Saxophonist 宮地スグル公式ブログ

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顎関節症とダブルリップ

2024年01月28日 10時35分00秒 | 奏法
昨夜はライブでした。自分としては一つの大きなチャレンジで、結果的には成功半分、失敗半分という感じ。

話はライブからは少し離れますが、ここ最近、顎が痛くて肉等を長く咀嚼する事が出来ず、噛んでるとダルくなって来て丸呑みしたりしてました。正月過ぎに大好きな肉料理を作って食べてたら、いつものように顎がダルくなり、面倒なのでまた丸呑みしてみたら、喉に詰まらせて危うく窒息しそうになりました。口に手を突っ込んで何とか肉をつまみ出せたので、事なきを得たのですが、ちょっと怖かったです。老人が餅を喉に詰まらせて死ぬ時ってこんな感じなんだろうな…思いました。

で、流石に看過出来ずネットで症状などを調べた所、「顎関節症」というワードが上がって来ました。原因は様々ですが、その中にストレス等により歯軋りや歯を食いしばる事で発症するというのが有り、ストレスは無いのだけど、歯を食いしばる…というのに思い当たる所は有ります。

サックスです。

そう言えば、大事にしているお気に入りのマウスピース「トナリン」のティースガードの辺りに最近小さなクラック(ヒビ割れ)を発見し、ここ最近は温存しています。その前に元々有ったティスガードには深い歯型を付けてしまい、交換する羽目になったし、どうやらマウスピースに相当な圧力を掛けている様なのです。毎日長時間サックスを吹く中で、歯軋り並みのストレスがアゴに掛かってたみたいです。

これからも長くサックスと付き合って行く上では由々しき問題です。そして、思い付いたのが顎やマウスピースに負担を掛けない「ダブルリップ」というアンブッシュアです。

サックスのマウスピースの咥え方は、基本的には歯をティースガード等に乗せて、下の歯は唇で巻いてリードに当てます。ところがダブルリップは上下とも唇を巻いて、直接マウスピースに歯を当てない様にします。そうする事で、噛みすぎると唇が痛くなり、噛めないので、マウスピースやリードへのストレスは軽減されます。音色は丸く柔らかくなります。

しかし、マウスピースを固定していた歯を唇でコーティングする事で、支えを失う事になります。楽器が運指の度に揺れるので、それまで簡単に出来てたフレージングも異常に難しく感じる事になります。どうしても吹けないフレーズも出て来ます。

まるで全く新しい楽器を始める気分です。新鮮と言えば新鮮ではありますが(笑)構え方、楽器の角度、指の置き方を全て変える事で対処するしかありません。

僕自身はバークリー時代にダブルリップにチャレンジしていたし、日本での最初のレコーディング「ジャズ新鮮組」当時はダブルリップでしたし、移行は初めてやる人よりは比較的スムーズだと思います。この1月、2月は割とライブも少ないので訓練のチャンスでもあります。

先週月曜日から訓練をスタート。月曜はそれ程痛くはなかったのですが、火曜日から上唇が痛くなり始め、金曜日までは痛みと闘いながらの練習となりました。昨日のライブ当日の土曜日にアンブッシュアのコツは掴めましたが、フィンガリングがまだおぼつかない。なるべく楽器が揺れない様にする必要がまだまだあります。それでも、何とか練習では曲が吹ける様にはなりましたが、なにせ難曲揃いで、本番ではどうなるか不安ではありました。

まぁ、結果としては、やはり現場では吹けないメロディーが有ったり、音がひっくり返ったりも有り、音色も「丸く柔らかい」というダブルリップの利点からは程遠いものになりました。口の周りの筋肉をもっと鍛錬しなくては…と思いました。しかし、途中で諦める事なく合計2時間以上のライブをこのアンブッシュアで乗り切れたのは大きな収穫でした。

思えば、初めてダブルリップにチャレンジした若い頃はコルトレーンの音色に憧れての事。そして今は、スタン・ゲッツの甘い音色に憧れています。このご両人は共にダブルリップ。どちらもとても魅力的な音色ですが、それぞれの音質自体は両極端とも言えます。結局、音質はアンブッシュアで簡単に決まるものではなく、自分自身で理想に向けて、あぁでもないこうでもない…と試行錯誤する必要が有ります。苦労は伴いますが、それはそれで楽しいチャレンジでもあります。

今回は顎関節症という体調の悪化を、マウスピースがクラックという形で僕に伝えてくれたのだと思います。同世代のミュージシャン全員が口を揃えて言う事ですが、どの楽器でも若い頃の様に強引な奏法をしていると身体が悲鳴を上げて演奏し続ける事が出来なくなります。なので皆んなフォームや姿勢にはかなり気を遣っています。勿論、僕も相当気を遣って来ました。

聞くところによると、顎関節症はサックス奏者にとても多く、中には休業を余儀なくされた方も居るとか。僕もネットで検索して、クラシック・サックス奏者で酷い顎関節症になり、ダブルリップに変えた方のブログを見つけました。移行してからの演奏も貼り付けてあったので聴かせて頂きましたが、素晴らしい音色でした。

今迄出来てた事が奏法を変える事で困難になり不安やストレスは募りますが、見事に演奏しているゲッツなどの前例を聴くと勇気に繋がりますし、もうちょっと頑張ってみようと思います。昨日より今日、今日より明日…と徐々に確実にインプルーブしているし、新しい発見も日々有ります。僕の感覚としては、奏法が完全に乖離していたフルートとの共通点が少しずつ見えて来たのは大きな収穫で楽しくもあります。

60も近く、一般的には「成長」とは無縁な世代ですが、この50代が人生の中で最も成長したと自負しています。今後の成長を見守って頂けると大変嬉しいです。

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