田洋子)
★枯葉散る日差しと風の交叉して/大給圭泉
散っていく枯葉ですが、交叉する日差しと風に生かされて最後のきらめきを感じます。(池田多津子)
★山裾のすすき明るく枯れゆけり/甲斐ひさこ
最後の輝きを「白く」ではなく「明るく」と表現したのが共感を覚え、人生も明るく輝いて散りたいと思うのが世の常であると思います。 ( 清水清正)
★冬林檎剥けば真白が息づきぬ/中村光声
林檎自体が剥けば白いが、冬ということで更に白さが際立つ感じがします。 (辻 保宏)
★葉の散りて空きりきりと晴れ上がる/小西 宏
落葉の後、裸木を透けて冬の青空がこの上なく美しくみえてきます。「空きりきりと」の表現が素敵で惹かれました。(甲斐ひさこ)
★冬の灯を点けて一番電車くる/おおにしひろし
つい最近まで、朝陽の中を来ていた始発。冬に入り、未だ明けぬ路を走る一番電車からは、その灯りが、沁み入るように届きます。 (かわな ますみ)
★外つ国に吾子よ勤労感謝の日/志賀たいじ
「今日は勤労感謝の日、外国で働いているご子息のことを感慨深く、愛しんでいる素敵な詩だと思います。リズムも素敵です」(小口泰與)
★冥王星落ちて冬田の真暗がり/野田ゆたか
「冥王星」と「真暗がり」がいいです。大きさのある不思議な魅力のある句。 (多田有花)
★その上に天守と空を冬紅葉/藤田洋子
松山城の冬景色を詠まれたと思います。松山城を懐かしく思い出して居ります。とても好きな句です。 (堀佐夜子)
★それぞれの柿の重さを吊しゆく/池田多津子
重量の異なる柿を吊るしてゆく。干す形態は色々あるが、2個を一組にしているのでしょうか。上手い具合に日が当たるように2個の高さを少しながら吊るすのでしょうか。 (古田けいじ)
★布団干す真青な朝の空あれば/松原恵美子
日に干すとふっくら暖かくなる布団。冬の澄んだ朝の日差しが目に浮かぶ。日常がしっかりと詠み込まれていて好きな句です。(野田ゆたか)
★りんご箱開けて数個を机上へと/祝 恵子
りんごのイメージが、限りなく膨らみ、好きな句です。(渋谷 洋介)
★暖房の周りの家族五角形/高橋秀之
冬の夜の、家族団欒が、なんとも楽しく伝わってきました。暖房という季語が、大きく息づいていると思いました。 (あみもとひろこ)
★冬もみじ山裾までも色尽し/藤田裕子
今年の紅葉は少し遅れたようですが、さいたまも今が盛りです。山裾まで紅葉で染まった状景はそれは美しいことでしょう。 (大山 凉)
★観覧車枯木立ぬけ冬空へ/あみもとひろこ
★彫り深き山より生まる北颪/小口泰與
★木枯らしにセーヌの浪の高かりし/友田 修
★えのころも薄も荻も枯れし野に/多田有花
【入選Ⅱ/31句】
★冬銀河君は佳き人待つくにへ/渋谷洋介
鎮魂の心が溢れている。冬の夜空に輝く銀河は、銀河鉄道のイメージも重なってこの句を引き締めている。(高橋正道)
★鐘撞きて湖東三山秋くるる/吉川豊子
紅葉で賑わっている昼間の湖東三山でなく、暮れようとしている静かなお山を詠まれたのに感じ入りました。(黒谷光子)
★庭先に葱を植ゑけり市立つ日/阿部 昭
葱を植えるという行為にささやかな生産の喜びも感じられると同時に、日常の行為に必ず付随する淋しさもあり、読み手によって両方に取れ、句に振幅の広がりが感じられます。下五がさらに意味を深めていると思いました。(齋藤良一)
★鉛筆の匂い懐かし冬灯下/今村七栄
冬の灯りの下に流れているゆっくりとした時間がいい。何かを書き始めようとする時のうきうきした感じが、久しぶりに触れる鉛筆の香りに上手に表現されていると思います。 (安藤かじか)
★帰り花中の一輪陽をまとう/篠木 睦
★大根の袋斜めにまだ余り/臼井虹玉
★皇居なる大き遺産や番鴛鴦/安丸てつじ
★朝寒やおんなの面の頬白し/児島浩平
★庄内の干大根厳重梱包で着く/宮島千生
★赤かぶの高々干され輝けり/松本和代
★落葉散る風音高き母の忌日/清水清正
★切り方で大根の味さまざまに/平田 弘
★初咲きの山茶花真っ白触れてみる/竹内よよぎ
★水鳥の水曳きてゆく夕暮れに/丸山草子
★白足袋の干されし軒の花八手/齋藤良一
★峠越え初冬の青き風に遇う/尾 弦
★冠雪の富士の耀き新幹線/黒谷光子
★谷深く木々を擽りつつ落葉/安藤かじか
★桜紅葉きれいな一葉拾いけり/岩本康子
★ぱらぱらと音成す竹や冬の径/かつらたろう
★斜め日を浴びて小鳥は枝の中/河野渓太
★おはようと枯葉集める隣近所/辻 保宏
★富士を背に日差し輝く懸大根/鈴木誠子
★新しき靴の弾力石蕗の花/黒沼風鈴子
★食卓を囲み勤労感謝の日/國武光雄
★下校する少女ら弾む冬日のなかへ/野仁志 水音
★外仕事する男らの焚火なり/村井紀久子
★お隣へまわす回覧息白し/飯島治蝶
★紅葉の空より近き所から/松本豊香
★酒そそぐほうれん草の鍋しゃぶに/高橋正道
★夕暮れの空を狭めて雁の竿/澤井 渥