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SAOの集大成がここにある!――劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナルスケール- 』感想

2017-02-19 17:45:00 | レビュー


劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナルスケール- 』感想


昨日、2/18(土)からSAOの映画が公開になるということで早速公開初日に観に行ってきた。いや、もう最高だったね。控えめに言っても、期待を大幅に超えた完成度だったと断言できる。観終わった後は「SAOの魅力が余すところなく詰まった最高傑作だった」と大興奮。


TVアニメシリーズの下積みをここまで上手く昇華させ、劇場版アニメとしてさらにおもしろさを加速させることに成功している作品もそうそうお目にかかれないだろうと思わされるくらいのクオリティだったと感じています。いやー、唸る。



以下、劇中のネタバレを含みますのでまだ観ていない方はネタバレにはお気を付けください。



 
 

仮想と現実――VRとAR



良かった点を挙げればキリがないが、まず今回の劇場版の鍵となるのは何といっても、劇場版ならではの要素として序盤から登場する「AR(拡張現実)」。これまで、キリト達が活躍してきたMMORPGは「VR(仮想現実)」であり、今作はVRとARの対比をシナリオに上手く落とし込みながら、物語が展開されていく。


SAOを初めとするVR――仮想現実が舞台であった従来のTVシリーズでは、ゲームの中での死が現実世界でも死につながるという意表を付いた設定とフルダイブゲーム世界の作り込みの緻密さ、そして命がけのデスゲームに挑むキャラクター達が「生きるとはどういうことなのか」という問いに向き合っていく物語であった。



AR(拡張現実)



一方で今回本作で扱われる「AR」は現実世界を舞台にした物語。ARによって現実の街が仮想世界化していき、見知った街でイベントが発生し、ゲームとして順位を競い、各企業が協賛しているため、順位が上がれば現実世界でもきちんとペイバックがある。


フルダイブ機能を排除した代わりに、AR(拡張現実)機能を最大限に広げた最先端マシン・≪オーグマー≫は、近年で言えば、『ポケモンGO』が近いですよね。ゆえに、誰もが一様に《オーグマー》を装着しては、街中で『オーディナル・スケール』に夢中になる劇中の光景は、僕らにとっても馴染みがあり、見慣れた街が、まさに昨日歩いた道が、ゲームの舞台になるということへのワクワク感はとても理解できる。


それどころか、自分もやってみたいな!と思わせる魅力に溢れてさえいる。覚醒状態で使用することが出来る安全性と利便性、そして何よりも「VR」よりも身近な存在として、「AR」は瞬く間にユーザーへと広がっていくわけです。

 
「VR」と「AR」の対比構造を描くことで、「AR」の可能性を浮き彫りにさせながらも、キリトが序盤においてはイマイチ「AR」に興味を示さないというのがまたおもしろいところ。


というのも、『SAO』もまた「VR」であり、ゲームが現実になった世界で生きてきたキリトにとって、現実がゲームになった世界観である「AR」にはいまひとつ魅力を感じていない。


でも、物語終盤「AR」によってアスナの大切な記憶が奪われたこと、そして『SAO』サバイバー達が今回の事件の標的になっていることを知って、キリトは本気で「AR」と対峙することになるわけですけど、これは「AR」というゲームが一転して『現実』になるからです。


だからこそ、キリトが本気で挑む。いつだって彼は、大切な人たちとの『現実』を守るために動いているんです。ここに『SAO』イズムを感じずにはいられない...!だからこそ、今回の劇場版は素晴らしい。





思い出を抱いて生きていくこと――過去と現在と未来と



今回の劇場版のテーマを一言で表現するなら「思い出」でしょう。ナーヴギアの一部機能を取り出してAR型端末、《オーグマー》を開発した今回の事件の首謀者・重村教授は『SAO』事件で娘の悠那を失った――。


重村教授は《オーグマー》専用のゲームである「オーディナル・スケール」内に『SAO』のボスモンスターを登場させることで、SAOサバイバー達に『SAO』時代の記憶を強く想起させます。

そして、その最中にHPがゼロになった『SAO』サバイバーの記憶域にアクセスすることで、『SAO』時代の記憶を抽出し、その記憶を元に悠那の情報を集めて、「AR」の世界に悠那を生き返らせようと計画する。


その際、『SAO』時代に悠那と最も関わりを持っていた人物、エイジに協力を求めます。計画が成功したら、悠那とずっと一緒にいられるようにしてあげるという約束をして――。


エイジはインチキによって、「オーディナル・スケール」ゲームランキング2位の実力者となります。キリト達の前に立ちはだかる姿はボスのような風格がありましたが、彼もまた最終的には重村教授に利用されていただけという2段構え。


迫力満載の戦闘シーンと目まぐるしく変わっていく状況、そして少しずつ明かされていく真実。119分というボリュームの中に全く無駄なところがなく展開されていく骨太なストーリーはまさに圧巻でした。




思い出


その中でも一番印象的な部分は「思い出」を巡るキリトとアスナの絆でしょう。というのも今回は新キャラはもちろんのこと、今までに登場したキャラクター達もオールスターでかなりの数のキャラクターが登場していますが、メインのキービジュアルはやっぱりキリトとアスナの2人だけなんですよ。(←これが大切。)


流星群と指輪――キリトはアスナとアインクラッドで交わした「約束」を守ろうと奔走するのですが、そこに《オーディナル・スケール》を巡る陰謀が複雑に絡み合い、アスナは『SAO』時代の「思い出」を全てなくしてしまう。


キリトとの出会いも一緒に過ごし積み重ねてきた日々も、大切な2人の約束さえも、その全てを思い出せなくなってしまったアスナがそれでもキリトのことを大好きだと、たとえ過去の「思い出」が今は思い出せなくても、これからたくさん「思い出」を作っていけるのだという想いを打ち明けるところは思わず泣ける。あれは、キリトでなくても抱きついてしまうというもの。


また、「『SAO』サバイバー達から記憶を奪うこと」についてというのも今回のテーマのひとつ。デスゲームを経験してきた彼らにとって辛い思い出はいくらでもあるだろう。死ぬことの恐怖。大切な人を死なせてしまったトラウマ。


でも、楽しいことも嬉しいことも辛いことも、その全てがあの瞬間を生きてきた自分たちの「思い出」であり、これからもその過去を抱いて現在、そして未来へと歩いていくのだというテーマに昇華させていたのは綺麗なシナリオだった。


クライマックスまでの流れもこれまた完璧。アスナの記憶を取り戻すために奮闘するキリト、恐怖に打ち勝ち、キリトを助けるべく闘うことを選ぶアスナ。最後は王道を貫く気持ちの良い展開で視聴後もしばらく余韻が残って興奮が収まらなかったほど。まさしく、『SAO』の集大成を観たと思います。もう何度か観に行きたい。おすすめです。
 
 


3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2017-02-20 12:32:37
話も作画も音楽もかなりしっかり作られてて驚いた。最後のサプライズも良かったね
Unknown (Unknown)
2017-02-20 20:06:39
とても参考になる。
テーマ性が非常に刺さる映画だった。
Unknown (Unknown)
2017-02-21 19:19:30
ストーリーはもちろんだけど劇中の音楽もかなり凄いよね。あの迫力は引き込まれるよ。

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