なおみってさ

猫と唄って日々の足跡

エイミー・ワインハウス

2014-06-14 01:02:29 | 音楽
以前、友人がi-podに「多分好きだと思うから」って
エイミー・ワインハウスの曲を沢山入れてくれたことがあった。

ワタシはどちらかというと、
流行ってるから聴かなくちゃって思わない。

「ありがとう」と受け取ってみたものの
直ぐには聴かなかった。

しばらくすると、エイミー・ワインハウス嬢のゴシップが世界を駆け巡って
彼女は酔っ払って、ボロボロで、皆に非難され嘲笑われていた。


エイミー・ワインハウスはイギリスの歌手。
19歳ですでに、完成度の高いアルバムを出し、
グラミーも受賞した。
ジャズ・R&Bなどをベースに、個性的な声と高い歌唱力で人々を魅了した歌手だった。
こういう文面はありきたりで、彼女を縛り付けるものでしかないのが申し訳ない。

ワタシは、彼女が麻薬かアルコールの過剰摂取で
27歳の若さで死んだニュースを聞く直前に、
思い出したように、彼女の曲を聴き始めた。


麻薬常習者の夫と結婚したエイミーは
あれよあれよという間にゴシップネタにされ続けた。
それこそ死ぬ間際まで。

マイケルジャクソン同様に、世間からのイジメを受けていたようでならない。

反面、根強いファンがいるのも明らかだ。
でも、可哀想なのはyou-tubeで流される彼女の不名誉な姿。
酔っ払ってボロボロ。
歌も歌えないような姿。
死んでしまった彼女に怨みでもあるんだろうか。


ワタシは、彼女の歌をライブでのリストにいくつか入れている。
難しいのは当然のことだけれど

彼女の歌には哀愁があり、情景が目に浮かぶような素晴らしい楽曲が多い。

彼女は自分の悪いところはよく判っていたはずだ。
どれだけ夫を愛していたかも判る。
でも、いつも孤独感から逃げられずに
酒を飲んだり、麻薬を体に入れて何かを誰かと共有したいと思っていたのかもしれない。

栄光をつかんだことが
賞賛されたことがないから解らないけれど

彼女は世界中でレコードが売れ、その大きな存在と契約を結んだとき
自動的に大事なものを手放すことになってしまった。
彼女は弱かったのだろうし
守られていなかった。

麻薬もアルコールも、常習していると抜けられなくなる。
罪悪感が消えず悪循環。
もう誰の手にも負えなくなってしまっていたのだろう。

彼女の母親は、最後に家に帰ってくるようにエイミーに手紙を出したのだという。
手紙。
世界中の人が、1人一台電話を持ち、ネットで噂するのに
実の家族は手紙。

ただ1人で、何かの飲みすぎで命を落とすなんて
レコードが消えつつあるこんな時代に、あまりにアナログな
ベタな死に方。

入れ墨だらけでも、酒で声を枯らしても
生きて歌い続けるべきだった。
しぶとく。

まだこれから成し遂げるモノは沢山あったはずだから。







ジャニスのこと

2014-06-08 17:30:01 | 音楽
昨日は渋谷でライブ。

今回、ジャニス・ジョプリンの「Down on me」をリストに加えた。

70年代のロックをカヴァーしているけれど
元々、ジャニスが演りたいわけじゃなかった。

「心のかけら」(Piece of my heart)を演ってみたら、
もっとジャニスの曲を加えてもいいんじゃないってことになった。
聴く人たちの反応も良かったせいかな。


ワタシが初めてジャニスを聴いたのは
80年代半ばを過ぎて、時代はヘアメタルがちょっとブルース色を出し始めていた。

貸しレコード屋もまだあって、
学校帰りに毎日通っていた。

とにかく、何でも聴きたかった。
その中にジャニス・ジョプリンがいた。

ライナーノーツには、27歳で死んだ彼女の事。
歌詞と、その和訳を何度も何度も読んだ。

「ボールとチェーン」なんかは、聴くに耐えられなかった。
彼女の叫びを受け止めるには、ワタシはあまりにも幸せ過ぎた。

愛が、愛する人が・・孤独が、まだ理解などできるはずもなかった。

そんな時に、彼女の映画「ジャニス」の上演が始まった。

博多の、繁華街の片隅の小さな映画館。

観客はワタシを含めて、5人もいただろうか。

青く映し出された彼女のライブ映像と、彼女の私生活の断片。
人気のある歌手になったにも関わらず、故郷の旧友は冷たい。
映画は彼女の死んだ後に作られているから
観るものは、自殺の原因をその「孤独感」に結びつけがちだ。


ワタシは、彼女の歌は歌えないと思ってきた。
誰もが優しく歌える曲ではない。
「ジャニス・ジョプリン」の歌って、身を削るようなエネルギーが必要だと。



酒や薬、何かを分かち合う為のセックス。
逃げようと、掴もうと、必死だったのだろうか。

時代は半世紀近く経つのに、
愛に飢えた人は多い。

世の中に対応できずに薬を飲まなくてはならない人
恋人と一緒に居たくて、我が子を放置したり殴る母親
宗教の違いを認められず、暴走する民族...

いつまでも尽きない。


幸い、彼女には音楽と歌があった。
表現者としての道が開かれていた。

「ジャニス・ジョプリン」でいられた。
愛する人がいて、愛してくれた人もいたのだ。
恋愛は苦しいものだ。


そして、若くして亡くなってしまった。
惜しいけれど運命だった。



今、ジャニスを聴くと
「あなたも色々あったわね」と、思う。

ワタシも、イロイロありました。と、思う。

だから、やっと彼女のうたを歌えるかなと思っている。




髪を一時的にカーリーヘアーにしてライブをしていた頃。
妹が、

「おねえちゃん、あのCDの写真の人にソックリ」って言う。

え? ジャニスの事?
似てないわよ、一緒にしないでよ。
ワタシはあんな顔してない。

ジャニスには失礼だけど、そう思った。

ワタシには太陽みたいな光につつまれた未来があるんだって思っていた。

夏の日差しに似た、眩しくて 掴めそうで掴めない 輝ける未来が。