
2003/10/04

R191を周る。
2時30分暴走族の爆音で目が覚める。目覚めもいいようなので出かけることにする。山口県長門路を巡るR191強行ツーリングである。

愛車ヤマハ・DTランツァをそっと起こしスタート。2時56分福山西ICで山陽道に乗る。大型トラックばかりである。ペースも速い。こんな時間に走るのは久しぶりのため交通量の多さに驚く。
流れよりも遅いと余計に危ないので少し速めのペースで走らせる。トラックの集団を追い抜き次の集団に近づく。オフロードバイクのランツァはまるで木の葉のように軽く不安定。怖い。それに寒い。
給油でSAによる、ついでにトイレを済ます。SAはすべて立ち寄らなくてはならない。ガソリン・タンクは小さいのだ。ほとんど休憩無しで美祢ICまでひた走る。

R435を北西に。夜が明けたばかりの霞掛かった空気が冷たい。コスモスと彼岸花が稲穂の黄色とよく似合う。豊北町からr39を西に向かい一気に日本海に出る。
トンネルを抜けるとR191に突き当たる。7時ジャスト。いきなり日本海。本州最西端の海である。久しぶりのワープ。しばし海を眺め感動に浸る。

R191を北にとり海と断崖に挟まれた道を角島にむける。観光目的とはいえ何故にこんなところにと思える長大な橋。しかしこうしてミーハーでもないと思っている私もここに来ている。観光効果はあるか。
きれいな海と白い橋、朝も早いため通る車は無い。誰もいない夢ヶ崎灯台を周り、海面との落差の少ない浜に荒れた海を想像する。

R191に戻りコンビニで朝食のおにぎりを買う。油谷湾の眺めがいい浜でおにぎりをほおばる。
R66を北に川尻岬へ。日本最西北端の岬だが観光客らしい人はいない。ひなびた岬である。磯釣りのメッカらしく釣り人は多いらしい。年老いた夫婦とこれも年老いた犬のいるレストハウス。そのまえに単車を置き歩く。
細いネック状の尾根を越えて岬先端に至る道があり途中までいく。荒々しい岩礁に打ち寄せる波。高い岩壁の海岸線が左右に続く。見飽きることの無い景色、強い西風にしがみつくように咲く紫の可憐な小花。心地よい風に水平線がまぶしい。

龍宮の潮吹きに寄ってみるが、波が静か?なためか潮吹きは見られない。
千畳敷への途中で、山の上に何本か見えていた風力発電の白い巨大なプロペラの下に出る。でかい。高さ50mほどはあろうか。山の稜線からのぞく巨大なプロペラは、昔テレビで見たウルトラマンの怪獣が出てくるシーンとイメージが重なる。
千畳敷は広大な草原になっていて眺めがいい。しかし残念なのはせっかくの大平原はその多くの面積がアスファルトの大駐車場となっていることである。

R191に出て青海島へ。33年前になるか、父母を連れてドライブ旅行に来たことがある。観光周遊船に乗り島を回ったのだが母が船酔いをしたのを覚えている。
傾斜のある橋を渡り青海島に入る。島の東端にある鯨墓に行く。港に向かって立つ2mほどの背の高い墓は綺麗に花が手向けてあり大切にしてあることがわかる。捕鯨が盛んであったころ鯨の解体で胎児が出てくるとそれを祭ったということで、鯨の戒名もちゃんとあるという。自然への感謝と大いなる畏敬の念を感じさせる。
私のランツァがめずらしいのか子供たちが単車の周りにしゃがんでいる。「こんにちは」というとはにかみながらも大きな声で「こんにちは」とご挨拶。単車にまたがり走り出す私に手を振ってさよならといっている。バックミラーに小さくなる彼らに手を挙げ、来た道を引き返す。

昼も近く腹が減ってきた。民宿のレストランで昼食にする。食堂のおばあさんにお勧めはと聞くと、ここの名物ウニ釜飯がおいしいとのこと。
イカの活き造りもいいなと思ったが一人では少し多い。鯨の刺身もあったが墓参りをしたばかりで食べるのもなんだし。ご飯が炊き上がるのに25分ほど掛かると言うのでどうしようかと思ったが、少しゆっくりと休憩するつもりで炊けるのを待つことにする。
いつもならここでビールなのだが今日は寝不足のため止めにする。釜の吹きこぼれを蓋で調節しながら待つこと30分やっとご飯にありつける。ウニのだしがよく出て香りがいい。ウニ独特の甘味が口に拡がり美味である。

船越の駐車場に止め遊歩道を歩く。スキューバダイビングをしている人がたくさんいる。ぷかぷかと波に浮かぶ彼らを見ていると何かこっけいな感じ、アザラシの玉ちゃんか。
海上アルプスを陸から眺める。奇岩怪石の連なる断崖と荒波。コバルトブルーの水平線。しかし困ったことに膝が痛い。

R191に出て土産を探しに海産物の買い物センターによる。縮緬とウニを買う。
これから萩、須佐、益田と東にとり。戸河内までR191を走る。まだまだ結構な距離がある。
萩城址により城下町の雰囲気だけ見て回る。趣のある萩の町はいずれ時間をとってゆっくりと歩きたい。
須佐までの道はまさにコバルトラインである。群青の水平線を左に見ながら走る。感動の蒼海原である。この海の青さがいい。頭の平らな同じような形の大小の島が不思議な感じでいい。

須佐からホルンフェルス断層によってみる。イメージしていたのと少し違うが一応見たということにする。
不審船、密航者に対する警戒感が町のあちこちに見受けられる。小さな漁村にふと感じる暗さは日常の中で潜在的にある警戒意識の現われなのか。海の向こうは大陸なのである。今日私が走ってきた距離よりももっと近くに大陸はある。見えないだけで。見えないということが日本人にとっていいのか悪いのか。見えないことが見ないことになってはいないか。
昨年の5月に島根半島を自転車で回ったときはまだ日朝首脳会談の前で拉致問題も表面に出てきていなかった。やはり去年と今年とでは日本海に対する思いは違っている。

15時30分益田。日本海に沈む夕日を見たいと思う。今日の天気ならば素晴らしくきれいな夕日を見ることができるのだが。しかし宿泊しないのならば日没まではとても待てない。後ろ髪を引かれながらも想いきりよくR191を広島に向け右折する。
山間部に入るまえに防寒対策。西中国山地を越えるこのルートはスキー場もたくさんある。秋の訪れは広島県で一番であろう。結構寒いのだ。峠に近づくにつれ気温はどんどん下がる。早い樹はもう紅葉している。これからこの道はきれいになる。短い秋を一年のうち一番の化粧をして人を招く。R191は変化に富んだ魅力的なルートである。四季を通じて訪れるものを魅了する。戸河内から中国道に乗り庄原へ。19時40分我が家に帰着。

所要時間17時間、走行距離770km。なんと平均45km/h。あっという間の短い旅であった。
