■入賞発表
□高橋正子選
【最優秀】
★秋嶺や影あたらしき甲斐盆地/かわなますみ
すっかり秋の嶺々となった甲斐盆地を取り囲む山々。「影あたらしき」に作者の新鮮な感動があって、目を瞠り、全身で見、感じようとしている様子が窺える。「甲斐盆地」が効いて、句に澄明な空気が満ちている。(高橋正子)
【特選/5句】
★とびとびのいっせいに今日彼岸花/池田加代子
とびとびではあるが、あちらにもこちらにも、今日いっせいに彼岸花が咲き出した。彼岸花は初め葉もないので、突如として咲く印象がある。彼岸がくれば咲く彼岸花は、自然の大意。(高橋正子)
★さわやかに太平洋の水平線/池田多津子
さわやかに、一本引かれた水平線。単純化された表現に太平洋の水平線らしい太さが読める。(高橋正子)
★葉月来て浜辺の貝の透き通る/藤田荘二
「葉月」は、旧暦の八月。立秋から一月ほどになると、浜辺には、秋のさびしさが少しばかり感じられ始める。海の水も澄み、浜辺の砂も、貝も透き通る。うつくしい言葉が連なる詩情豊かな句。(高橋正子)
★今朝の雨まだ滴りて彼岸花/安藤かじか
今朝の雨がさっとあがり、雨に洗われた野道や田圃は、すがすがしい。彼岸花はまだ雨露を滴らせている。彼岸花の今がみずみずしく捉えられリアルな花となった。(高橋正子)
★稲刈りの握る鎌の刃陽を弾く/松本和代
稲を刈る人の実感がこもった俳句。「鎌の刃陽を弾く」が稲刈りのすべてを物語っている。よく晴れたまさに、稲刈り日和に、鎌をしっかり握って力を入れてサクッと刈りとるうれしさが、気取らずに句になっている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/15句】
★一切の空と向きあい花野路/おおにしひろし
天と地と合するところ、ひろびろと続く花野を行く。宇宙を見据えつつ。心の中に気の膨らむ心地のする、スケールの大きな句です。(小西 宏)
★もず鳴いて林のかたちくっきりと/あみもとひろこ
鵙のひと際甲高い声が向うの林の中、きりりとした締まった声に林の形までがくっきりと見えた。人の心の動きの変化をこんなに表現できるなんて俳句って素敵だと思いました。好きな一句です。(志賀たいじ)
★武蔵野の息衝く林椎拾う/中村光声
もう木の実が落ち出しました。武蔵野という地名がいいですね。(祝 恵子)
★穂芒の束ね解きけり月の夜に/かつらたろう
待っていた満月の夜、束を解いて芒を活ける。ささやかな楽しみですが、心豊かなひとときが好きです。(池田多津子)
★故郷に来て傘越しに吾亦紅/宮島千生
あいにくのお天気で傘越しだったけれども、故郷の野に吾亦紅を見た作者の懐かしさやうれしさが伝わってきました。(臼井愛代)
★房総に雲湧きあがり花カンナ/小西 宏
夏の終わりの房総の地で見られた夏雲の名残と花カンナの、強く鮮やかな印象が伝わってきます。(臼井愛代)
★うすゆき草ひときわ厳しき嶺に有り/上島笑子
人の近寄らないような厳しい嶺に咲くエーデルワイスの可憐な花に強く惹かれた作者の思いがあります。(上島笑子)
★水涼し今朝庭取れの菜を洗う/竹内よよぎ
庭の朝採りの菜を洗う時此れまでと違う水の冷やたさを感じられて詠まれた句と思います。(堀佐夜子)
★野の花の眠ることなく月夜かな/小河原宏子
うつくしい月夜には、野の花は眠ることがないのかもしれません。童話の世界のような清らかさを感じます。(臼井愛代)
★葡萄房きみどり零るる白き皿/藤田裕子
白いお皿に豊かに盛られたきみどり色の葡萄がさわやかに目に浮かびます。(臼井愛代)
★ポストまで無花果匂う道を行く/堀佐夜子
ポストまでの道を無花果の甘い香りに包まれて、幸せな気分にひたられたことがよく伝わってきました。(井上治代)
★変形の七色ガラスにりんご盛る/祝 恵子
七色に輝く変形のガラス器だけでも強い印象を放ちますが、そこに林檎が盛られて、豊かな色合い、香りに満ちた秋の情景となっています。(臼井愛代)
★風吹けば刈田の匂い陽の匂い/井上治代
稲を刈り終えた田圃からの匂いが、秋の陽差しの匂いとともに風に運ばれて来る。豊穣の秋の匂いだ。満ち足りた気持ちとあたたかさのある一句です。(飯島治蝶)
★とんぼうの翅をびびびと竜の淵/島津康弘
秋の水辺で見たとんぼのいきいきとした姿が、「びびび」という翅の音に表現されていると思いました。(臼井愛代)
★銀色のバケツにすすき花市場/飯島治蝶
とりどりの花々が運び込まれる花市場にも秋の野趣が訪れています。銀色のバケツにはススキが無造作に金色の光を湛えて、市場の一角に秋野の空気を呼び込んでいるかに爽やかです。(池田加代子)
【入選Ⅱ/18句】
★青鷺を映して静か秋の水/多田有花
青鷺の目立たぬ色を映すほどに澄み、そして静かである、秋の水の清らかさが、爽やかに浮かびます。(かわなますみ)
★そよ風にコスモス畑彩散す/篠木 睦
畑に広がるコスモスの花。そこへ風が来ると、一斉に花がゆれる。その風景を「彩散す」としたところがいいと思います。(古田けいじ)
★今年竹ういうしきや真青なる/大給圭泉
今年生えた新しい竹の美しい青さが目に沁み入るように感じる清々しい句だと思いました。(小河原宏子)
★初紅葉眼下に上がるロープーウェイ/高橋秀之
山頂では、もう紅葉が始まっているのですね。ロープーウェイで下山する、足元から上がっていく初紅葉を、ゴンドラの中で見送る作者が見えます。(吉川豊子)
★鬼やんま雲を捉えて飛び去りぬ/渋谷洋介
国内最大の蜻蛉である鬼やんまがさっと空に舞い上がる様を「雲を捉えて」と大きく把握したところがすばらしい。大柄な俳句になっている。(島津康弘)
★秋の陽をぽんと蹴って逆立ちす/松本豊香
秋の陽の当たる地面を軽く蹴っての逆立ち、身の軽さ、躍動感が伝わってきて、気持ちの良い句と思いました。(藤田荘二)
★すっきりと窓拭きあげて秋の空/丸山草子
窓をきれいに拭いて、そこから見上げた秋の空。高く青く澄みきった秋の空が広がります。(藤田裕子)
★芝刈りの音軽やかに秋の午後/吉川豊子
よく晴れた秋の日の午後、音も軽やかに芝がきれいに刈られていき気持ちまで晴々としてくるようです。(小川美和)
★飛行機の残暑列島北上す/古田けいじ
★虚子館に汀子を見たり獺祭忌/碇 英一
★機の昇る大運動会の声に乗り/吉田晃
★秋草を英字新聞に包む日も/臼井愛代
★一点の雲なき青空文化祭/岩本康子
★新涼の風に真向かう一歩かな/尾 弦
★陽の匂いさせて草の実抜きにけり/小川美和
★母の佇つ庭に出ずれば星月夜/松原恵美子
★山麓の空気おだやか蕎麦の花/湯澤まさえ
★来し方をしみじみ想う秋の蝉/友田 修
□高橋正子選
【最優秀】
★秋嶺や影あたらしき甲斐盆地/かわなますみ
すっかり秋の嶺々となった甲斐盆地を取り囲む山々。「影あたらしき」に作者の新鮮な感動があって、目を瞠り、全身で見、感じようとしている様子が窺える。「甲斐盆地」が効いて、句に澄明な空気が満ちている。(高橋正子)
【特選/5句】
★とびとびのいっせいに今日彼岸花/池田加代子
とびとびではあるが、あちらにもこちらにも、今日いっせいに彼岸花が咲き出した。彼岸花は初め葉もないので、突如として咲く印象がある。彼岸がくれば咲く彼岸花は、自然の大意。(高橋正子)
★さわやかに太平洋の水平線/池田多津子
さわやかに、一本引かれた水平線。単純化された表現に太平洋の水平線らしい太さが読める。(高橋正子)
★葉月来て浜辺の貝の透き通る/藤田荘二
「葉月」は、旧暦の八月。立秋から一月ほどになると、浜辺には、秋のさびしさが少しばかり感じられ始める。海の水も澄み、浜辺の砂も、貝も透き通る。うつくしい言葉が連なる詩情豊かな句。(高橋正子)
★今朝の雨まだ滴りて彼岸花/安藤かじか
今朝の雨がさっとあがり、雨に洗われた野道や田圃は、すがすがしい。彼岸花はまだ雨露を滴らせている。彼岸花の今がみずみずしく捉えられリアルな花となった。(高橋正子)
★稲刈りの握る鎌の刃陽を弾く/松本和代
稲を刈る人の実感がこもった俳句。「鎌の刃陽を弾く」が稲刈りのすべてを物語っている。よく晴れたまさに、稲刈り日和に、鎌をしっかり握って力を入れてサクッと刈りとるうれしさが、気取らずに句になっている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/15句】
★一切の空と向きあい花野路/おおにしひろし
天と地と合するところ、ひろびろと続く花野を行く。宇宙を見据えつつ。心の中に気の膨らむ心地のする、スケールの大きな句です。(小西 宏)
★もず鳴いて林のかたちくっきりと/あみもとひろこ
鵙のひと際甲高い声が向うの林の中、きりりとした締まった声に林の形までがくっきりと見えた。人の心の動きの変化をこんなに表現できるなんて俳句って素敵だと思いました。好きな一句です。(志賀たいじ)
★武蔵野の息衝く林椎拾う/中村光声
もう木の実が落ち出しました。武蔵野という地名がいいですね。(祝 恵子)
★穂芒の束ね解きけり月の夜に/かつらたろう
待っていた満月の夜、束を解いて芒を活ける。ささやかな楽しみですが、心豊かなひとときが好きです。(池田多津子)
★故郷に来て傘越しに吾亦紅/宮島千生
あいにくのお天気で傘越しだったけれども、故郷の野に吾亦紅を見た作者の懐かしさやうれしさが伝わってきました。(臼井愛代)
★房総に雲湧きあがり花カンナ/小西 宏
夏の終わりの房総の地で見られた夏雲の名残と花カンナの、強く鮮やかな印象が伝わってきます。(臼井愛代)
★うすゆき草ひときわ厳しき嶺に有り/上島笑子
人の近寄らないような厳しい嶺に咲くエーデルワイスの可憐な花に強く惹かれた作者の思いがあります。(上島笑子)
★水涼し今朝庭取れの菜を洗う/竹内よよぎ
庭の朝採りの菜を洗う時此れまでと違う水の冷やたさを感じられて詠まれた句と思います。(堀佐夜子)
★野の花の眠ることなく月夜かな/小河原宏子
うつくしい月夜には、野の花は眠ることがないのかもしれません。童話の世界のような清らかさを感じます。(臼井愛代)
★葡萄房きみどり零るる白き皿/藤田裕子
白いお皿に豊かに盛られたきみどり色の葡萄がさわやかに目に浮かびます。(臼井愛代)
★ポストまで無花果匂う道を行く/堀佐夜子
ポストまでの道を無花果の甘い香りに包まれて、幸せな気分にひたられたことがよく伝わってきました。(井上治代)
★変形の七色ガラスにりんご盛る/祝 恵子
七色に輝く変形のガラス器だけでも強い印象を放ちますが、そこに林檎が盛られて、豊かな色合い、香りに満ちた秋の情景となっています。(臼井愛代)
★風吹けば刈田の匂い陽の匂い/井上治代
稲を刈り終えた田圃からの匂いが、秋の陽差しの匂いとともに風に運ばれて来る。豊穣の秋の匂いだ。満ち足りた気持ちとあたたかさのある一句です。(飯島治蝶)
★とんぼうの翅をびびびと竜の淵/島津康弘
秋の水辺で見たとんぼのいきいきとした姿が、「びびび」という翅の音に表現されていると思いました。(臼井愛代)
★銀色のバケツにすすき花市場/飯島治蝶
とりどりの花々が運び込まれる花市場にも秋の野趣が訪れています。銀色のバケツにはススキが無造作に金色の光を湛えて、市場の一角に秋野の空気を呼び込んでいるかに爽やかです。(池田加代子)
【入選Ⅱ/18句】
★青鷺を映して静か秋の水/多田有花
青鷺の目立たぬ色を映すほどに澄み、そして静かである、秋の水の清らかさが、爽やかに浮かびます。(かわなますみ)
★そよ風にコスモス畑彩散す/篠木 睦
畑に広がるコスモスの花。そこへ風が来ると、一斉に花がゆれる。その風景を「彩散す」としたところがいいと思います。(古田けいじ)
★今年竹ういうしきや真青なる/大給圭泉
今年生えた新しい竹の美しい青さが目に沁み入るように感じる清々しい句だと思いました。(小河原宏子)
★初紅葉眼下に上がるロープーウェイ/高橋秀之
山頂では、もう紅葉が始まっているのですね。ロープーウェイで下山する、足元から上がっていく初紅葉を、ゴンドラの中で見送る作者が見えます。(吉川豊子)
★鬼やんま雲を捉えて飛び去りぬ/渋谷洋介
国内最大の蜻蛉である鬼やんまがさっと空に舞い上がる様を「雲を捉えて」と大きく把握したところがすばらしい。大柄な俳句になっている。(島津康弘)
★秋の陽をぽんと蹴って逆立ちす/松本豊香
秋の陽の当たる地面を軽く蹴っての逆立ち、身の軽さ、躍動感が伝わってきて、気持ちの良い句と思いました。(藤田荘二)
★すっきりと窓拭きあげて秋の空/丸山草子
窓をきれいに拭いて、そこから見上げた秋の空。高く青く澄みきった秋の空が広がります。(藤田裕子)
★芝刈りの音軽やかに秋の午後/吉川豊子
よく晴れた秋の日の午後、音も軽やかに芝がきれいに刈られていき気持ちまで晴々としてくるようです。(小川美和)
★飛行機の残暑列島北上す/古田けいじ
★虚子館に汀子を見たり獺祭忌/碇 英一
★機の昇る大運動会の声に乗り/吉田晃
★秋草を英字新聞に包む日も/臼井愛代
★一点の雲なき青空文化祭/岩本康子
★新涼の風に真向かう一歩かな/尾 弦
★陽の匂いさせて草の実抜きにけり/小川美和
★母の佇つ庭に出ずれば星月夜/松原恵美子
★山麓の空気おだやか蕎麦の花/湯澤まさえ
★来し方をしみじみ想う秋の蝉/友田 修