青空文庫「イワンの馬鹿」
トルストイが仏教(浄土真宗)の信徒だったはずがないと思いますが、このイワンの言動は「妙好人」を彷彿させます。
とりわけ、国王になってからのやりとり
そこへ大臣の一人がやって来て言いました。
「金がないので役人たちに払うことが出来ません。」
「いいとも、いいとも。なけりゃ払わんでいい。」
とイワンは言いました。
「でも払わないと、役についてくれません。」
「いいとも、いいとも。役につかないがいい。そうすりゃ、働く時間がたくさんになる。役人たちに肥料(こやし)を運ばせるがいい。それに埃(ごみ)はたくさんたまっている。」
そこへ人民たちが、裁判してもらいにやって来ました。そして中の一人が、言いました。
「こいつが私の金を盗みました。」
するとイワンは言いました。
「いいとも、いいとも。そりゃこの男に金が要ったからじゃ。」
そこで人民たちはイワンが馬鹿だと言うことに気がつきました。そこで妃はイワンにこう言いました。
「人民どもはみなあなたのことを馬鹿だと申しております。」
するとイワンは言いました。
「いいとも、いいとも。」
などは妙好人そのものといえるでしょう。