春野かそい書「ミゼレーレ14・仮面なしでは生きられない」(欺・deceive)
2018年12月制作 約23.5×23.5㎝ 唐紙・墨
「欺」と書かれている。
副題の「仮面なしでは生きられない」は、ルオーの「ミセレーレ」にある「自分の顔をつくらぬ者があろうか?」(または「顔に皴を描かぬ者はいようか?」)の引用である。ルオーの言う「顔をつくる」とは、役者がメーキャップをすること。これは、素顔を隠して、うわべを飾らなければ生きてゆけない人間の弱さを象徴している。ルオーは人間の欺瞞を告発するだけではなく、人間の弱さに共感もしている。彼にとってサーカスの道化師は弱き者すべての象徴であった。彼は多くの道化師像を描いているが、それらの表現は、優しさに溢れている。