何日か前に、食べ物に含まれる、余計なものの味について考えました。
そのままなんとなくふわふわと考えを持ち続けたところ、
CMを見ていて、はっとしたのがビールです。
人工合成なんとか、とは違いますが、
食品の中には使わなくていいもの、というのが多々あります。
でも、あたりまえに使われすぎて
もはやなにも感じなくなっているものもあります。
このまえ何かで見たものでは、なにかのお菓子で
『普通は○○(洋菓子の一種)といえば、小麦粉となんとかと
なんとかとレモンを入れてで作るものですが、
このお店ではレモンを使わずに作っているのです』
というような文がありました。
具体名は忘れましたが、たとえばチーズケーキにおける
レモンだとでも思ってください。
わたしはあのレモンが大嫌いです。
チーズのほのかな甘みも香りも、
レモンが全部奪っていってぶちこわします。
赤ちゃんは赤ちゃんの甘いにおいがしますが、
そんなあかちゃんに香水をぶちまけて
臭いかたまりにするような悪逆非道ぶりです。
チーズケーキにレモンを入れるって、本当に意味があるのでしょうか?
作る人は、あのレモンがおいしいと思って、
入れて作っているのでしょうか?
入れたチーズケーキと入れないチーズケーキを食べ比べて、
レモンを入れたチーズケーキのほうがおいしいと心から思って、
あんなものを入れて作っているのでしょうか?
もしかしたら、レシピにあったからと
何も考えずに入れているのではないでしょうか?
ソフトクリームやアイスのバニラ風味。
あれも本当に入れる意味があるのでしょうか?
バニラ香料を入れたら、なにを食べてもバニラ風味です。
でも、牛乳ソフトなどのバニラを使わないアイスは
それぞれの牛乳の香りがします。
バニラなんて使わないほうが、格段においしいと思います。
それから、すこし方向性は変わりますが、
プリンのカラメル。
甘いものを食べたい人は甘いものを食べたいから
甘いものを食べるのであって、
甘いものを食べている途中で、苦くてえぐいものなど食べたくないのです。
苦いものがなければ甘いものなんて食べられないという人は、
ピーマンにプリンでもつめて食べればいいのにと思います。
そして、本題のビールにおけるホップ。
ビールのCMなんかでは、よくホップと麦! なんて叫びます。
でも改めて考えてみると、ホップはビールにおける
必要構成要素ではないのです。
わたしは基本的にお酒は嫌いです。
何が嫌かと言えば、アルコールの味とにおい。
なんというか、飲むとのどの上のほうから鼻の奥にかけて、
ねろんとくさいものがうねるような味とにおいがあります。
ついでに、心臓が一瞬ばくんと跳ねて、
気管が狭まるような息苦しさもあります。
それらをひっくるめて『お酒の味(お酒の持ち味)』として、
お酒の味が嫌いだと言っているのですが、
味がわからない人は、カクテルなどを勧めて言うわけです。
「ジュースみたいでおいしいよ」
と。
お酒なんてどれを飲んでも、喘息の前駆症状みたいなものを感じます。
たとえライオンのオリの前で、「猫みたいでかわいいよ」と
言われたところで、ライオンは猫じゃないからかわいくないです。
猫好きは猫が猫だから好きなのであって、
ヒョウだのライオンだの、殺す気まんまんのばかでかい獣なんて
いくらねこ『みたい』だってかわいくないのです。
お酒もそれと同じ。
さて。そんなわからない人がさらにもてはやすのが、
もどきビールと呼ばれる、ビール風味飲料。
アルコールもない、ただの苦い液体ですが
飲んでる人にどうなのか感想を聞いてみたことがあります。
すると、「ビールみたいでおいしいよ」と。
そのときはそういうものかと突き放して受け止めましたが、
改めて考えてみると、ビールみたいでおいしいというのは、
『ビールみたいな味がする』という意味です。
ビールみたいなとはなにかと言えば、
アルコールのない炭酸と、苦い味。
アルコールのない炭酸はただの二酸化炭素で、
苦い味は……ホップのようなものです。
日本酒は、米を発酵させて作ります。
そのままだったら『日本酒』。
日本酒にハブを入れると『ハブ酒』。
梅を入れると『梅酒』。
ビールは、麦を発酵させて作ります。
そのままでも『ビール』ですが、
ホップ出汁を加えても『ビール』。
もどきビールがおいしいという人は、
どうやらビールのホップ風味を、『ビール』ととらえているとわかりました。
でも、ハブの丸焼きを食べて「日本酒みたいでおいしい」、
梅を食べて「日本酒みたいでおいしい」というのが
ずれているのと同じように、
ホップのようなものを口にして「ビールみたいでおいしい」と言うのは
やはり内容がずれています。
その味は『ホップビール』の味であって、
『ビール』の味ではないのです。
梅を食べて「梅酒みたいでおいしい」というのならともかく、
「日本酒みたいでおいしい」というのは違うのです。
……とまあ、そんなこんなを考えて思ったのですが、
あまりにビールは『ホップと麦』の印象が
強くなりすぎていないでしょうか。
ビールと言えばホップというような結びつきは
もはやあたりまえすぎるほどになってしまっている気がしますが、
ビールを作る人は、ほんとうにホップがおいしいと思って
ビールに使っているのでしょうか?
わたしはホップの苦味も風味も嫌いなので、特に思いますが
当たり前と思っているホップを、ビールから引き離したら
ビールがおいしくなる可能性はあるのではないでしょうか。
ホップはビールのどこの段階で入れて
どんな役目があるのかわかりませんが、
たとえばホップをまったく抜きにした、『純ビール』とか
薬味のしょうがを替わりにいれた『ジンジャービール』とか
同じくわさびを入れてみた『わさビール』とか
ハイビスカスの花などをいれた『南国ビール』とか、
いろいろな種類やその土地ならではのもので香り付けをした
地ビールなどのものがもっと増えればいいのにと
個人的には思います。
くわえて。
酒造業界がギルドでも作って、ごく小さな酒蔵のものでも登録して、
日本の酒一覧サイトでも作ってくれたら、見てるだけでも楽しいし、
旅行の前にお土産として選ぶ楽しみもあっていいんですけど。
常識をこえたところにある新たな可能性。
ビールはもっとおいしくなっていいと思います。