みなさんちわっす。
なんだよいきなり“3年間の秘密”なんて言っちゃって、いったい何のことだよ、とお思いになる方が、僕本人をよく知っている人でもたくさんいると思います。
つまりはこういうことです。
僕は約4年前にはじめて瀋陽に来ました。当時は学校の留学生寮に住んでいました。
留学生寮の条件にとても不満だった知り合いの中国人が、学校の外にアパートを探してくれて、僕もとてもその部屋が気に入り住もうとしました。
しかし、学校は、僕が瀋陽に着たばかりであることと、日本人留学生が学校の外に住むのが危険だという理由で反対しましたが、なんとか説得して、結局半年後に学校の外にアパートを借りて移り住みました。
うちの大屋さんにも、瀋陽には悪い人もいるから、自分が外国人といいふらしてはだめだよ、と言われたので、大家さんを信頼する僕は、まったく大家さんの言うとおりにしました。
買い物やタクシーに乗るときや床屋に行ったとき、
“あなたはどこの出身?”とか“あなたはどこから来たの?”なんて言われたときには、
“当ててみな”
“教えないよ”
“遠いところから来た”などと適当に答えていました。
3年前にSARSが流行っていた時に、情報の重要性を痛感して、毎日家の近くの道端で新聞を買うようになりました。
いつも決まったように、地元の朝刊と世界情勢に詳しい新聞の2部を買うので、新聞売りのおばちゃんは、毎朝僕を見かけると反射的に2部の新聞を用意してくれます。
新聞売りのおばちゃんが、ある日僕にこう聞いた。
“あんた瀋陽の人間じゃないでしょ、南方の人間でしょ”と聞くので、
僕はいつもどおり適当に
“そうです”と答えた。
この季節だったら
“あんたももう卒業なんでしょ”とか
“帰省の切符は取れたの?”とか、
季節ごとに変わる挨拶にも僕は適当に答えていました。3年間も。
おばちゃんは僕のことを南方人だと思い込んでいるし、
僕も中国人の振りをして生活をしていて、それでいいと思っていました。
そして僕の本当の身分はずっとずっと知られることはないんだろうと思っていましたが・・・・・・
今日の朝、いつもどおりに実習に行く道、新聞売りのおばちゃんとあるおじさんが話している。
そのおじさんどこかで見かけたことがあるような気がするが、まったく思い出せない。
おじさんが僕に向かっておばちゃんに聞こえるように話す。
“この兄ちゃんはまだこのおばちゃんに名前も教えたことがないんだって?
この兄ちゃんは実は日本人なんだよ”
ショーック
オレの秘密を知っているこのおじさんはだれなんだー
おばちゃん“おじさんはあんたのことを褒めていたんだよ”
と笑顔で僕に新聞を渡す。
実習に行ってからもあのおじさんの正体が気になるがずーっと思い出せずにいた。
でも、それと同じくらい気になったのは、
あのおばちゃんのあんなにうれしそうな顔。
3年間新聞を買っているけども一度も見たことはなかった。
いつもおばちゃんのあいさつをその場その場で適当に答えていたけども、
相手の言うことに適当にしか答えないということは、
相手を適当にしか見ていなかったからなんだと思う。
でも今日おばちゃんの笑顔を見て、適当にしか答えられなかった僕がばからしく思えた。
3年も会っているんだからもっと心をもって、親しげに会話すればよかったのかなぁと思った。
一期一会
そんな言葉が頭に浮かんだ。
地球の人口が60億いる中で
こうやって瀋陽の人々に会えるなんて、考えてみれば、奇跡に近いものだと思うし、
日本に帰ったらまず会うことはない。
瀋陽にはこんないい人もいたということを忘れるつもりはないし、
これからはいい人に対して心をもって接しようと思った。
しかし、あのおじさんいったい誰なんじゃー 