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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「パンやのくまさん」                     フィービとセルビ・ウォージントン:作 まさき るりこ:訳    福音館書店

「こういうくまに 私もなりたい」

超有名な、宮沢賢治の詩「アメニモ マケズ」の最後。
「…ホメラレモセズ クニモサレズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ」

「褒められないけど、迷惑にも思われない。そういう人に 私はなりたい。」
って、これまた、ずいぶんと地味な願望ですが。

私も、この絵本を読むたび、つぶやいております。
「…こういうくまに、私もなりたい」

日々、自分の仕事を、きちんと果たす。丁寧に、味わいつつ。
その仕事が人々の助けとなり、その存在は潤滑油となる。
生活は単調なまでに規則正しく、小さな分を越えない。
そんな「くまさん」の地味な姿が、優しい彩りの細やかな絵の中で、実に鮮やかです。

福音館書店のサイト等によると、幼稚園教諭だった作者が「せきたんやのくまさん」を出版したのが1948年。本作は、それから三十年を経て1979年、作者69歳の時に出版されました。

得も言われぬ穏やかさが醸し出されているのは、作者の年輪というか、人生経験によるものなのでしょう。続けて「ゆうびんやのくまさん」「うえきやのくまさん」「ぼくじょうのくまさん」「ボートやのくまさん」「しょうぼうしのくまさん」が出版され、全7作のシリーズです。いずれも、エッセンシャル・ワーカーとして淡々と働く「くまさん」の一日が描かれています。

今も書店・絵本コーナーで手に入る、小さな絵本。
どうぞ、 それぞれの「くまさん」の安定した働きぶりを、覗き見してみてください。
きっと、誰かに教えてあげたくなります。
「このくまさん、実は、すごいよ」って。


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