伊豆(南豆のやま)

主に伊豆の山や静岡県内の山々を紹介。「静岡の百山」完登、「賀茂の百山」選定、「海抜0m~天城山~海抜0m」百登完登

八丁池の主

2018年11月12日 12時23分34秒 | 晴山雨読

先日、開催された第37回 河津町文化祭(展示の部)で「わらしべ会」が作成した河津町に伝わる民話を絵本にした

作品が展示されていました。

数多くの作品が展示されていましたが、私がよく行く「八丁池」にまつわる作品が展示されていましたので 

「八丁池の主」をご紹介します。

今回「賀茂の百山」を執筆し印刷製本を行なっていたのでとても興味がありました。

絵本がもつ独特の堅い表紙に包まれ、しっかりと製本されていて絵もとても素敵です。

高い山々が折り重なる伊豆の天城山に、八丁池があります。

池の周囲が八丁あるところから、その名がついたといいます。

昔この池の近くに猟師が住んでいました。

山のようすにくわしい猟師は、いつもたくさんのえものを射止めてきて鼻高だった。

その猟師にはやさしい妻とさよというかわいい娘がおり、仲良くくらしていました。

さよが五つの時でした。

「おかあ、しっかりして」 「おめえどうした がんばれよ」

さよと猟師は一生懸命看病しましたが、病はだんだんおもくなるばかりでした。

心のやさしい妻は「おとう かわいいこの娘のためにも 生き物を殺すようなことはしないで」とくりかえしながら

とうとう死んでしまいました。

月日がたちさよは美しく成長しました。

さよは父親がいつになったら猟師をやめてくれるのかと いつも心をいためていました。

一方 猟師は死んだ妻のことばを心に残しやめよう やめようと思いながら 今日もまた猟にでかけるのでした。

秋も深まり八丁池のあたりは紅葉が一段と美しかった。

「あー今日はえものが一匹もなかったなあ」夕やみのせまった池の切り株に腰をおろし 一休みしていた猟師がふと見ると

向こう岸で大きな鹿が水をのんでいました。

「しめた 鹿だ」

ねらいを定め 引き金をひきました。

「やったぞ」近よってみると大きなお腹をした牝鹿でした。

その時 一人のきこりが通りかかり「やや これは八丁池の主だぞ おまえ 大変な事をしたな」

といいながら にげるように立ちさってしまいました。

「これはまずいことをしてしまった」と猟師は浮かぬ顔で家に帰ってきました。

「おとう どうした あまり顔が良くねえだ」「ううん なんでもねえだよ」

その夜夕食がすむとさよはきぶんがすぐれないといって早く床に入りました。

夜中

「おとう苦しいよ 助けて」という娘の声にびっくりした猟師が額に手をやると ひどい熱でした。

そのうち「キューン キューン」と押しつぶされたような声で 鹿の鳴き声を始めました。

「さよ さよ」と娘の名をよびながら 三日三晩看病しましたが 熱は下がりません。

十日

十日程たって やっとひと心地ついた時は よぼよぼにやせおとろえまるで老婆ようでした。

娘の看病につかれた猟師もほほがこけ 目もくぼみかつて山々をかけめぐた男とは思えない姿になってしまいました。

天城の山々が白くうっすらと薄化粧を始めたある日「あれは八丁池の主だ」といったきこりが通りかかると

池には老いさらばえた親子のなきがらが 浮かんでいました。

それからというもの毎年 この鹿が射止められた頃「キューン キューン」とすすり泣くような悲しい鹿の鳴き声が

人声が訴えるような声にきこえてくるということです。

河津町に伝わる民話を絵本にした「わらしべ会」の方々です。

現在の八丁池

 

 

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