26話 「立ちはだかる黒い影」
「イタリアにいたんじゃないのか!?」
ベラーナは日本に向かって飛びながら無線で守里と会話をしていた。
「俺の…誕生日に、『じゃあ日本に帰っているからさ』って言ってたんだ…」無線を通して話す守里。
「日本って…んでどこなの?結構広いと思うけどどこ?」とベラーナは話す。
「それ聞いてなくて…」まで守里が言いかけると、大きな黒い見たことがない機体が飛び立って行った。
デジャヴのように夢で見た大きな機体が頭をよぎった。
「…あのさ…何もないところからあんな機体飛び立つわけないよな…」無線ごしに不安を覚えた守里はベラーナに言った。
「あの飛び立ったところに行ってみよう!いるって保証はないけど…」不安に思う守里だったが、ベラーナは言った。
「仲間は大事にしないと、俺の二の舞はさせない」無線ごしでも真剣なベラーナの様子が伝わってきた。
守里は日本に向かって飛びながら、誕生日に鏡と安藤にプレゼンントに貰った缶バッジを見た。
「…無事でな」願いを込めて見ていると、何か刻んであることに気付いた。
「教会、右20、手前30、下10…」何だか暗号のようだった。
「教会があって鏡と安藤が行きそうなところ…?」守里は見当がつかなかった。
ベラーナに教会のことを伝えると「日本だって教会たくさんあるでしょ。とりあえず飛び立った場所へ行こう」と答える。
無線は傍受されていないとセイナは言っても、万全を期すために暗号を伝えるのは後回しにすることにした。
「おい!守里!手がかりはないのかよ?」ベラーナが叫ぶように聞く。
缶バッチを手に取り、眺めていると刻んだように「NAGANO」と書いてあった。
でも空中から探すには知識がなさすぎ、悩んでいると再びベラーナが「ヒントあったか?」と無線で聞く。
「NAGANOって書いてあるけど…ここか分からないし、そもそもどこか分からない…」
何だか落ち着かないでいる守里は迷い、若干イライラもあった。
「聞いておけば良かった!!」と言う声が丸聞こえだったようで、トキノもセイナもカンナもララも、そして麻生やリリアンも、心配ないように励ます。
ロロナが「雪のあるところ〜湖や池もあるよ〜」と言うので、ベラーナ以外みんなが同時に言った。
「分かったぁ!」あまりにも同時だったので、ベラーナが驚くとトキノが言った。
「季節があって、この時期は雪ね、地形を見るとここから遠くないわ。ロロナが言っているのは…諏訪湖ね、あ、待って『志賀高原』を目指す方が早いかも」と言った。
「高い山なんですか?」と守里が落ち着きを取り戻して聞くと「おそらくね、って言うより私たち旅行で行ったことがあるの」頭をぽりぽりかきながらトキノが言う。
続けて「忘れてた!ごめんね。剣!」セイナも無線で言うので、その辺を飛んでみることになった。
ベラーナは「しっかし、そこにいるとは限らないんだよね。単にみんなで行ったことあるとかだけでさ」
話すと同時にザンラらしきものが2機飛んで行った。
ララも加勢して大きな声で「やっぱりあの辺よ!」向かおうとすると、ロロナが言った。
「剣〜!気を付けて〜!」と言うと同時くらいに黒い影があった。
ベラーナが「チッ」と言うほどあっという間の出来事だった。
「いくら何でも早いぞ!あいつら…」
少し遅れていたベラーナが慌てて言うと、守里は「ベラーナ!いいから逃げるんだ!」
悔しそうにその場を離れるベラーナだったが、守里の前には夢に見たのと同じ黒くて大きな機体が立ちはだかっていた。