悲劇を、生き延びるために
またしても…絶版の絵本を取り上げてしまい、すみません。
いや、絶版だからこそ、取り上げました。
今ほど、子どもたちが「おとぎ話」を必要としている時代はない、
と、思うからです。
天災や戦争・紛争といった、誰の目にも明らかな世界的悲劇から、
学校や家庭の死角で密かに進行する虐めまで…。
子どもたちの体や心が犠牲になる危険は、
いつでも、どこにでも、複雑に潜んでいます。
そして、不幸にもその犠牲になってしまった時。
その子どもが、その後の人生を生き延びるために、
壊された人生をそこから建て直していくために、
「おとぎ話」が必要になります。
「おとぎ話」が語られる時、そこに、主人公の姿かたちをとって、
個人の力を越えた知恵と勇気が立ち現れてくるからです。
作者は、巨匠アーノルド・ローベルのパートナーとして有名ですが、
彼女自身、ホロコースト・サバイバーでした。
中でも本作は、地獄のように過酷な日々を生き延びた人にしか描けない、
明るさと、しなやかさがある…。
そう、感じるのは私だけでしょうか?
第二次世界大戦後に生まれた、まだ新しい「おとぎ話」。
図書館でチェックしてみてくださいね!