予備的投稿を・・・ (2012.11.18)
4.や1.などの付記で考察したようにヒトの色覚を、光の刺激からみた3原色(青、緑、赤)ではなく、脳の中の色覚としての5原色(白、青、黄、緑、赤)で表現する手法を検討している。こうした扱いによって、ヒトの色覚に現れる青色と黄色および緑色と赤色が対立色(反対色)を形成する特性や各原色による混色の有無を数理的な画像処理から解析できると考えている。さらに、標準的色覚の人が色覚障害のある人の色の世界を理解することは、もちろん、逆に、色覚障害のある人が標準的色覚の人の色の世界を推測し、理解することへの可能性もある。 LCD等のディスプレイは、あくまでヒトの色覚の擬似的表現方法であって、3原色(5原色)特性や画質等に限界や問題点もあるが検討を試みている。 また、混色による色の見え方等は、今後の課題と言える。
1. 標準的色覚の人が見る単色光スペクトルを色覚5原色で表示した場合
色覚障害(3型は除く)の有無に関わらず、白色をはじめ5原色の存在や対立色、混色の関係を色覚的に読みとれる。1型や2型の色覚障害の人には緑色や赤色の原色を黄緑色や橙色などの黄色系に見ているが、それらの原色の存在を視認することができる。
( 参考 上記5原色を2型2色覚の人が見た場合のシミュレーション 2012.12.20 )
( 参考 同じく上記5原色を3型2色覚の人が見た場合のシミュレーション 2012.12.24 )
2. 1型2色覚(L欠失型 第1色盲)の場合
緑と赤色の感度が無くなり、白色と対立色の青色、黄色との混色になり、白色点(中性点)の存在を示している。
3. 2型2色覚(M欠失型 第2色盲)の場合
2.と同様に、緑と赤色の感度が無くなり、白色と対立色の青色、黄色との混色になり、白色点(中性点)の存在を示している。
4. 2型3色覚(M偏位型 (偏位率 0.75) 第2色弱)の場合
標準型に比して、緑色および赤色の感度が明らかに低下していることが認めらる。
注1) 1型2色覚、同3色覚(第1色盲、色弱)では、長波長域の赤色の感度が元来低いので、 これに対応した補正も場合によっては必要と考える。
注2) これらの解析にではガンマ値を 2.2 としている。また、画像処理の一部がJPEG形式の ため、色の境界付近などに多分のノイズが見られる。
付.1 任意画像の5原色 計算例
左上の原画での二人の上衣の色 (投稿者の色覚<第2色覚異常中等度>では緑色あるいは赤色が含まれているか否か判別不能) が、5原色に分解することによって、混色の割合は特定できないけれども、右が青色と緑色の混色系、左が黄色と赤色の混色系と推定できる。
ちなみに、投稿者に同等とみられる2型3色覚(M偏位型(偏位率 0.75))での5原色は、
標準型に比して、緑色および赤色の感度が明らかに低下していることが認めらる。
参考までに示す下記のような3原色での表現では、色覚上の色相判定がむずかしい。
新鮮な野菜の画像を 2型2色覚(M欠失型 第2色盲)のシミュレーションと比較すれば、
付.2 「光の3原色」の見え方を5原色で表示
注1)上図の中で、原色が重り合う部分(対立色を除く4つの組合せ)は混色の色覚となる。
注2) 色覚のホワイトバランス、イエローバランス等の神経生理学的なメカニズムについては不詳につき、別途な課題とする。
参考までに、「光の3原色」の見え方を3原色で表示
付.3 「色3角形」を 5原色で表示
付.4 某サイトの石原式色覚検査票のコピーを 5原色で表示
( LCD表色に変換されるなど、本来の品質は保障されていないからあくまでも参考例)
上左端の原画には、投稿者の色覚(第2色覚異常中等度)では判然としない一連の数字が5原色画像の中に巧みに配色されていることを投稿者の色覚でも視認できる。(原画の見え方の色覚シミュレーションは、2.の付記を参照のこと。)
この色覚5原色で画像を分解表示するソフトの作成は、色覚障害シミュレーションと同様に、㈱COSMO BRAIN による。 M.T ならびに S.O 両氏に謝意を表する。
付.5 色覚5原色の演算過程を再掲する。 (2013.02.05)
付.6 刺激としての3原色表示と色覚としての5原色表示を対比 (13.10.30)
特異な白色、黄色を組成して対立色的な特性を持つ色覚5原色は、対立色を前提にしたいわゆる段階説に止まることなく、実色覚に対応するひとつの色覚モデルとして色覚(障害を含む)を理解するうえでも有意性が高いと考える。
付.7 錐体の進化系統と5原色の構成を対比 (16.04.08)
特異な黄色、白色については、4. 付末尾で「色覚応答の原型 あるいは 分化の痕跡 として残されているように見える」と記したが、下図のように錐体と色覚とを対比してもその関係は明らかではない。ヒトの色覚には、錐体と直結する過程と複合あるいは分化する過程が混在しているためと思われる。
上図のうち、錐体の進化系統は、宮田隆(1998)等を参考にした。