爺のバレンタインデー

　晴れ。早朝まちを散策。人気なし。コンビニ店が煌々と光を放つ以外は街頭の灯りとマンションの灯りが不規則に並ぶ。南空に三日月が弱い光を注ぐ。北斗の星も薄ぼんやりしている。ふと足元を見ると薄氷が白く反射してみえる。耳を切るような外気。白い息。身体はエンジンがかかっていてホクホクしている。わがマンションは鬱蒼としていた楠木が剪定され、春の気配を漂わせている(写真上)。

　部屋に戻ってパン一切れの朝食。低脂肪乳をあたため飲む。友人S君が漢詩と漢字の美響を解説した本を出版し送ってきたので読む。白居易の「白氏文集」をはじめ日本文化に多大な影響をもたらした漢詩の世界をガイドする好著。著者は、詩吟の先生で日中韓の北東アジアに平和の共同体を願って文化交流に参加している。菅原道真、紫式部、西行法師、夏目漱石と漢詩のことは、わが輩も関心を寄せている。

　昨年は岡山の山中で鹿のローストを肴にS君の詩吟を聴きつつ「一杯一杯復一杯」を注ぎあった。願わくばもう少し庶民の日常に溶け込む平易な漢詩を望む。昼前、豊津の理容スーパーで散髪。お昼はざる蕎麦。春の季語をぼちぼち勉強する。梅林の梅はこの寒さの中、粛々と咲き春をよぶ(写真下)。妻からこそっとバレンタインチョコをもらった。サンキュー。
　　　　　　　　　　　　　　　薄氷へ三日月きらり白い朝　昇龍子