夏の幽霊

2021-08-25 04:20:00 | 日記
泣き通しだった。

ここに初めてきたときは、
もう日が暮れそうで、
早く、早くって。

早くしなきゃ。
早く辿り着かなきゃ、、って。

地獄みたいな色のドブ川のあいだにある、
細い細い道を、
おどおどしながら、
くわばらくわばらって唱えながら
やっと渡って、
辿り着いた、やっと。

やっとだった。

季節がどんどん巡って、、


ドブ川だと思ってた地獄みたいな沼は
よく見ると銀河の色にも見えてきて
慣れたらだんだん綺麗に見えてきて。


ある夏の朝、
その何だかわからない
謎の沼に
一気に咲いてた。



今年の春は、桜も見ず、
今年の夏は花火も見なかった。
そんなもん見ようとも思わなくなってた。

音楽とか美術とか文芸。

コロナで閉鎖された図書館。
コロナで行けなくなった美術館。
コロナで歌われなくなった美しい歌。
自分の唯一の味方だと思っていた美しい何か。

それも私の世界から消えた。

いろんなものに見放された気がした。

その先に出会った、自分にお似合いのドブ川。
地獄みたいな色の、、(笑)



光なんてどこにもなくて、
深海の暗さに目が慣れた時、、、






幽霊に会った。





この色、白なんだよな?
ピンク、、?


昼なのに月夜みたいだ。




幽霊みたいな、幽霊色。


この花が一面に咲いているのを
車から見た時、涙が止まらなかった。


ここは地獄じゃなかったんじゃないか、って
地獄じゃないんじゃないか?って
まだ大丈夫だって

世界はまだ綺麗だ、って、、
最後に、この景色が教えてくれたような気がして





美しいものに、いつだって背中撫でてもらってきた。
背中を押されてきた。



今の自分にしか見えない花はある






もしかしたら、
今の自分にしか見えないかもしれない
美しい花。

美しいもの。

幽霊の色。










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