人に歴史あり…母は語る

自宅リフォームのために、長期実家滞在中のワタクシです。

3年前にも2ヶ月くらい実家に泊まっていたことがありました。それは父が急逝したから。

その時はやらなくてはいけない事が次から次へと押し寄せてきて、人の出入りも多かったし、母も元気が無かったし、今回とは少し様子が違います。

（そういえば、今回の滞在中に懸案だった父の納骨が無事に終わりました）

それから3年経っていることもあり、

先ずは母の老化がやはり進んでいることに気づいています。

太極拳や朗読サークル、遠方への旅行など、母の年齢にすれば驚異的な活動量をこなしています。

しかし、「疲れたわー」と言うことが多くなっていました。

それから短期記憶や認知力の低下です。

かつての母と比較すると、時々「え？」と思うほどわからなかったり忘れていたりするので、わたくしも戸惑います。

次に、短期記憶が心許なくなってくるのに反比例して、昔々の記憶がたくさん蘇っている気がします。

「今」の事や「直前」の事への対応が難しくなるから？不思議だなぁと感じております。

今滞在中は、これまで聞いたことがなかったような、幼少期の出来事をたくさん話してくれます。

父親（わたくしの祖父）の転勤に伴って、何度も転校した先々の事。

戦時中の疎開先の事。

女学校時代のことや独身時代のちょっとした恋愛話。

へぇ！というような話がいくつもあり”人に歴史あり”を目の当たりにしています。

心に残った話は、やはり戦争に関することでしょうか。

母の両親（祖父母）にはそれぞれ兄弟姉妹が数名いたのですが、どちらの兄弟も戦争に行っています。

祖父は利き手の指先に軽い障害があったそうで（実生活ではほとんど支障はないけれど）、銃を扱うには不適合？だったのか、召集されずに終わっています。

わたくしが本当に幼かった頃（幼稚園とか？）に、その手を見せてもらったのですが、幼すぎたのかよくわかりませんでした。

祖母の兄弟は二人とも終戦後に帰ってきています。

しかし、祖父の兄弟は二人とも南方で戦死してしまいました。もちろん遺骨も帰ってきませんでした。

祖父はわたくしがまだ小さい頃に亡くなってしまったので、幼い頃から祖父母の家の仏壇に手を合わせることが多かったのですが、祖父の遺影の隣に知らない若い男の人の写真が置いてあるのを「誰だろう？」と思っていたのを覚えています。

今ならわかりますが、出征時に撮った軍服を着た写真です。

見慣れぬ服を着た白黒の写真は、幼心には少し怖く感じて、その写真について誰かに問うたことは無かったように思います。

その、祖父の兄弟のうちの一人が出征するときにひどく泣いたそうなのです。

当時は召集される事は”お国のために働くこと”であり、目出度いことです。喜ぶべきとこと（表向きは）されていたので、泣くなんてとんでもない事だったのに、人目もはばからずに大泣きをした祖父の兄弟は戻ってきませんでした。

泣いている祖父の兄弟を誰も咎めずに、様々な想いで見送った人。そして当人。

幼い日、内心怖がっていた写真の、まだ幼いような小柄な若者に対して、申し訳ないと感じながらその話を聞きました。

次に祖父の墓前にお参りするときには、その方の事も思って祈ろうと思います。

さて。

母は幼い頃、国鉄マンだった祖父の転勤に伴い、あちこち転校していました。

その一か所（2年間くらい過ごしたのかな？）に出かけてきました。

そのお話はまた今度。