試写会で見てきました。

キャッチコピーが『死より切ない別れがある。』となっていて、これは「ん?」という感じもしますが、CMでも使われている「愛してます。ごめんなさい。」という言葉は、胸に刺さりました。
泣きました・・。我慢しても鼻水がたれてきてしまうくらい泣きました。
ストーリーはタイトルから想像がつくように主人公の女性が「若年性アルツハイマー」になってしまう話で、同じようなドラマあったなぁ・・・って思っていたら、その『Pure Soul~君が僕を忘れても~』のリメイクだそうです。
見終わってみて、もちろん役者も違うし、自分も随分齢をとったからだと思いますが、TVドラマで見た時とは全然違うことを思いました。
多分、当時は、自分の身近な人が色んな記憶を失くしていくなんてことが、現実的には考えられなかったし、自分にも余り大切な記憶がなく、逆に忘れたいことばかりがたくさんあって、この病気を羨ましいとさえ思ってました。
でも、今回は自分がどの立場だったと仮定しても、悲しさよりも恐怖を感じて、不安で寂しくてたまらなくなりました。
大切な人の記憶から、自分が消えてしまうかもしれない日が近づいているという恐怖もあるし、自分の中に忘れたくない思い出や、忘れたくない大切な人の存在が出来たからだろうと思います。
そしてTVと違って映画では、チョルスの生立ちと演じるチョン・ウソンの演技が、切なさに拍車をかけていました。
家族の愛情に恵まれずに育ったチョルスに初めてできた愛する、愛してくれる家族。その唯一の人が、自分を忘れてしまう。愛したことも、自分の存在さえも・・・。信じたくない、やりきれない。
記憶は、最近のものから失くなっていく。自分を昔の恋人の名前で呼ぶスジンに笑顔で応えるチョルス。物語の設定上、韓国の映画やドラマにありがちな、何よりも自分の気持ちを第一に、感情を相手にぶつけるということはなく、無駄だと思えるくらいの愛情をスジンに注ぐチョルス。でも、忘れられてしまった自分の存在に耐え切れず、自分を愛してくれていたスジンの気持ちすら信じられなくなっていたチョルスに言った担当医者の言葉「愛されていたかどうかは君自身が一番わかっているはずだ」は重かった。
自分が信じるしかない。自分のことも、相手の気持ちも、二人分信じていくしかない。「俺が覚えていてあげるよ。俺は君の記憶で、君の心なんだ。」の言葉通りに。
そんな風に、悲しい感情を押し殺して、あまり涙を見せなかったチョルスが堪え切れずに泣き崩れるシーンがある。チョルスの留守中にふいに記憶が戻ったスジンが「今覚えている全部を」とチョルスに手紙を書く。またどの瞬間に記憶がなくなってしまうかも知れない切羽詰まった状況の中、チョルスへの想いの全てを伝えなくてはと、泣く間も惜しむほどの猛烈な勢いで殴り書きのような手紙を書き続ける。「愛しています。ごめんなさい。」と・・。そして、自分がチョルスを悲しませていると、姿を消す。
その手紙を、泣きながら読むチョルス。スジンの自分への変わらない愛情と同時に救いようのない悲しみに触れた瞬間かも知れない。
このシーンは手紙を書くスジンと、手紙を読むチョルスが同じ場所にいて、交互に画面に映し出されることで、チョルスを思いながら手紙を書くスジンと、スジンを思いながら手紙を読むチョルスの、お互いの相手を思う気持ちの深さをすごく感じました。
最後までスジンに「愛してる」と伝えていなかったチョルスが施設に入ったスジンに会いに行く。初めて会った時のコンビニを家族みんなで再現したり、スジンが懐かしいと思うシェービングローションをつけて行ったり、健気すぎるチョルスに反して、スジンはもう何も思いださない。それでも、そのスジンに初めて「愛してる」と伝えたチョルスが、本当に切なかった。