なおみってさ

猫と唄って日々の足跡

ジャニスのこと

2014-06-08 17:30:01 | 音楽
昨日は渋谷でライブ。

今回、ジャニス・ジョプリンの「Down on me」をリストに加えた。

70年代のロックをカヴァーしているけれど
元々、ジャニスが演りたいわけじゃなかった。

「心のかけら」(Piece of my heart)を演ってみたら、
もっとジャニスの曲を加えてもいいんじゃないってことになった。
聴く人たちの反応も良かったせいかな。


ワタシが初めてジャニスを聴いたのは
80年代半ばを過ぎて、時代はヘアメタルがちょっとブルース色を出し始めていた。

貸しレコード屋もまだあって、
学校帰りに毎日通っていた。

とにかく、何でも聴きたかった。
その中にジャニス・ジョプリンがいた。

ライナーノーツには、27歳で死んだ彼女の事。
歌詞と、その和訳を何度も何度も読んだ。

「ボールとチェーン」なんかは、聴くに耐えられなかった。
彼女の叫びを受け止めるには、ワタシはあまりにも幸せ過ぎた。

愛が、愛する人が・・孤独が、まだ理解などできるはずもなかった。

そんな時に、彼女の映画「ジャニス」の上演が始まった。

博多の、繁華街の片隅の小さな映画館。

観客はワタシを含めて、5人もいただろうか。

青く映し出された彼女のライブ映像と、彼女の私生活の断片。
人気のある歌手になったにも関わらず、故郷の旧友は冷たい。
映画は彼女の死んだ後に作られているから
観るものは、自殺の原因をその「孤独感」に結びつけがちだ。


ワタシは、彼女の歌は歌えないと思ってきた。
誰もが優しく歌える曲ではない。
「ジャニス・ジョプリン」の歌って、身を削るようなエネルギーが必要だと。



酒や薬、何かを分かち合う為のセックス。
逃げようと、掴もうと、必死だったのだろうか。

時代は半世紀近く経つのに、
愛に飢えた人は多い。

世の中に対応できずに薬を飲まなくてはならない人
恋人と一緒に居たくて、我が子を放置したり殴る母親
宗教の違いを認められず、暴走する民族...

いつまでも尽きない。


幸い、彼女には音楽と歌があった。
表現者としての道が開かれていた。

「ジャニス・ジョプリン」でいられた。
愛する人がいて、愛してくれた人もいたのだ。
恋愛は苦しいものだ。


そして、若くして亡くなってしまった。
惜しいけれど運命だった。



今、ジャニスを聴くと
「あなたも色々あったわね」と、思う。

ワタシも、イロイロありました。と、思う。

だから、やっと彼女のうたを歌えるかなと思っている。




髪を一時的にカーリーヘアーにしてライブをしていた頃。
妹が、

「おねえちゃん、あのCDの写真の人にソックリ」って言う。

え? ジャニスの事?
似てないわよ、一緒にしないでよ。
ワタシはあんな顔してない。

ジャニスには失礼だけど、そう思った。

ワタシには太陽みたいな光につつまれた未来があるんだって思っていた。

夏の日差しに似た、眩しくて 掴めそうで掴めない 輝ける未来が。