のまゆ

開店休業

夏だからバースデーきっぷで四国乗鉄~その4・世界初のDMV初体験~

2022年08月21日 21時00分00秒 | 2022年07月夏の四国乗鉄旅
徳島駅から始発に乗って牟岐線の終着駅である阿波海南駅に到着。ここからは世界初の乗り物であるDMVに乗ります。JR北海道がDMVの試験をやっていた頃には乗車していないので、DMVという未知の乗り物に初乗車です。


列車に乗って阿波海南駅に降り立つと、そこにはすでに緑色のDMVが止まっていました。もっともこのDMVは軌道線を走行し終え、道路を阿波海南文化村に向かう便なのでスルーします。

DMVというのは線路と道路を両方とも走行することが出来る交通機関です。基本的にはマイクロバスで、線路を走るときに車輪が出てきて線路を走行する感じです。言葉で語るよりも実際に見ていただいた方がわかりやすいと思うので、写真や動画で紹介していきます。

まずは車両の紹介。

DMV運行開始にあたり阿佐海岸鉄道DMV93形気動車3両が投入されました。トヨタ自動車製のマイクロバス4代目コースターがベースとなっており、車体の補強・難燃化・軌陸装置の設置などが行われています。定員は23名(乗務員1+座席18+立席4)で、コミュニティバスなどでよく見かける日野ポンチョ(定員30名程度)に比べても小さめです。3両は外装色が異なり、1号車:青「未来への波乗り」、2号車:緑「すだちの風」、3号車:赤「阿佐海岸維新」となっています。乗車した日は1号車の青のみ見かけることが出来ませんでした。

DMVの乗車は当日の飛び乗りも可能(一応公共交通機関ですから)ですが、遠方から訪れる際は確実に乗車できるように事前予約をオススメします。予約は発車オーライネットで2ヶ月前から可能です。オススメ席は1B2A。1Cは最前列ですが前面展望は無いです。


DMVは公共交通機関というよりもアトラクションです。故に撮影ポイントの看板など観光客向けの仕掛けも用意されています。


乗車するDMVがやってきました。
阿波海南0820→道の駅宍喰温泉0851 133便(700円)


乗車します。事前予約で2A席を確保しました。以前は優先席区画でしたが、現在優先席は4A5Aに変更されています。


阿波海南モードインターチェンジでバス→鉄道へのモードチェンジの様子


阿波海南駅→海部駅の走行動画


車窓は鉄道時代とほぼ同じ。若干目線は低くなっていますが、一部区間では太平洋を眺めることが出来ます。


甲浦モードインターチェンジで鉄道→バスへのモードチェンジの様子


バスモードで道路走行

まずは、阿波海南駅から鉄路部分全区間と道路区間を乗車しました。事前に予習していましたがモードインターチェンジとか完全にアトラクション。鉄路部分は鉄道車両に比べ乗り心地に不安がある感じなのはやむなしか。トンネル区間で不快な揺れがあったのは気になるところ。道路走行時は普通にバスに乗っている感じですが、特殊な機構を組み込んでいて車体重量やサスペンションの設定からか若干硬めで振動をよく拾う印象はありました。


終点の道の駅宍喰温泉に到着。阿波海南駅では7名の乗車がありましたが、5名は宍喰駅で、もう一名も海の駅東洋町で下車して、道路区間の最後は貸切状態での運行でした。


こちらから歩いて宍喰駅に向かいます。所要時間は10分くらいでした。


宍喰駅窓口で回数券(1,000円で1,200円分)とこの後乗車するDMV乗車券2枚を購入(支払いは回数券を充当)しました。DMV乗車券は始発駅出発10分前までの発券となり、この直後に乗車する分だけ予約できませんでしたが、予約なしでも乗車できることを確認していただけ一安心。宍喰駅は阿佐海岸鉄道唯一の窓口があり回数券や乗車券、DMVグッズ、鉄印の発行をしています。


宍喰駅(*バリアフリー設備無し)


宍喰駅ホーム
鉄道線時代のホームは通路の一部として利用されています。DMV用ホームは鉄道ホームから少々下がった位置にあり、DMV車両は左側にしか乗降ドアがありませんので方面別にホームがあります。

宍喰駅0916→海部駅0924 036便(300円)
先ほど乗車した緑車両が折り返してきました。予約はしていませんが乗客0名で到着し2名乗車。予約席以外は自由席なので展望がきく1B席で。





海部駅(*バリアフリー設備無し)


以前はJRと阿佐海岸鉄道の分岐駅でしたが、阿波海南駅から海部駅の区間も阿佐海岸鉄道所属となり、単純な中間駅になりました。2面2線のホームの東側のみ線路が繋がっていて、阿波海南駅方にDMV専用ホームが増設されました。


海部駅の阿波海南方にあるトンネルから顔を出すDMV


前後で線路が繋がっていない海部駅旧2番のりば側にはASA-101形気動車「しおかぜ」車両が留置されています。


海部駅0940→甲浦駅0955 135便(400円)
鉄道区間の終着駅となる甲浦駅に来ました。旧駅舎は待合室としてリニューアルされました。




甲浦信号所(旧甲浦駅ホーム)でのモードチェンジの様子
旧甲浦駅ホーム付近に鉄道モードとバスモードのモードインターチェンジが設置されています。モード変更前後で車止めを超えます。


甲浦駅1023→阿波海南駅1043 038便(500円)
甲浦駅から阿波海南駅に戻ってDMV乗車体験終了です。本来は海部駅から乗車した赤い車両が折り返す運用ですが、DPF(排ガス浄化装置)の不具合で車両入れ替えとなりました。緑色も10~20分程度のメンテナンス後に運用復帰しています。





阿波海南駅モードインターチェンジの様子


鉄道→バスへのモードチェンジ


バス→鉄道へのモードチェンジ


DMVの感想(以下は個人の感想です)
アトラクションとしてはよくできていると思います。モードチェンジの動きとか男の子大好きでしょ(たぶん)。もっとも、公共交通機関としては廃止→バス転換で十分な状況という印象です。

アトラクションという意味では世界初の道路も鉄路も走行できる乗り物というのは面白いです。一番のキモである鉄道⇔バスのモードチェンジを見学できるスペースも設置するなど観光客対策もバッチリ。徳島の観光資源として旅行に組み込むなどいろいろと使い道がありそう。インバウンドで来る人たちこういう変態的な乗り物大好きでしょ(たぶん)。アトラクションとして各鉄道博物館や近隣ならUSJあたりに設置するのが良かったかもしれません。

公共交通機関としては・・・地域特性や乗降客数を考えると普通のバス転換で十分だったと思います。鉄道路線と渋滞がほぼ無い国道が併走していて、BRT化すら必要の無いと思われます。道路が山間部を迂回していて、国道だと数十分かかる道程を鉄道ならトンネルで直線的に結び所要時間5分ですとかならDMVの優位性もあるのですが。

そもそも、今回の区間ではDMVのメリットが生かせていないような気がします。鉄道線に直通といってもJR四国牟岐線とは切り離された阿佐海岸鉄道区間をとりあえず走っているだけです。これが牟岐や徳島まで直通し、室戸岬と徳島が乗換無し直結とかだとメリットもありそうですが、阿波海南駅が事実上の始終着な時点でアトラクションとしてしか考えられません。また、現状では基本的に予約制となっていて地域の足としては使い勝手が悪いです。また、高齢化率が高いであろう地方で、バスもどきに乗車する為に長い階段を利用して高架ホームへ上がる(宍喰駅・海部駅)のは滑稽でなりません。バリアフリーという点では鉄道より進んでいるバスのメリットを帳消しにしています。

現状過疎区間なので乗車定員が20名程度でも問題は無いでしょうが、なんらかの理由で乗客が爆増したときに対応できないのも微妙です。鉄道の高速大容量輸送というメリットをDMVは帳消しにしてしまっている=わざわざ複雑な機構を装備し鉄路を走行する意味があるのかも疑問です。地方の閑散路線で鉄道維持が必要な理由に、朝夕の通学生による大量輸送の必要性があげられます(バスでは一度に何百人も運ぶことは出来ません)が、DMVはそれに対応することが出来ません。

併走する国道55号線には路線バスや高速バス(長距離バス)が走行しており、地域の足という点ではこれらで十分まかなえています。鉄道線時代も決して乗客が多かったわけではないので、廃止→バス路線に補助金を投入し利便性向上が地域住民にとっては良かったのではないかと推測します。

個人的に気になるのが今回導入したDMV車両の更新に関して。メンテナンスをきっちりとすれば20年程度は使えるでしょうが、20年後に車両更新をしようとしたときに出来るのか気がかりです。DMVが他線区に広がりスケールメリットが出るとは到底思えませんし、特殊車両を3両というのはコスト的に無駄が多いです。また、道路区間での交通事故等で車両が使用できなくなった場合に代替車両をどうするのかなど疑問点もあります。

JR北海道が研究開発したところから始まった日本のDMVですが、いざ実用化されてみると予想以上に公共交通機関としては使い物にならない印象しか受けませんでした。あくまでも個人の感想ですがお金の無駄遣いな印象は拭えません。

否定的なことばかり書きましたが、乗車前からDMVの公共交通機関としての在り方には疑問があり、実際に乗車してみてその疑問が確信へと変わるとこんな感想になってしまうのは仕方が無いと思います。


注:文中で世界初と書きましたが1930年に英国で同種の鉄道が実用化され数ヶ月間営業運行もされています。今回の文中ではパンフレットや横断幕で世界初と書いてあったので世界初とさせていただきました。細かく調べる人なんてほとんどいないでしょうから言った者勝ちです・・・正確な表記をするなら日本初、世界で現状唯一のDMVみたいな感じでしょうか。徳島県次世代交通課によると「世界初の本格的な営業運転」を略して世界初だそうです。




つづきます


阿佐海岸鉄道区間はバス転換、高架施設は津波発生時の一時避難場所として再整備みたいな感じが無難だったと今でも思ってます。


コメントを投稿