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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「まいごになったおにんぎょう」               A.アーディゾーニ:作 E.アーディゾーニ:絵 石井桃子:訳

本当に優しくて、賢い女の子の話

邦題が暗示するとおり、「迷子の人形が救い出されるまで」の物語です。
しかし、原題は “the little girl and the tiny doll” (女の子と小さいお人形)。
「女の子が人形を救い出すまで」の物語でもあります。

聖書の中に、「贖い」という言葉がよく出てきます。
もともとはユダヤ民族の古いルールの中で、「親族の持ち物であったが、売られてしまった土地を、元の持ち主に代わって買い戻す」「奴隷として売られた親族を買い戻し、もとの身分に戻してやる」という行為を指しました。つまり、大きな経済力のある人が、弱い立場の人を一方的に助ける行為です。贖った人は経済的に損をすることにもなる、一方的な慈悲の行い、というわけです。

女の子が迷子になっていた人形にしたのは、まさにこの「贖い」でした。
この小さな絵本は、贖う者と贖われる者の物語だといえます。

それにしても、この女の子の人形に対するふるまいの、何と思慮深く、慎重なこと!
そもそも「人間-人形」という「絶対格差」があり、圧倒的な力の差がありながら、
その力に物を言わせず、人形を人形として大切にしていく。
そこに本当の優しさと知恵が見えます。
それはちょうど、キリストが私たち人間を贖われる時と、同じように…

女の子はもちろん、ユダヤのルールに従おうとしたわけではありません。
ではなぜ、人形を贖おうとしたのか?
その答えは、どうぞ、絵本を読んでお確かめください。

それは、「なぜ、キリストは私たちを贖おうとされるのか?」
その答えと、同じです。

絵本を読み終えて、思い出した聖書の言葉がありました。
イエスが、弟子たちに言われた言葉です。

「わたしの父の家には住む所がたくさんあります。」
(ヨハネの福音書14章2節・新改訳2017)

このお人形のように小さい私も、のびやかに過ごさせて頂きたい、と願うのです。
天の御父の、広いお家で。


















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