僕の親父は左の耳が聞こえず、右の耳も補聴器をつかっている。なので、僕とのコミュニケーションは難しい。医者にかかるにしてもコミュニケーションが当然難しいので、お袋が通訳として同行している。当然、障害者手帳のお世話になっている。それに、最近は、アルツハイマーの症状も現れているので、見ていて正直、辛い。親父は戦時中から郵便局員として働いて定年を迎え、今は畑仕事をしているが、ひとつとして、まともな物ができないでいる。あきれるほどに農業に向いていないのだろう。それに、ユニークなのが、いつも探検帽子を被っていることだ。どこに行くにも、探検家のように帽子を被って行きます。『世界ふしぎ発見』で、ヒトシちゃん人形が被っている帽子だ。今日は、歯医者が終わってから、ヒヤリングセンターや病院の看護婦に、黄色く熟したパパイヤと、グァバ(僕らはバンシローと呼んでいるフルーツ)を土産に持っていった。どれもこれも、自分の畑でできたものでもないのに、もらってきてはお土産に持って行きたがる。これもアルツハイマーの症状なのだろうか。それとも、ヒヤリングセンターのお姉さんや、看護婦さんと会話をしたいからだろうか。(笑)親父もまだまだ男なのかもしれない、とふと思った。ボケが始まっても、男はどこまでも男なのかな。若いお姉ちゃんが好きなのかな。そんなことを思いながらハンドルを握って帰ってきました。
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