思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

誤解する先生

2012-10-28 03:23:47 | 8.夏休み恥辱編
 背中に回された両腕は放してもらえたけど、おちんちんを隠そうとすると、シラトリ先生から強い口調で気をつけを命じられた。足の指の間に食い込んだ小石を除去した僕は、自分が生まれたままの、一枚の布も身に纏わない完全な裸であり、みんなの無遠慮な視線を体じゅうに浴びながら気をつけの姿勢を強制されていること、しかも注射を打たれたおちんちんが僕の性的欲望とは全く関係なく勃起していることから、この羞恥のあまり全身ががくがく震えてしまう今の状況が永遠に続き、僕の自尊心をこの先も生きている限りずっと全否定するような、そんな絶望感に襲われた。
「何を考えているの、一体あなたは?」
 怒気を孕んだ学年主任の先生が僕の俯けた顔を覗き込む。眼鏡のレンズの奥の小さな目に憎悪の感情がひらめいた。
「なんでおっ立ててるのかって聞いてんのよ」
 思わず横を向いた僕の顔を両手で押えて、今にも涙がこぼれそうな僕の目をじっと見据える。背後では先輩たちの笑い声が起こった。先生の「おっ立てて」という表現がおかしかったらしい。S子たちのくすくす笑う声も聞こえた。だが、Y美だけは相変わらず怖い表情のまま僕から目を離さず、おちんちんに注射を打たれたことは口外しないように牽制していた。もしも言ったら、Y美におちんちんを切り取られてしまうかもしれない。彼女ならやりかねない。そう思うと、到底真実を告げる気になれず、先生の問いかけにも口ごもるばかりであった。
「はっきり答えなさい。あんた、男の子でしょ?」
 そう言うと、学年主任が斜め約六十度の角度でツンと上を向いているおちんちんを指で押した。亀頭の敏感な部分を無雑作に触れられ、全身がピクっと反応する。指を放すと、バネのように元の角度に戻る。みんなが一斉に爆笑した。
「この恥ずかしい物はなんなのよ」
 しっかり返事ができない僕を学年主任が叱りつける。
「男の子のシンボルをこんなにしてるくせに、なんで男らしく堂々と言えないのよ? 女の子に悪さしようとしてんでしょうが」
 今度はおちんちんの根元の方に指を当て、ぐっと下へ押し込む。しばらくして指を放すと、一瞬にして元の位置に戻った。今度は生徒たちだけではなく、シラトリ先生も一緒に笑った。
「あんた、叱られているのよ。叱られている最中におちんちんを硬くするっていうのは、どういうことなの?」
 学年主任はおちんちんを指でつんつんと叩き続けた。硬化したおちんちんは下に向けて叩かれても、すぐに上がってくるので、
「わ、すごい。先生ったら生徒のおちんちんでドリブルしてる」
 S子の先輩が嬉しそうに隣の女子生徒の肩を叩いて笑った。吞気で楽しそうな他の人たちが単純に恨めしく、笑っている女の人たちを上目遣いで見つめると、シラトリ先生から頬を平手打ちされた。
「よそ見してる場合じゃないでしょ。ちゃんと答えなさいよ。ほら、気をつけ」
 おちんちんを隠したい、これ以上見られたくないという強い気持ちがいつの間にか気をつけの姿勢を崩させたようで、手がもう少しでおちんちんを覆う位置に来ていた。僕は、泣きたくなる気持ちを堪えて、再び両腕を体の側面にぴったり付けて指先を伸ばした。目の先には、自分の意とは関係なく大きくなったおちんちんが鎌首をもたげている。
「どうもY美さんが言った通りのようね。あなたは女の子たちに性的ないたずらをするために、わざと全裸になって、川遊びをして服を失くしたなんて嘘八百を並べて女の子たちの同情を買おうとしたんでしょ。でも、幾らごまかしたって体は正直なのね」
 学年主任がおちんちんを摘まんで左右に揺さぶる。薬剤の注入によって強制的に勃起させられているだけなのに、先生たちはそんなことは露ほども知らず、あくまでも僕の自発的な欲望によるものだと信じて疑わない。みんなの哄笑がわんわんと頭の中に響く。そこには、モン先輩をはじめとする男の人の笑い声も混じっていた。
「女の子たちに悪さしようとしたんでしょうが」
「いいえ。決してそんなことは」
 なんとかこれだけ返す。でも、学年主任の先生は信じてくれなかった。そして、もう一度指でおちんちんを今まで以上に強く叩いた。亀頭の過敏なところに当たって痛い。悲鳴を上げる僕にN川さんが冷ややかな視線を向ける。
「また手で隠そうとする」
 シラトリ先生に手の甲をぴしゃりと打たれた。隠すというよりは学年主任に叩かれてひりひり痛むおちんちんを庇おうとしただけなのに、それさえも許されない。僕はべそをかき、鼻を啜りながら、震える手を体の側面に戻した。
「それでは逆に訊くけどね、なんで大きくなってるのよ」
 しゃがみ込んだ学年主任が指でツンツンとおちんちんを突きながら、僕を見上げる。なんか訳の分からない薬剤を注入されたのだと告げたいのだけど、すぐ横でY美が睨んでいる。仮に勇気を奮って僕が事実を述べたとしても、恐らく横からY美が口を挟んで、先生たちを巧みに騙してしまうような気がした。もう先生たちは、僕がただの性的欲望に突き動かされて女の人たちに迫った変態という色眼鏡で見ているから、この偏見を覆すのは並大抵のことではない。Y美だけでなくS子、N川さんも怖い目で僕の恥ずかしい姿を凝視する中、「分かりません」としか答えようがなかった。
「分かりません? 分かりませんじゃないでしょ」
 シラトリ先生の手が僕の頬を締め付け、左右に揺すった。
「よくも恥ずかしくもなく、女子の前でこんなものを大きくできるものね」
 今度は僕の後ろに回り、お尻を平手で叩き始めた。シラトリ先生の強い憎悪の念が籠もったお尻叩きだった。身を捩って許しを乞うのだが、なかなかやめてくれない。僕の前にしゃがみ込んでいた学年主任が立ち上がると、僕の頭を軽く撫で、シラトリ先生に目配せした。シラトリ先生の手がようやく止まった。
「この子、少し変わってるかもしれない。お尻を叩かれても、まだおちんちん、立ったまんまでしょ」
 学年主任がシラトリ先生に話しかけた。その落ち着いた声は、我を忘れて尻叩きをして今なお呼吸が整わないシラトリ先生を冷静にさせる効果があった。
「そうですね」
 後ろから正面に回ったシラトリ先生が目をパチパチさせながら、おちんちんを確認する。
「こんなにお尻を叩かれて、痛い思いをしたのならば、普通、勃起は収まる筈。ところが、この子はちっとも変わらない。ずっとこの大きさのままでしょ」
 不審そうに学年主任が斜め四十五度の角度に屹立するおちんちんを凝視する。僕は鼻水をすすりながら気をつけの姿勢を保った。こんなに勃起し続けるのはさすがに少しおかしいと思ってくれたのであれば、学年主任にはY美たちに質問するなどして、ぜひその疑問を解明してもらいたかった。そうすれば、エンコの鞄から注射器やら薬剤やらの入ったケースを見つけるのは時間の問題になる。僕が自分の性的欲望とは全く関係なく無理矢理勃起させられていることが明かになるだろう。そんな淡い期待を抱きながら、興奮した形のおちんちんを晒し続けている屈辱に耐える。
 だが、期待はあっさり裏切られた。学年主任はじっくりと僕の体を見回した挙句、
「特殊な性癖なのね。マゾっていうやつ。こうやって晒し者になってみんなから軽侮されることは、この子に性的な快感を与えるのよ。お尻を叩いたって無駄。いくらこの子のみっともない裸を痛めつけても、性的な快感が高まりこそすれ、反省の気持ち、自分の性欲を満たそうとして女の子たちの人格を貶めていることについての自己認識なんて、これっぱっちも生まれやしない。正真正銘のマゾなんだから」
 と、断言した。
「マ、マゾなんですか」
 シラトリ先生は、きょとんとした顔をして僕の羞恥に汗ばむ体を眺める。
「でも、この子、泣いてるようなんですけど」
 人差し指で僕の頬をなぞってから、恐る恐る学年主任に僕の濡れた顔を示す。新米のシラトリ先生が自分よりもずっと年上の学年主任に異を唱えるのは、よほど勇気のいることなのだろう。シラトリ先生の声が心なしか震えていた。学年主任は、脂肪のたわわに付いた肉体をシラトリ先生に一歩近づけると、おばさん特有のふてぶてしさでシラトリ先生の疑問を一蹴した。
「そんなの嬉し涙のようなもんよ。マゾでもなければ、こんな状況でもおちんちんをずっと硬くしていられる訳がないでしょ。それにこの子の体をよく観察してみて。あることに気が付かないかしら」
「あること、ですか?」
「そうよ。おちんちんだけじゃなくて、体全体をくまなく観察してね。この裸んぼの男の子の体には、ある特徴が見られるの」
 いやらしい微笑を浮かべて学年主任が後ろへ下がる。シラトリ先生は、気をつけの姿勢を保っている僕へ振り返り、改めて体をじろじろと見つめた。
「手を頭の後ろで組んで、足を肩幅よりも少し広く開きなさい。早く」
 厳しい口調でシラトリ先生が命じる。じっくり体を観察するのに、気をつけの姿勢では腕が邪魔になると言う。最初、あまりに早口で聞き取れなかった。どうして良いか分からずにいると、お尻をぱちんと強く平手打ちされた。学年主任に圧力をかけられたシラトリ先生の苛立ち紛れの一撃だった。これ以上、シラトリ先生の不安定な感情を刺激したくないので、素直に言われた通り、隠すものなどどこにもない、完全に無防備な格好になる。夕暮れの風はまだ日中の名残を留めて生温かった。僕の裸の胸や開いた股間をゆっくりと通り過ぎる。
「早く見つけないと、だんだん暗くなるわね」
 周囲の光量が少しずつ絞られ、斜めに差し込む光が色付いている。頭を後ろに組んて足を開いた僕の一糸まとわぬ体をシラトリ先生が丁寧に調べていると、周りの女子生徒たちが「先生、私たちも手伝うよ」と言って、群がって来た。
 女の人たちは僕の体を眺めるだけではなく、何の遠慮もなく触ったり撫でたり、場合によっては抓ったりした。硬化状態のおちんちんを摘まんで揺さぶることも一度や二度ではなかった。それでも僕は頭を後ろに組んだ直立不動の姿勢を取り続けた。途中、何度か姿勢を崩してしまったことがあったけども、その度にY美やS子におちんちんの袋を掴まれたり、おちんちんを打たれたりした。この激痛に耐えるくらいならば、彼女たちのたくさんの手でまさぐられたり観察される方がまだマシだった。
 しばらくして、Y美が僕の体に見られるある特徴が分かったと言い、答えを知りたがるシラトリ先生に教えることを拒んだ。シラトリ先生が憮然として溜息をつくと、Y美はにっこり笑って、学年主任にも聞こえるような大きな声を出した。
「仕方ないな。そんなに知りたいんなら教えてあげるよ。気付かないのも無理ないね。だってシラトリ先生、おちんちんばっか見てんだもん」
 みんなが一斉にくすくす笑った。眼鏡のレンズを拭く学年主任の口元が緩んでいる。
「普通、裸になったら日焼けしてる肌とそうでない肌があるよね」
 Y美の一言を聞いて、みんなが僕の体の腰回り、首や腕の周囲を念入りにチェックした。そして、驚いたように息を飲んだ。
「私たちもお風呂に入った時とか、普通は服の下に隠れているところとそうでないところの肌の色の違いが分かるよね。でも、この子の場合はどうかな。首回りといい、腰の辺りといい、うっすら日に焼けた色が同じように続いているでしょ」
 Y美の堂々たる説明に先輩たちも感心して僕のお尻の色と足の色を見比べ、日焼けの差がほとんどないことを確かめる。両手を頭に組んだ姿勢を強いられる僕は、全身をくまなくたくさんの目に見つめられて、肌が勝手にぷるぷる震えるような感触を覚える。斜めに刺さった棒のようになっているおちんちんも先端が微かに揺れている。
「つまりさ、この子は今ここで初めて裸になっている訳じゃないってこと。もうずっと前から日常的に裸になって外をうろついている変態だってことじゃないの。私たちにこのいやらしいおちんちんを見せつけて、変なことしようとしてたんでしょうよ」
 ばしっとお尻を平手打ちされた。Y美が勝ち誇った顔をしてシラトリ先生を見る。シラトリ先生は、怒ったようにおちんちんに視線を向けていた。
「その通りですね。実は私たちは、女の子たちが一人の男の子を丸裸にしていじめているという報告を受けて駆け付けたんだけど、どうも勘違いのようね。女の子たちに苛められたい男の子が自ら裸になって、おちんちんを大きくさせているという、ただけそれだけのことね。むしろ、被害者は女の子たちよね。この男の子がいつも服を着ないで外にいるらしいことも、肌の日焼け具合からよく分かったわ。あなたたちを疑って悪かったわ」
 学年主任が頭を下げると、今度は、僕の正面に来て、腕を組んだ。
「あんた、いつまでおちんちんを勃起させてるつもりなの? 早く元の形にしなさい。女の子たちに失礼と思わないの?」
 僕は頭の後ろで組んでいた手を解き、おちんちんを両手で股の間に押し込むようにして隠した。
「一分以内に縮めないと、教育委員会に報告するわよ」
「そんな、無理です」
 怒りのテンションを上げる学年主任に圧されて、身の縮む思いがする。注入された薬剤によってあと二時間近くは勃起し続けるから、学年主任の言いつけを守るのは不可能に近い。できないことはできないときっぱり言うしかなかった。
 細長い板を持ってエンコが僕の前に現れた時、すぐには彼女が何をしようとしているのか分からなかった。想像する余裕もなかった。だから、僕の股の下に板が入るのを見て、慌てて逃れようとしても遅かった。Y美とS子に体をがっしり押さえ込まれ、股の下の板から離れることができなかった。
「おちんちんを小さくするには、これしか方法がないんだってよ」
 大人しくするように命じるY美の声が聞こえたのとほぼ同時だった。板が上がり、おちんちんの袋に当たった。激痛で目の前が真っ白になる。悲鳴を上げて倒れ、おちんちんの袋を両手で優しく包み込むようにして蹲る僕を、さすがに先生たちは少し心配そうな顔をして覗き込んだが、おちんちんは相変わらず勃起したままだったので、心配無用と判断したようだった。
 エンコによれば、おちんちんの袋に衝撃を加えればブロスタグランジンE1という薬剤が逆流し、おちんちんの勃起が収まるという。しかし、そんな話は出鱈目だった。おちんちんは硬く屹立したままだし、おちんちんの袋だけがじんじんといつまでも激しく痛み続けた。涙を流しながら呻き声を漏らす僕をY美はしばらく見下ろしていたが、やがてしゃがむと、おちんちんの袋を摘まんで調べ、冷やした方が良いからと、僕を川に入れるよう他の女の人たちに呼びかけた。N川さんが僕の脇に手を差し入れ、立たせた。
 川に入れられた僕は足を滑らせ、何度か転んだ。転んだ拍子に深みにはまってしまい、流された。岸に引き上げられたのは、元の場所から50m近く離れた場所だった。おじさんたちが釣りをしている中、女の子たちに手を引っ張られ、水面から出る。おじさんたちは、僕が素っ裸なので驚いたようだったが、おちんちんが勃起しているのに気づくと、困ったような顔をして笑った。
 先生たちが立ち去った後、先輩たちは三々五々に散り、僕と同い年の女の人たちだけが残った。彼女たちもまた帰り支度を済ませ、僕を連れて帰ろうとしていた。だいぶ日が西に傾いたとはいえ、まだまだ明るく、往来は人が多い。幾らY美たちが僕を囲ってくれると約束してくれても、全裸では、ましてやおちんちんが硬くなって、うまく隠すことができない状態では、とても帰ることなどできない。それで、僕としては、夜中になって人通りがすっかり途絶えてしまうまで、どこか岩の隙間にでも隠れていたかった。
 だが、僕の願いは却下された。Y美は、エンコにロープを取り出させると、通し穴が二つある金具から大きな輪を作り、おちんちんの袋まで通してから根元のところできゅっとロープを引っ張った。川の中で流されないようにおちんちんで繋ぎ留められた、例のロープであった。今度は同じそのロープで公道を引き摺り回されることになった。
 道々、Y美やS子たちが列を組んで囲ってくれたけど、時折、気紛れのように彼女たちは列を離れるので、行き会う人に素っ裸のまま歩かされる恥ずかしい姿が丸見えになってしまったことが再三あった。また、歩き進むにつれ、囲ってくれる人が減った。最初は七人だったのに、いつの間にか、前にはY美とS子、後ろにはルコとエンコしかいなくなっていた。大手建設会社の横のあまり人通りのない道を過ぎたところで、エンコが手を振って別の方角へ向かった。これで三人。後ろを隠してくれる人はルコ一人。
 S子が鞄からロープの切れ端を取り出すと、僕の両手を後ろに回した。抵抗しても無駄だった。大柄な女の人たちに体の自由を封じられ、力ずくで縛られる。これで、硬化したおちんちんを隠すことができなくなってしまった。屹立するおちんちんを丸出しにしたまま、前に二人、後ろは一人しかガードのいない状態で歩かされることを思うと、全身から緊張の汗が出て、喉がからからになる。
 雑木林を抜けると、信号のない交差点に突き当たった。Y美とS子が立ち止まり、二人はしばらく話をしてから、S子が別の方角へ進んだ。これで僕をガードしてくれる女の人は、Y美とルコの二人だけ。行き会う人たちがじろじろと素っ裸の僕を不審そうな目で見て過ぎる。トラックの通行量が多い道に差し掛かった時には、Y美とルコが前後にぴったり付き添ってくれた。二人とも僕よりも15センチ以上背が高いので、トラックの高い位置にある運転席からでも僕が素っ裸で歩いているとは気づかれなかったかと思うけど、信号待ちの時は、隠しようがなかった。助手席側の窓がすっと下りて、男の人の太い声で声を掛けられる。Y美がわざと怒りの感情を露わにして「この子には罰が必要なの」なぞと言うものだから、トラックの運転者はまんまと騙されて、これが性的ないじめだとは見抜けなかった。或いは、おちんちんが勃起したままなのだから罰を受けるのも仕方がないと思ったのだろうか。
 多少の遠回りではあっても人通りの少ない道を選んだY美は、別に僕の羞恥を考慮してそうしたのではなかった。あまり目立ち過ぎるとY美自身に災いが及ぶと考えたのだろう。それでも、この町で一番交通量の多い幹線道路を横断する時は、人に見られる可能性の少ない歩道橋を渡ろうとせず、横断歩道にこだわった。電柱の陰に隠れている僕にY美が怖い顔をして言った。
「私たちが先に向こうに渡るから、お前は私が合図を送ったら来なさいよ。いいね?」
 おちんちんと後ろ手を縛る二つのロープが外された。これで僕の体を拘束するものは全部取り払われたけど、一糸まとわぬ完全な裸で放り出された感じかして、改めて恥ずかしくて堪らない気持ちになる。
「もう見せ物になるのはいやです。許してください」
 自由になった手でおちんちんを隠しながら哀願しても、案の定、Y美は頑として聞き入れてくれない。街道沿いの濁った空気が全身の剥き出しの肌を包み込む。僕は、深い穴に落ちたような気分になる。自分が手を上げたら渡るように言うY美とルコの後ろでは、幹線道路を車が次々と通過する。
 信号が青になって、まずY美とルコが渡った。二人が渡り終わると信号が点滅して赤になる。電柱の陰でとうとう僕だけが裸のまま取り残された。町の東西を貫く幹線道路は中央分離帯を挟んで二車線ずつ道路があり、夕方から夜にかけては非常に交通量が多い。歩行者用信号はなかなか青に変わらなかった。大丈夫、ほんのわずかの間だから、おじさんドライバーがほとんどで、なんだろうって思うだけだから、恥ずかしがってても仕方ないから、と自分に言い聞かせ、素っ裸のまま道路を横断する覚悟を固めていると、後ろから肩を叩かれた。
「何してんだ、こんなところで。丸裸じゃないか」
 自転車を引く作業着姿のおじさんが僕の頭から爪先きまでをじろじろと見て、僕が布切れも靴もない、完全な裸であることに驚いていた。どうしてこのような恥ずかしい格好でここにいるのか説明を求められ、おちんちんの硬化に気づかれないように両手で隠し、腰を屈めて、Y美ばりの作り話をした。実は罰ゲームで裸のまま横断歩道を渡らなければならなくなったと言って、照れ笑いをして見せたのだった。
「全く最近のガキどもはロクな遊びをしねえなあ」
 そう言い捨てておじさんは自転車に跨ると、幹線道路沿いの歩道をゆっくりと走り去った。ほっとして電柱に腕を当てて、顔を隠すようにして呼吸を整える。すると、どうだろう。今度は小さな二人の子どもを連れたお母さんが来た。最初に僕に気づいたのは子どものようだった。
「ねえ、きみきみ。大丈夫なの?」
 お母さんが心配そうに話し掛けてきた。両手でおちんちんを隠し、もじもじする僕をお母さんは遠慮してあまり見なかった。
 歩行者用信号が青になった。道路の向こう側でY美とルコが手を上げて振っている。僕はお母さんに頭を下げて、「こんな格好でごめんなさい。罰なんです」とだけ答えて、道路を渡り始めた。一つの車線に三台以上車が止まっている。停止線の先頭はどれも普通乗用車だった。夕焼けの淡い明るさの中を小走りで渡る。後ろからお母さんと子どもたちが続き、「あの人、お風呂に入るのかな」「なんで裸んぼで歩いてるのかな」などと話す声が聞こえる。裸の僕を見て、車の中から怒鳴る若い男の人の声が聞こえた。
 後ろの子どもたちが僕の性別について話し合っていた。お母さんもまた僕が男か女か分からないらしい。道路を渡り終えると、桑畑の窪んだところからY美とルコが出て来て、僕の後ろにいるお母さんと子どもたちに向かって、
「この裸んぼで歩かされてるのは、男の子でした」
 と、僕の両手首を掴んで万歳させた。僕の棒切れのように屹立するおちんちんが丸出しになった。お母さんは目のやり場に困ったように顔を背け、口をあんぐりと開けている子どもたちを促して足早に去った。
 桑畑の窪んだ地面に引きずり落とされた僕は、Y美とルコから頬とお尻に一発ずつ平手打ちを見舞われ、やり直しを命じられた。約束を破って、足早に歩いたのがその理由だった。もう一度反対側に渡ってから、こちら側に渡る。ゆっくり歩いて往復しなければ何度でもやらせる、とY美が脅かした。
 泣きたい気持ちを堪えて、ゆっくり歩いて渡る。心臓が口から飛び跳ねて出てきそうだった。信号待ちの車から無数の視線が圧力になって、全身の肌に突き刺さる。買い物帰りの主婦の人たちから裸で歩いたら駄目だと強い口調で叱られた。往復して渡り終えた僕にY美はまたしても駄目出しをした。おちんちんを隠しすぎる、とY美が言って、おちんちんの袋を握り締めた。痛みに悲鳴を上げる僕に向かって、今度はおちんちんを隠さず、丸出しにして普通に渡ってくるように命じるのだった。
 夕暮れの淡い色に染められて、周囲の影が一段と深くなった。街灯が点灯し、ヘッドライトを付ける車も見かけるようになった。
 もう自暴自棄の悲しみで胸が張り裂けそうだった。歩行者用信号が青に変わると、両手をぶらぶらさせて普通に横断歩道を渡った。車だけではない。向こうから渡ってくる若い会社員風の男の人たちやおじさんたちがぎょっとして、素っ裸の僕を睨みつけた。話し掛けられる度に裸で歩いている理由をでっち上げる。
「おちんちん見られて嬉しいですか?」
 若い会社員風の女の人がすれ違い様、僕に軽蔑の眼差しを向けた。
 渡り終えて、電柱の陰に隠れる。あと一回、何も身に纏わないこの格好のまま、両手をぶらぶらさせてゆっくり渡らなければならない。道路の向こう側では、信号待ちのおばさんたちが続々と集まってくる。とにかく命じられた通り、おちんちんを隠さずに歩き、Y美たちを納得させなければ、これから先、何度この横断歩道を往復させられるか分からない。丸出しを強要されたおちんちんは、注入された薬剤の力で今も太くて硬い状態のまま、力強く脈を打ち続けている。


9 コメント

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Unknown (へろへろ)
2012-11-01 07:33:21
S子が途中でいなくなったのが気になりますね。何かまた仕掛けがあるのでしょうか?
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更新有難うございます ()
2012-11-01 13:02:11
いつになく斬新で~ところで尿意はどうなるんですかね?それと注射はプロの看護婦さんでもそこらへんの注射は簡単ではなく余程の注意が必要で間違いがあったら取り返しつかない事になるんだって~勇気あるのか無謀なのか世間知らずなのか?羞恥心かき乱す作品はとにもかくにも面白いです!次号期待しております
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ありがとうございます (naosu)
2012-11-03 00:46:30
へろへろ様
毎度、ありがとうございます。
S子がいなくなって、僕としてはほっとしているところです。
また出てきたら、きっと良からぬことを考えているので、怖いです。

櫂様
いつもありがとうございます。
注射の情報、恐れ入ります。
確かにあまり勃起が持続すると、まずいことになりますよね。エンコの注射の技術は、多分しっかりしていると思います。


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Unknown (江南)
2012-11-11 06:07:23
更新ありがとうございます!^_^
海水浴の話わくわくします
それとメライはすっぽんぽんにされないのかぁ…
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Unknown (江南)
2012-11-24 17:01:17
もう一月たつ…
待ちきれないよ…
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いつもありがとうございます (naosu)
2012-11-25 07:06:56
江南様
いつもありがとうございます。
大変お待たせしましたが、更新いたしました。
いろんなお話がこれからも出てきます。
海水浴の話、メライちゃんの話も今後の予定にあります。
どうぞよろしくお願いします。
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Unknown (おジャ魔女どれみ)
2012-11-30 23:59:24
Y美!あんた最低のスケベ女だね!男の子裸にしたりチンチン触ったり面白いのか!Y美!地獄へ落ちろ!
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Unknown (M.B.O)
2015-02-16 01:03:10
Y美は巧妙な出鱈目で大人を騙して、そのとばっちりがいつもナオスさんなんて可哀想過ぎますよ!

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Unknown (加奈子)
2015-09-16 06:12:01
ナオスさん、この女性教師に事実を話せば良かったのに。ナオスさんが女性教師にY美に脅されて服を脱いでパンツは、Y美に羽交い締めにされて他の女子達に脱がされた事も。それにこの中学校の女子は、一体何を考えているのかな?
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