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移ろいゆく日々

移ろいゆく日々
気にとめたことを忘れぬうちに

ロシアのウクライナ侵攻に関する一雑感

2022-04-12 18:07:03 | Weblog
プーチンの暴挙に微塵も与するものではないことを大前提として、あえて斜めの考え方を提示してみる。一つは、ロシア国民は今のところ、プーチンを支持している。国民の自由を奪っていても、大方のロシア国民は表面上は気にしていない。戦争が終わらない最大の理由と思われる。もう一つは、中国とインドの態度である。合わせて27億人が中立、もしくはロシア・プーチン寄りなのだ。加えて国連が機能しない仕組みが、暴露された形だ。核保有国が圧倒的な主張力を持つことも示された。シリア、クリミア半島に対するプーチンの介入に曖昧な態度を取ってきたことも関わっている。ちょうど、パレスチナ、イスラエルとアラブの対立、イランの核開発、いくつかの独裁国家に対してそうであったように。西側諸国が直接介入出来ない状況では、ウクライナの東側をプーチン・ロシアがぶんどって一方的な「解放宣言」をして一端の戦争の終わりと、新たな冷戦を迎える公算が大きい。インドの見方は考えさせられた。クワッドで、対中国ではしっかり味方につけておかないと、共通の価値観では括れないことが明らかになった。欧州すら一枚岩ではなく、ハンガリーのような国もあるわけだ。フランスも、この時局下でも極右政党が大統領選挙の決選投票に残る時代になったのだ。理不尽な目に遭う人を減らす、それがSDG'sの理念であったわけだが、最も理不尽な戦争を止められない現実を直視しなければならない。

ジャポニズム雑感

2022-03-21 20:15:41 | Weblog
ジャポニズムはフランスを中心に19世紀末から20世紀初頭にかけて、絵画芸術の分野で日本の浮世絵や工芸品が西洋芸術に与えた影響を指すと言えばよいだろうか。砕けて言えば、日本好みとでも言える。これは、日本の絵画工芸の素晴らしさもあったのだろうし、文化を許容する寛容もあったのだろうし、閉塞感を打ち破る欲求もあったのかも知れない。ただ絵画に限っていえば、バルビゾン派の少し前、風景画をものにし始めた19世紀前半の写生と構図の革新も、ジャポニズムを許容する土壌を作ったと思われる。最近コローの絵をまとめてみる機会があって、既に広重などの浮世絵に採られた構図を使っているごとに気がついたのである。浮世絵的な構図がジャポニズムによってもたらされたと単純にまとめるよりも、受け入れる素地が醸成されていたと受け止める、こういう文化の多様性の感じ方が大事なのではないかと思う。

北森鴻 味わい深いミステリー小説

2022-03-07 21:33:13 | Weblog
北森鴻は95年にデビュー、2000年前後から活躍したミステリー作家であった。過去形で書いたした理由は、大変残念なことに2010年に早世しているからだ。民俗学や絵画骨董、それにまつわる人物の造形に富んでいて、ミステリーの面白さに深みを添えている。前々から名前はよく聞いていたのだが、最近にとみに面白く読めるようになってシリーズものを集めている。2000年代当時には著名人にもファンが多かったようで、文庫本の解説に哲学者の木田元や服飾評論家のピーコなどが寄稿している。連作短編集が多いのも特徴で、短編ならではの切れのある謎解きと、連作による人物造形の深みを作品に活かしている。芸術をミステリーに取り込んだ作品は一つのジャンルかもしれない。例えば、ダビィンチ・コードや神の値段なんかが浮かぶけど、北森鴻はその中で大いに魅力を感じる。新作が読めないのは残念だが、一冊づつみ味読していこうと思う。

感染症 広がりと防ぎ方 井上栄

2022-03-05 16:48:28 | Weblog
コロナ禍の初期、2020年4月に増補された2006年初版の中公新書。戦後しばらくまで結核、60年頃の小児麻痺以降、食中毒やエイズはあったものの、大きな感染禍がなく、世界的なパンデミックとなったコロナ禍だが、この本を読むと人類は感染症と長らく戦ってきたのだと良くわかる。赤痢やコレラなど、繰り返し惨禍をくぐり抜けてきた歴史がある。インフルエンザとコロナでは感染部位など異なることも多いが、日本人の生活習慣や言語特性が感染拡大防止に大きく寄与したことは間違いない。一方で、本書の初版で提案されているマスクの備蓄と時期を得た放出すら日本で用意出来てなかった訳で、ワクチンや治療薬は言わずもがなである。日本の力が落ちていることは、この感染症対策でも明らかになったと思われる。諸外国と比べて感染が比較的抑えられたのは、生活習慣などの結果論であり、この反省がなければ次に備えられない。戦いに勝つには敵を知り、己を知り、備えるしかない。この本の著者、井上栄先生が疫学の一線、現役であればまた違っていたのだろうか。第6波はピークアウト後もまだ気を抜けない状況である。

ジョコビッチ選手の選択

2022-02-17 20:39:47 | Weblog
僕は基本的に科学に基づく行いを信じているし、支持する。科学が時には誤ったり暴走したりすることは、承知しているし、多様な考えの中に科学があるのが良いと思っている。コロナ禍の中で、その終息のための有力な手段がワクチン接種であることは、様々な弊害を考慮しても相当に確からしい。テニスのジョコビッチ選手は、全豪オープンの参加でワクチン未接種であったことから、騒動になったことは既報のとおりだ。彼がなぜ未接種か、公言してこなかったのかは、ごく最近に公開されたBBCのインタビューで知ることが出来た。関心のある向きは5分弱のYouTubeをあたって欲しい。科学と思想の間にある選択の自由を考えさせられた。こういう報道は大切だと思う。日本のテレビ局ではお目にかかれない。

深刻なデータの不足

2022-02-08 20:50:59 | Weblog
更新が途絶えてたが、再開のネタは、残念ながらコロナウイルスです。オミクロン株は重症化しにくい一方で、重症化した人の死亡率はむしろ高いようです。二回目のワクチン接種から三回目のワクチン接種までの抗体量の減少は具体的な数字が出てきません。個人差が大きいのかもしれませんが、個人差がどのくらいあるのか、データが示されません。抗体量が全てではなく、細胞免疫も有効なのかもしれませんが、具体的な情報がありません。大阪府は、陽性者数のデータすらまともに出せません。陽性者数の最も多い大阪市のデータが遅れているからです。データがでたらめで、どうやって政策判断をするのでしょうか。ひょっとすると今までのデータも間違いだらけではと疑いが頭によぎります。経口治療薬はどのくらい使われて、効果は出ているのでしょうか。死者数の推移を見ると、効いていないかもしれません。コロナ禍が始まって2年くらい、この国からは何らのデータも成果も出てきません。専門家会議は何に基づいて議論しているのでしょうか。政策判断は何を根拠に行われているのでしょうか。この国の科学の力は衰えてしまったのでしょうか。マスコミは騒ぐだけで、真実を追求することには飽きてしまったのでしょうか。焦燥感だけが募るこの頃です。

小さな奇跡 読書の偶然

2021-12-23 21:50:55 | Weblog
キャサリン・サムソンの「東京に暮らす」という本がある。戦前の駐日イギリス大使夫人であった氏の日本滞在記、偏見のない視点が当時の日本の一断面を見せてくれる。と同時に、当時の日本が確実に今につながっていることも感じさせられる。
若いときに理解の及ばなかった夏目漱石を読んでいる。岩波文庫に「漱石文明論集」という本がある。漱石の講演の筆記録などがあって、生き生きとした漱石が感じららて面白い。講談社学術文庫にも「私の個人主義」という本があって、収録される講演がかぶっている。速記録は漱石の講演をまさに聴くような面白さがあって、良く残してくれたと感謝したい。大嫌いな朝日新聞社に存在意義を認める一つのゆえんである。
前者の岩波文庫に、漱石が師と仰ぐマードック先生のことが書かれた記事があって、この人が書いた「日本歴史」という本があるらしい。この本をネットで調べてみると、これを批判した英国人がいて、サンソムという人であった。そう、冒頭のキャサリン・サムソンの夫である。
こんな風にぐるりと知識がつながると、読書がまた面白くなる。

体調がいまいち

2021-12-19 17:44:26 | Weblog
今年は体調がすぐれない一年でした。頭痛、動悸、息切れのような圧迫感。高血圧はあるけれど、年齢を思えば、ありそうな程度。ストレスチェックで引っかかったので、循環器科なるところに行ったけど、精密検査を勧められるほどでもなく、「様子を見ましょう」のセリフ。言われる方も案外とそれで安心してしまう。とはいえ、体調がすぐれないことには変わりない。胃もたれ、膨満感、人生初の食欲不振である。食わないと死ぬ訳なので、無理矢理でも栄養になりそうなものをはらにおさめる。こんなハッキリしないことを家人に言っても心配させるだけなので、ビールでも飲んで誤魔化すことにする。

人ならざるもので人を描く

2021-12-15 19:19:27 | Weblog
万城目学という作家は、好きな作家である。娯楽性の高い読み物を提供してくれる文筆家で、読みやすい文章の中に味わいがある。とりわけ奇想天外な設定は読者に新しい楽しみを与える。そこには怪異や神獣の類い、人にあらざるものが跋扈する不可思議な物語が書かれている。でも、読後には青春の感傷であったり、細やかな情感が感じられる。その主題は直に発せられないにせよ、人を描くことにあるのだと思わせられる。今時の読み物は、非日常というよりも、ラノベなどで非現実な設定をおくことがとても多い。推理小説の分野でも、非現実の世界を背景にした読み物が今は多くて、例えば怪異の存在を前提にした城平京の「虚構推理」という作もある。振り返ると今に始まったことでもなく、A.アシモフの「鋼鉄都市」なんかはSFと推理小説の融合ではある。とはいえ、不思議な世界、人にあらざるものを書いて、人を描くという点では、万城目学は当代では独特の位置にいると思う。

経済活動の本質

2021-11-28 08:48:53 | Weblog
たいそうなタイトルになったが、直近の第二四半期のGDPが年率換算で3%ほど落ちたらしい。コロナ禍からの脱却としては弱含みだ。これらの経済活動の指標はお金換算、つまりお金が動かないと影響しない。9月になって安心感が出てきたので、子供と公園に行って日長一日遊んでも、何かを買わない限り、指標には影響しない。幸福感とは別物だ。失われた30年というけど、公共施設は行き届き、先進国最下位の一人あたり総生産も、実感に乏しい。ただし、確実に経済は弱ってきている。例えば、iPhoneのトップモデルは年々価格が上がっている。買いにくくなっている。これは、国際的な商品であるiPhoneの価格が物価の上昇に応じて上がっているのに、日本だけが賃金が上がっていないからだ。経済活動を活性化、というにはお金を動かすことが必要なのだ。以後もこんな考え方で、記事を書いてみたい。