入賞発表/9月16日(日)~9月22日(土)

2007-09-25 23:45:15 | 入賞発表
■入賞発表
□高橋正子選

【最優秀】
★秋嶺や影あたらしき甲斐盆地/かわなますみ
すっかり秋の嶺々となった甲斐盆地を取り囲む山々。「影あたらしき」に作者の新鮮な感動があって、目を瞠り、全身で見、感じようとしている様子が窺える。「甲斐盆地」が効いて、句に澄明な空気が満ちている。(高橋正子)

【特選/5句】
★とびとびのいっせいに今日彼岸花/池田加代子
とびとびではあるが、あちらにもこちらにも、今日いっせいに彼岸花が咲き出した。彼岸花は初め葉もないので、突如として咲く印象がある。彼岸がくれば咲く彼岸花は、自然の大意。(高橋正子)

★さわやかに太平洋の水平線/池田多津子
さわやかに、一本引かれた水平線。単純化された表現に太平洋の水平線らしい太さが読める。(高橋正子)

★葉月来て浜辺の貝の透き通る/藤田荘二
「葉月」は、旧暦の八月。立秋から一月ほどになると、浜辺には、秋のさびしさが少しばかり感じられ始める。海の水も澄み、浜辺の砂も、貝も透き通る。うつくしい言葉が連なる詩情豊かな句。(高橋正子)

★今朝の雨まだ滴りて彼岸花/安藤かじか
今朝の雨がさっとあがり、雨に洗われた野道や田圃は、すがすがしい。彼岸花はまだ雨露を滴らせている。彼岸花の今がみずみずしく捉えられリアルな花となった。(高橋正子)

★稲刈りの握る鎌の刃陽を弾く/松本和代
稲を刈る人の実感がこもった俳句。「鎌の刃陽を弾く」が稲刈りのすべてを物語っている。よく晴れたまさに、稲刈り日和に、鎌をしっかり握って力を入れてサクッと刈りとるうれしさが、気取らずに句になっている。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★一切の空と向きあい花野路/おおにしひろし
天と地と合するところ、ひろびろと続く花野を行く。宇宙を見据えつつ。心の中に気の膨らむ心地のする、スケールの大きな句です。(小西 宏)

★もず鳴いて林のかたちくっきりと/あみもとひろこ
鵙のひと際甲高い声が向うの林の中、きりりとした締まった声に林の形までがくっきりと見えた。人の心の動きの変化をこんなに表現できるなんて俳句って素敵だと思いました。好きな一句です。(志賀たいじ)

★武蔵野の息衝く林椎拾う/中村光声
もう木の実が落ち出しました。武蔵野という地名がいいですね。(祝 恵子)

★穂芒の束ね解きけり月の夜に/かつらたろう
待っていた満月の夜、束を解いて芒を活ける。ささやかな楽しみですが、心豊かなひとときが好きです。(池田多津子)

★故郷に来て傘越しに吾亦紅/宮島千生
あいにくのお天気で傘越しだったけれども、故郷の野に吾亦紅を見た作者の懐かしさやうれしさが伝わってきました。(臼井愛代)

★房総に雲湧きあがり花カンナ/小西 宏
夏の終わりの房総の地で見られた夏雲の名残と花カンナの、強く鮮やかな印象が伝わってきます。(臼井愛代)

★うすゆき草ひときわ厳しき嶺に有り/上島笑子
人の近寄らないような厳しい嶺に咲くエーデルワイスの可憐な花に強く惹かれた作者の思いがあります。(上島笑子)

★水涼し今朝庭取れの菜を洗う/竹内よよぎ
庭の朝採りの菜を洗う時此れまでと違う水の冷やたさを感じられて詠まれた句と思います。(堀佐夜子)

★野の花の眠ることなく月夜かな/小河原宏子
うつくしい月夜には、野の花は眠ることがないのかもしれません。童話の世界のような清らかさを感じます。(臼井愛代)

★葡萄房きみどり零るる白き皿/藤田裕子
白いお皿に豊かに盛られたきみどり色の葡萄がさわやかに目に浮かびます。(臼井愛代)

★ポストまで無花果匂う道を行く/堀佐夜子
ポストまでの道を無花果の甘い香りに包まれて、幸せな気分にひたられたことがよく伝わってきました。(井上治代)

★変形の七色ガラスにりんご盛る/祝 恵子
七色に輝く変形のガラス器だけでも強い印象を放ちますが、そこに林檎が盛られて、豊かな色合い、香りに満ちた秋の情景となっています。(臼井愛代)

★風吹けば刈田の匂い陽の匂い/井上治代
稲を刈り終えた田圃からの匂いが、秋の陽差しの匂いとともに風に運ばれて来る。豊穣の秋の匂いだ。満ち足りた気持ちとあたたかさのある一句です。(飯島治蝶)

★とんぼうの翅をびびびと竜の淵/島津康弘
秋の水辺で見たとんぼのいきいきとした姿が、「びびび」という翅の音に表現されていると思いました。(臼井愛代)

★銀色のバケツにすすき花市場/飯島治蝶
とりどりの花々が運び込まれる花市場にも秋の野趣が訪れています。銀色のバケツにはススキが無造作に金色の光を湛えて、市場の一角に秋野の空気を呼び込んでいるかに爽やかです。(池田加代子)

【入選Ⅱ/18句】
★青鷺を映して静か秋の水/多田有花
青鷺の目立たぬ色を映すほどに澄み、そして静かである、秋の水の清らかさが、爽やかに浮かびます。(かわなますみ)

★そよ風にコスモス畑彩散す/篠木 睦
畑に広がるコスモスの花。そこへ風が来ると、一斉に花がゆれる。その風景を「彩散す」としたところがいいと思います。(古田けいじ)

★今年竹ういうしきや真青なる/大給圭泉
今年生えた新しい竹の美しい青さが目に沁み入るように感じる清々しい句だと思いました。(小河原宏子)

★初紅葉眼下に上がるロープーウェイ/高橋秀之
山頂では、もう紅葉が始まっているのですね。ロープーウェイで下山する、足元から上がっていく初紅葉を、ゴンドラの中で見送る作者が見えます。(吉川豊子)

★鬼やんま雲を捉えて飛び去りぬ/渋谷洋介
国内最大の蜻蛉である鬼やんまがさっと空に舞い上がる様を「雲を捉えて」と大きく把握したところがすばらしい。大柄な俳句になっている。(島津康弘)

★秋の陽をぽんと蹴って逆立ちす/松本豊香
秋の陽の当たる地面を軽く蹴っての逆立ち、身の軽さ、躍動感が伝わってきて、気持ちの良い句と思いました。(藤田荘二)

★すっきりと窓拭きあげて秋の空/丸山草子
窓をきれいに拭いて、そこから見上げた秋の空。高く青く澄みきった秋の空が広がります。(藤田裕子)

★芝刈りの音軽やかに秋の午後/吉川豊子
よく晴れた秋の日の午後、音も軽やかに芝がきれいに刈られていき気持ちまで晴々としてくるようです。(小川美和)

★飛行機の残暑列島北上す/古田けいじ
★虚子館に汀子を見たり獺祭忌/碇 英一
★機の昇る大運動会の声に乗り/吉田晃
★秋草を英字新聞に包む日も/臼井愛代
★一点の雲なき青空文化祭/岩本康子
★新涼の風に真向かう一歩かな/尾 弦
★陽の匂いさせて草の実抜きにけり/小川美和
★母の佇つ庭に出ずれば星月夜/松原恵美子
★山麓の空気おだやか蕎麦の花/湯澤まさえ
★来し方をしみじみ想う秋の蝉/友田 修

好きな句(互選)/16日-22日

2007-09-23 11:35:53 | 互選
■互選高点句(9月16日-22日)最終結果

39名の方々から39句の投句があり、互選締め切りまでに38名が互選に参加されました。以下は、<9月16日-22日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。投句一覧に名前のない方の点数は加算されておりません。

【最高点/16点】
◎秋嶺や影あたらしき甲斐盆地/かわなますみ

【次点/11点】
○秋の陽をぽんと蹴って逆立ちす/松本豊香

(集計/臼井愛代)



□好きな句(互選)を下の<コメント>にお書き込みください。
①下記の<投句一覧/9月16日-22日>の中から選んでください。
②好きな句(互選)を5句選んでください。もっとも好きな句1句にコメントも付けてください。
③互選集計の対象は、9月25日(火)の午後8時までに書き込まれた<好きな句(互選)>に限ります。

■投句一覧39名1人1句/9月16日-22日(高橋正子抽出)

★一切の空と向きあい花野路/おおにしひろし
★葡萄房きみどり零るる白き皿/藤田裕子
★ポストまで無花果匂う道を行く/堀佐夜子
★変形の七色ガラスにりんご盛る/祝 恵子
★青鷺を映して静か秋の水/多田有花
★さわやかに太平洋の水平線/池田多津子
★秋草を英字新聞に包む日も/臼井愛代
★そよ風にコスモス畑彩散す/篠木 睦
★今年竹ういうしきや真青なる/大給圭泉
★風吹けば刈田の匂い陽の匂い/井上治代

★一点の雲なき青空文化祭/岩本康子
★初紅葉眼下に上がるロープーウェイ/高橋秀之
★房総に雲湧きあがり花カンナ/小西宏
★うすゆき草ひときわ厳しき嶺に有り/上島笑子
★とびとびのいっせいに今日彼岸花/池田加代子
★飛行機の残暑列島北上す/古田けいじ
★虚子館に汀子を見たり獺祭忌/碇 英一
★葉月来て浜辺の貝の透き通る/藤田荘二
★機の昇る大運動会の声に乗り/吉田晃
★鬼やんま雲を捉えて飛び去りぬ/渋谷洋介

★秋の陽をぽんと蹴って逆立ちす/松本豊香
★秋嶺や影あたらしき甲斐盆地/かわなますみ
★新涼の風に真向かう一歩かな/尾 弦
★陽の匂いさせて草の実抜きにけり/小川美和
★もず鳴いて林のかたちくっきりと/あみもとひろこ
★銀色のバケツにすすき花市場/飯島治蝶
★武蔵野の息衝く林椎拾う/中村光声
★母の佇つ庭に出ずれば星月夜/松原恵美子
★稲刈りの握る鎌の刃陽を弾く/松本和代
★とんぼうの翅をびびびと竜の淵/島津康弘

★山麓の空気おだやか蕎麦の花/湯澤まさえ
★すっきりと窓拭きあげて秋の空/丸山草子
★穂芒の束ね解きけり月の夜に/かつらたろう
★故郷に来て傘越しに吾亦紅/宮島千生
★今朝の雨まだ滴りて彼岸花/安藤かじか
★水涼し今朝庭取れの菜を洗う/竹内よよぎ
★芝刈りの音軽やかに秋の午後/吉川豊子
★野の花の眠ることなく月夜かな/小河原宏子
★来し方をしみじみ想う秋の蝉/友田 修

■互選不参加
友田修・松本豊香・宮島千生(計3名)

入賞発表/9月9日(日)~9月15日(土)

2007-09-19 00:53:05 | 入賞発表
■入賞発表
□高橋正子選

【最優秀】
★冬瓜の若き青さをざくと切る/おおにしひろし
冬瓜を「若き青さ」と言い、またざくと耳に響く音で切る。男性ならではのさっぱりとした切れ味のある句だ。(高橋正子)

【特選/5句】
★月昇る沖より青く光染み/吉田晃
月が昇る沖が、「青く光染み」と、幻想的に詠まれている。光りが染みるという表現が作者の思いを表し、また沖の海をもよく表している。(高橋正子)

★新涼の水ひんやりと米をかす/あみもとひろこ
米をとぐことは、毎日かわらない主婦の仕事。手に触れる水をひんやりと心地よく感じたことで生まれた句だが、こんなことからも季節の移ろいを感じ取る生活こそ上等といいたい。(高橋正子)

★鯖雲の入江みどりを沈めおり/島津康弘
鯖雲は、鰯雲、うろこ雲とも呼ばれるが、鯖の背の斑紋のように見えることから付けられた。入江は、みどりに澄んだ水を深く湛え、空には、一面に鯖雲が広がっている。祈りある風景と言っていい。鯖雲の季語が効果的。(高橋正子)

★蜻蛉の軽きを留めてシャツ乾く/松原恵美子
綺麗に乾いたシャツに、蜻蛉が軽く留まっている。それだけで、からりと晴れたいい天気だった一日が知れる。読んで気持が軽くなる清潔な句。(高橋正子)

★樹を離れあおき団栗零れおり/小川美和
樹を離れたところにまだ青い団栗が零れている。嵐に吹き落とされたのであろうか。想像をしてみる。青い団栗のかわいらしさと、時季でないのに樹を離れた実へ愛おしさがあって、やさしい句である。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★広々と岬の空に秋の雲/藤田洋子
空も水も澄んだ大気の中にあります。広がりのある風景に清々しさが溢れています。(多田有花)

★椎の実の丸さ揃いて結び初む/碇 英一
同じような丸さで数多の椎の実が実を結ぶかわいらしさ。深まりゆく秋の始まりを感じられた作者の実感があります。(臼井愛代)

★棚田ごと包みし金の秋日かな/多田有花
「金の秋日」が印象的で、広々とした棚田の秋の景がとてもよく伝わってきます。(小川美和)

★種重く垂るひまわりの刈られゆく/祝 恵子
夏の間、鮮やかに咲き続けたひまわりも、種の重みに傾いて刈られようとしている。一つの季節の終わりの感慨があります。(臼井愛代)

★稲雀風のかたちになり渡る/甲斐ひさこ
一斉に飛び立って空を渡ってゆく稲雀の群の広がりを、まるで風そのもののように感じられた作者の感動が伝わってきます。(臼井愛代)

★入院の初日過ぎけり濃竜胆 /池田加代子
お身内の方が入院の初日を無事に済まされてほつとなさって、患者さんに竜胆を活けられ早く癒える日を願っておられますように思われます。(大給圭泉)

★空の色沖の潮目も秋の色/篠木 睦
あるひの旅行の時に実感した景色を思い出しました。その時は一句も浮かびませんでしたが、秋の色の表現が素晴らしいと思いました。(湯澤まさえ)

★みんみんと山伏峠空青く/大給圭泉
青空の下、蝉の声だけが聞こえる真夏の峠の様子を思います。「山伏峠」という地名が印象に残ります。(臼井愛代)

★船笛の一際近く秋の朝/岩本康子
秋の朝の清々しさがとてもよく伝わってきます。(高橋秀之)

★稲の香や昭和の時代遠ざかる/中村光声
懐かしい稲の香を近くに過ごされた昭和の時代を思われたのでしょう。香りに運ばれてきた記憶への作者の心の動きを思います。(臼井愛代)

★秋雲や倒れし稲を結い終える/安藤かじか
秋雲の下、倒れた稲を立て直す作業を終えた安堵感。作物へのいたわりの優しさを感じると共に、ご苦労も伝わってまいります。(臼井愛代)

★透きとおる空の青さと秋桜/小河原宏子
晴れ渡った秋の空、「透きとおる」で良く表現されていると思います。その青い空に、秋桜の色が映えて美しく、水彩画を見るようで好きな句です。(吉川豊子)

★つやつやと籠に盛られて秋の茄子/吉川豊子
「つやつやと」、「盛られて」という言葉から、畑の恵みの豊かさが伝わってまいります。(臼井愛代)

★美術館陽の射す庭にとんぼ来て/飯島治蝶
心豊かになる美術館という場所に、軽やかにとんぼもやって来た。作者が過ごされたよきひとときを思いました。(臼井愛代)

★小鳥来て朝が明るくそこにある/臼井愛代

【入選Ⅱ/20句】
★藁くずのそこだけ明るき苅田雨/かつらたろう
残っている藁くずにスポットが当たるように愛おしい、そんな気がしてきます。優しい雨です。(池田多津子)

★菊薫るチャペルに響く祝婚歌/渋谷洋介
明るく幸せに満ちた婚礼の様子が秋のすがすがしい空気とともに伝わってくるようです。(小西 宏)

★新涼や水音曲がるいなか道/湯澤まさえ
朝か夕方の、散歩ウォーキングの時の景と推察しますが、曲がりくねったいなか道の脇に沿って小川があり「さらさら」、「ごぼごぼ」との心地よい水の音を聞きながら歩いている作者です。初秋の爽やかで鄙びた景色が「水音曲がる」によく表現され素敵な句です。(かつらたろう)

★虫の音や今日の終わりの豊かなる/藤田裕子
充実した一日の終わりの虫の音に心を癒される作者。「豊かなる」に満足感が溢れています。(島津康弘)

★晴れわたる空に高々稲架かける/池田多津子
秋に稔った稲の収穫の喜びが、中七から伝わって来ます。農作業に汗した日々が報われ、晴れ渡る空が清々しい。至福の時でもある。(飯島治蝶)

★秋の夜並ぶ幼子布団掛け/高橋秀之
寝冷えを気遣う父親の愛情。「並ぶ幼子」に幸せな家庭が見えます。(渋谷洋介)

★子の前にゆげ立ちのぼる栗強飯/上島笑子
秋の味覚の漂う食卓、栗ご飯の湯気のぬくもりにお子様へのあたたかな愛情があふれているようです。(藤田洋子)

★ななかまど赤を濃くして夕日浴ぶ/丸山草子
ななかまどが赤色を一段と色濃くし、夕日を浴びている。眩しいばかりの光景で素敵な句だと思います。(小河原宏子)

★長き夜の酸素マスクのあぶく音/尾 弦
「もの」だけの表現ですが、深く重い祈りが伝わって来る句だと思います。(碇 英一)

★落葉降る空の広さよ明るさよ/竹内よよぎ
★きちきちの緑に一歩足を退く/高橋正道
★一病者釣瓶落しの間を起きぬ/かわなますみ
★朝日射し空の青さの秋めきぬ/堀佐夜子
★夕暮れて秋茄子の色寂しかり/井上治代
★繋がって空高くある赤とんぼ/小西宏
★虫の音に草の粗密を山の宿/藤田荘二
★まんじゅしゃげ陽の色吸いてすっと咲く/松本豊香
★厨窓開けて稲穂の風を呼ぶ/松本和代
★孫を見て出でし産院星月夜/宮島千生
★風高しふいに来るは鬼やんま/笠間淳子

好きな句(互選)/9月9日-15日

2007-09-16 11:07:04 | 互選
互選高点句(9月9日-15日)最終結果

41名の方々から41句の投句があり、互選締め切りまでに38名が互選に参加されました。以下は、<9月9日-15日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。同点は投句者名五十音順となっています。

【最高点/13点】
◎蜻蛉の軽きを留めてシャツ乾く/松原恵美子

【次点/12点/同点2句】
○棚田ごと包みし金の秋日かな/多田有花
○新涼や水音曲がるいなか道/湯澤まさえ

(集計/臼井愛代)

■互選不参加
池田加代子、高橋正道、中村光声、吉田 晃 (計4名)



□好きな句(互選)を下の<コメント>にお書き込みください。
①下記の<投句一覧/9月9日-15日>の中から選んでください。
②好きな句(互選)を5句選んでください。もっとも好きな句1句にコメントも付けてください。
③互選は、9月21日(金)まで許されますが、互選集計の対象は、9月18日(火)の午後8時までに書き込まれた<好きな句(互選)>に限ります。
④投句をされていない方も互選に積極的に参加してください。
ただし、投句されていない方の選は集計の対象にはならないことをご了承ください。

■投句一覧41名1人1句/9月9日-15日(高橋正子抽出)

★冬瓜の若き青さをざくと切る/おおにしひろし
★小鳥来て朝が明るくそこにある/臼井愛代
★空の色沖の潮目も秋の色/篠木 睦
★みんみんと山伏峠空青く/大給圭泉
★入院の初日過ぎけり濃竜胆 /池田加代子
★月昇る沖より青く光染み/吉田晃
★菊薫るチャペルに響く祝婚歌/渋谷洋介
★美術館陽の射す庭にとんぼ来て/飯島治蝶
★稲の香や昭和の時代遠ざかる/中村光声
★蜻蛉の軽きを留めてシャツ乾く/松原恵美子

★鯖雲の入江みどりを沈めおり/島津康弘
★新涼や水音曲がるいなか道/湯澤まさえ
★秋雲や倒れし稲を結い終える/安藤かじか
★落葉降る空の広さよ明るさよ/竹内よよぎ
★透きとおる空の青さと秋桜/小河原宏子
★きちきちの緑に一歩足を退く/高橋正道
★虫の音や今日の終わりの豊かなる/藤田裕子
★広々と岬の空に秋の雲/藤田洋子
★朝日射し空の青さの秋めきぬ/堀佐夜子
★種重く垂るひまわりの刈られゆく/祝 恵子

★棚田ごと包みし金の秋日かな/多田有花
★晴れわたる空に高々稲架かける/池田多津子
★夕暮れて秋茄子の色寂しかり/井上治代
★船笛の一際近く秋の朝/岩本康子
★秋の夜並ぶ幼子布団掛け/高橋秀之
★繋がって空高くある赤とんぼ/小西宏
★子の前にゆげ立ちのぼる栗強飯/上島笑子
★椎の実の丸さ揃いて結び初む/碇 英一
★虫の音に草の粗密を山の宿/藤田荘二
★まんじゅしゃげ陽の色吸いてすっと咲く/松本豊香

★一病者釣瓶落しの間を起きぬ/かわなますみ
★稲雀風のかたちになり渡る/甲斐ひさこ
★長き夜の酸素マスクのあぶく音/尾 弦
★樹を離れあおき団栗零れおり/小川美和
★新涼の水ひんやりと米をかす/あみもとひろこ
★厨窓開けて稲穂の風を呼ぶ/松本和代
★ななかまど赤を濃くして夕日浴ぶ/丸山草子
★藁くずのそこだけ明るき苅田雨/かつらたろう
★孫を見て出でし産院星月夜/宮島千生
★風高しふいに来るは鬼やんま/笠間淳子

★つやつやと籠に盛られて秋の茄子/吉川豊子

入賞発表/9月1日(土)~9月8日(土)

2007-09-12 08:54:23 | 入賞発表
■入賞発表
□高橋正子選

【最優秀】
★御岳を離れて秋の雲となる/古田けいじ
木曽の御岳を少し離れて雲がある。離れることで、この雲は、「秋の雲」となって、きれいに浮かんでいる。秋の到来が、心澄んで伝えられている。(高橋正子)

【特選/5句】
★竹伐って竹の青さを積み上げる/甲斐ひさこ
「竹伐る」は、秋の季語。たくさんの竹を伐って、その竹をるいるいと積み上げる。あおあおとした竹幹が積み上げられ、再び竹の青さ、すずやかさを知ることになる。(高橋正子)

★秋刀魚焼く二泊三日の旅終えて/大給圭泉
二泊三日の旅はそれなりに楽しかったであろうが、旅から戻り、ほっとして秋刀魚を焼く日常の暮らしも、また落ち着いいいものである。(高橋正子)

★新涼の水の硬さに菜を洗う/松原恵美子
新涼に季節となり、厨で使う水もひんやりと心地よくなった。その水を「硬い」と捉えた感覚がいい。菜もいきいきとしている。(高橋正子)

★高原のとんぼが占める青き空/上島笑子
高原の空は、無数ので占められている。高原の青空は、まさにとんぼのもの。清涼な高原の空気までもが感じられるような句。(高橋正子)

★コスモスの丈の高さに風生まる/尾 弦
コスモスが揺れる。揺れるコスモスの丈にちょうど風が生まれているのだと知る。コスモスの丈を吹くは、澄んで、やわらかであることを実感する。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★梨をむく今朝快晴の台所/多田有花
からっと明るい台所の朝、梨の豊かな果汁まで見えるように思いました。「今朝快晴」という言葉に、朝一番のみなぎるような力を感じました。(あみもとひろこ)

★秋燕に川面の空の濃く澄める/おおにしひろし
晴れた空がひるがえる燕と川面に映ってる秋の爽やかさがよくくみとれます。(大給圭泉)

★雨雲の湧きては北へ野分かな/小川美和
雨雲が次々に湧いては流れて行く不穏な空を見て、野分が来るという実感を強められている様子が伝わってきます。(臼井愛代)

★鳶の輪の大きくなりて秋日濃し/篠木 睦
秋の日、空の奥行きが増し、青が濃く見え、入道雲から秋雲へ、確かに鳶の輪も大きく見えます。「大きく」に秋の空の雄大さを凝縮して見せてくれた句だと思います。気持ちもおおらかになる素敵な句です。(篠木 睦)

★裏口を出てしっかと知る秋の風/藤田裕子
作者が、さりげない一瞬に、はっきりと秋の風を実感された様子が伝わってきました。季節がまた進んだことへの感慨があります。(臼井愛代)

★くっきりと朝のむらさき庭桔梗/藤田洋子
朝の庭に、紫いろの桔梗が雨に洗われたようにくっきりと咲いています。紫色の上品で清楚な桔梗が、朝の庭を静かな美しい空間にしてくれます。桔梗の花は、日本古来の美しさを秘め、とても和まされます。(藤田裕子)

★風変わり赤を深める鶏頭花/池田多津子
その深い赤が印象的な鶏頭の花ですが、よく見れば、何とも風変わりな形をしています。「風変わり」とまず述べられたところに、作者の実感が伝わってきます。(臼井愛代)

★それぞれに楚楚と咲きたる花野かな/井上治代
花野の花は、華やかというより、楚々として静かです。そんな野の花々の様子に心惹かれておられる作者を思いました。(臼井愛代)

★掃き集め清しき秋の松落葉/碇 英一
ようやく秋らしい気候になり、一日が過ごしやすくなった。庭の手入れも少し楽になり、箒も軽々と動くようになった。清しさは、秋を感じた作者の心の中にあって、松落葉はそれを表現する手段であるのだろう。(吉田 晃)

★唐辛子実りの赤のつややかに/臼井愛代(正子添削)
家庭菜園でしょうか。中句の「実りの赤の」でまだ青いころの実がイメージされます。臼井様が時間をかけて唐辛子を愛でていたことが思われました。(上島笑子)

★幾たびも窓へ野分の枝迫る/かわなますみ
野分の風が強まって、荒れ模様の戸外。家の中は守られて安心ですが、外の不穏な様子に思いを馳せられる作者の姿が伝わってきます。(臼井愛代)

★山霧に触れんばかりに湖西線/あみもとひろこ
湖西線は琵琶湖の西岸、比良山系の山裾を抉るように北上し敦賀へ到る線である。山肌、谷間(あい)に佇む霧と、湖西線との固有名詞がぴったりマッチし旅情溢れる詩となった。「触れんばかりに」の語句に、眼の前に迫る山肌と霧の情景が良く表現されている。(かつらたろう)

★黒々と強し版画のカブトムシ/安藤かじか
版画独特の大胆な構図、線の色や雰囲気は、カブトムシの力強さをとてもよく表現していたのではないでしょうか。(臼井愛代)

★揺れ止めば風も休みぬ秋ざくら/竹内よよぎ
風が吹けば揺れ、風が止めば動かず、コスモスが、風と親しく野にある様子を思います。(臼井愛代)

★吾亦紅戦場ヶ原に日の光/笠間淳子
日の光に包まれた戦場ヶ原に、数多の吾亦紅が静かに咲く、いかにも秋らしい風景を目に浮かべました。(臼井愛代)

★青空を透かし見ながらぶどう狩り/小河原宏子
ぶどう棚の間からのぞく青空をあおぎながら、よく実っている房を選んでのぶどう狩り、楽しそうな景がむりなくやさしく伝わってくる好きな句です。(小川美和)

【入選Ⅱ/20句】
★ひと雨に庭潤うて秋の蝶/吉川豊子
秋の蝶はどこか儚げです。雨に冷たく濡れた庭にあってはなおさら物悲しい感じがします。(安藤かじか)

★鳳仙花幼きころの懐かしき/堀佐夜子
爪紅ともよばれる鳳仙花と幼い頃の思い出を取り合わせたところが上手いと思います。(島津康弘)

★夕立あと明るい街を歩きたり/岩本康子
雨上がりのすっきりとした秋の街を気持ちよく歩く作者がいます。(丸山草子)

★天高く届け園児の応援歌/高橋秀之
園児達が一生懸命運動会で応援歌を歌っている。親たちも一生懸命だ。秋の空高く清々しい気持ちのする句です。(小河原宏子)

★ひたすらに踊り明かすや風の盆/高橋正道
上五がぴったり。「風の盆」らしさが伝わる一句です。(飯島治蝶)

★赤のまましりとりしてる子ら三人/祝 恵子
★どんぐりの青ジョギングの池ひかる/小西宏
★橋脚の野分に黒く痩せて立つ/藤田荘二
★青空に藤の実無数に実りけり/吉田晃
★りんご食むさくりと甘き津軽産/渋谷洋介
★草の香を刈りて草刈り機の動く/松本豊香
★台風の去りて夕日の金色に/飯島治蝶
★遠峰の光の奥へ鳥渡る/中村光声
★山裾の稲田夕日につつまれて/松本和代
★ジンジャーの香りをたのむ熟寝かな/島津康弘
★八ヶ岳よりの三分涌水稲の花/湯澤まさえ
★山葡萄瑠璃色ひかる朝の路/丸山草子
★大原野御田刈神事の幟立つ/かつらたろう
★園児らの青きバケツに稲熟るる/宮島千生