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少し遅めの朝を迎え、私は定宿の食事処へ降りた。
個人宅を借りた方が何かと楽だが、借りるにしてもそれなりの貢献度をその町や村に示さなければならない。当たり前だ。信用のない人間に、定住して欲しいとは誰も思わないだろう。それがめんどくさくて、私はいつも決まった宿に泊まることにしている。
階下の食事処からは人の声は聞こえなかった。まぶしさではなく強さが感じられるようになった朝の太陽が、窓にある十字枠の影を食事処の床に作り出してた。
下り立った時、丸テーブル4つ向こうの両開きのはね扉越し見えたのは、村を見回る衛兵と、馬にたくさんの荷物を載せた商人らしき姿の男が、穏やかな表情でゆっくり歩く姿だった。
ふと視線を感じ左を見ると、カウンターから出てきて前掛けで手を拭いていた恰幅のいい女将が、苦笑いしながら肩をすくめ、何も言わず厨房に戻っていった。私はありがとう、とだけ声をかけた。
料理ができあがるまでの少しの間、私ははね扉の横にある掲示板を眺めていた。そこにはこの村の行事のお知らせや、生活のマメ知識の紹介や、料理のレシピなどが紙に書かれて貼られている。
その中の一つ、衣装の作り方をまとめた二枚綴りの紙を手に取る。衣装を作る。いままで考えもしなかったことだ。衣装自体は何着か持っているが、自分で作ったことはなかった。衣装屋に行ってその時の気分で気に入ったものを買う。そんな選び方しかしていなかった。
読みこんでいくと、やってみようか、という気になってきた。作る工程はそれほど複雑ではないが、あまりやったことのない素材の加工を行うようだ。むしろそちらに興味がある。
題材になっていたのはバレンシアの旅行服だった。昼の暑さ夜の寒さに対応できる、それなりに機能的な服のようだ。バレンシア旅行服、といっても、バレンシアの人たちが好んで着るというよりは、バレンシアへ向かう旅人用に作られたのが始まりだそうだ。
衣装の型紙に最上級のハードレザーとソフトレザー、ブラックストーンの粉末に亜麻布が必要だという。ハードレザーとソフトレザーは、依頼のなかでその知識を得ている。釉薬を手に入れるのが面倒かもしれない。
料理を運んできた女将に、今日の取引所の様子を聞いてみた。女将は窓際のテーブルに料理を置きながら、緑が上で銀が並、水が多かったから黄色がちょうどいい、と暗号めいたことを口にした。そして私と目が合うと、ニカッと白い歯を見せて笑った。
「翻訳」すると、素材系が値上がり傾向で、武器防具系が横ばい、この夏雨がしっかり降ったのが功を奏したのか食材料理系がだいぶこなれてきたよ、ということだ。
ここの女将は、この宿屋とは別に労働者を雇って彼らに作業をさせ、それなりの収益を得ていた。採掘から栽培から、わりと手広く事業をやっているようで、何年も前から毎日朝早くに起きると取引所の情報を確認しているのだ。しかもそれらのことをあまり周りには言っていないらしい。食えない女将なのだ。
以前、依頼の途中でたまたま明け方の取引所に出向いていた時に、女将とばったり出くわした。その後しばらくは、私の宿泊を渋るぐらいには、警戒していたようだった。いまはその警戒心もなくなったようでほっとしている。
私はテーブルに着き、やわらかいパンをかじりながら、いくつか算段を立てておく。値上がり傾向と言うことは品薄の可能性もある。一時期のクロン定食のように、素材集めから行わなければならないなら、どの場所でどのぐらい狩ればいいか、素材はどこに行けば手に入るか、ざっと頭の中で整理しておく。
食事を終えた私は、女将に感謝を伝え、一旦部屋に戻ってから取引所に向かった。
案の定、レザー釉薬は売り切れ状態、革素材も軒並み品薄だった。空を仰いで、大きく息をつく。革素材は私が加工するとして、その他の必要な素材を手に入れる場所は頭にはあるが、やっかいなのが二つあった。
一つは釉薬に必要な、飛翔の痕跡と呼ばれる錬金素材。まあ、こちらは採掘以外にも獲得手段があるのでそこまで心配はしていない。金をかけるか、女将よろしく人と時間をかけるか、だ。
ただ、もう一つは、アルティノの鍛冶屋、メボ・ムラナンが売っているという、バレンシア旅行服の型紙だ。一番重要なものが、一番手に入りにくいかもしれない。過去に依頼を通して知り合いにはなったが、そんな図面らしきものを売っているところは見たことがないのだ。
懇意にならなければ売らない、特別な商品なのかもしれない。そういった売る相手を厳選している商品があるらしいとは噂には聞いたことがあるが、果たして型紙がそうなのだろうか。衣装の型紙が、そんなもったいぶるような商品になるのか?
私は首筋をかきながらうんうんと考えつつ、厩舎に預けた馬を迎えにいった。
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はい、黒い砂漠日記です。
お金がないので装備のアップグレードもできず、かといって狩りに明け暮れるのもためらってしまい、幻想馬チャレンジも素材集めがなかなか進まず、微妙に頭打ち状態です。
そんなときに、妖精の成長と昇級をこなしつつ、ふと見つけたバレンシア衣装なるものを作ってみようか、と思いつきでいろいろ動いておりました。貢献度削って採掘を回したりしてましたが、蜂蜜生産では最高級品はドロップしないんだろうなーと諦めモードになっておりまして、取引所から仕入れる、あるいは蜂の巣採集して自力ドロップを目指す方向に舵を切ろうと考えております。蜂蜜生産からは撤退するかなー。
飛翔の痕跡も同じで、取引所の在庫0、ユリア武器を溶かしてなんとか数を間に合わせました。レザーも乾燥させるところから始めて、釉薬作って素材は全部揃いました。
ネットの情報でメボ・ムラナンが親密度商店で図面を売っているとのことだったので、親密度を上げましたが、個人的には比較的スムーズに500まで上げられたと思います。その辺のことを妄想してみました。
ですが。
貢献度が底をついていて肝心の衣装製作所を借りられず、貢献度稼ぎをまた再開しなければなりません。甘い蜂蜜酒を大量に作って貢献度稼げる料理のドロップ(名前を忘れた…魔女のなんちゃら、みたいな)も狙って、と思っていたのですが、最高級蜂蜜がないので頓挫しました(´・ω・`)
なかなか上手くいかないものですねぇ。
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