弟の家に行くと、一台のピアノがあった。
姪がピアノを習い始めたようで、
「弾いてあげるから、聴いてー」
と、きらきら星を弾いてみせてくれた。
拙いけれど、楽しそうに。
弟夫婦は神妙な面持ちで、何も言わなかった。
多分、私を気遣ってのことだろう。
「上手に弾けたね」と私が言うと、
「今度ともちゃんに聴いてもらうのー」と。
私と弟夫婦は自然と目が合ったが、
「そうだね。きっと喜ぶよ」と返した。
姪はまだ事情が良く分かっていないようで、無邪気に笑っていた。
以前、彼女が姪に曲を弾いて、一緒に遊んであげたことをずっと覚えているらしい。
本当は子供が苦手だといいつつも、優しく接してくれた妻を見て、私は暖かい気持ちになったことを覚えている。
いつかはそんな出来事も忘れてしまうのかもしれない。
でも、姪が彼女を覚えていてくれたこと、彼女の事を好きでいてくれた事が嬉しかった。
いつかは何が起きたのか、理解する日がやってくるだろう。
それでも、出来たらその純粋な気持ちのまま、彼女のファンでいて欲しいと心から願った。
いつか、叶うといいね。
私は誰に向けて、そう思ったのだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます