小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第512回小麦句会結果(1)

2023年11月08日 14時02分17秒 | 1日句会

あがったり、さがったり、気温が落ち着かない。

終末からまた気温ががくんとさがりそう。

妙に忙しい日々が続いて、気がつけば、まわりは紅葉が広がり始めた。

紅葉を見にどこかに行きたいけど。

なかなか出かけられない。

 

★結果発表★  2回に分けて

 

祈りの島は半農半漁朱欒熟る     アゼリア

○(アネモネ)「朱欒熟る」いいですねえ。

〇(珠子)人間の生活の原点でもあります。 

◎(春生)雰囲気が出ました。「朱欒」が効いています。

○(楊子)ザボンという海外からきた柑橘類が祈りと相まって落ち着いた感じです。「熟るる」か「熟れる」としたがいいと思いました。

◎(餡子)祈りと言うのが、いろいろに取れますが、矢張り隠れキリシタンの土地かなと思いました。今は隠れずとも良し。地域に根ざし生きている村の様子が良いですね。長崎に行ってきたばかりなので余計にこの景が胸に沁みました。    

 

コスモスの中身を問う人無かりけり    ちせい

◎(ちせい)花はあからさまなのですが真理を問う姿勢が好もしいと思いました。

 

コスモスや現しの果ての薄明かり  卯平

○(楊子)果てはどこも薄明かりかもしれません。コスモスの薄明かりくらいがちょうど良い。

 

秋桜やヒッチハイクの指揺るる    餡子

○(泉)上手く車が止まってくれると良いですね。

○(幹夫)手を触れてみたくなる道ばたのコスモスだ。共感です。

○(仙翁)秋のヒッチハイク、いいですね。

 

秋天へ出て行く舳先鳶の笛    珠子

〇(瞳人)無事、帰って来いよー

○(卯平)景が見える。鳶の笛が上手い。おそらく実景に近い景であろう。川端茅舎の「しんしんと雪降る空に鳶の笛」が下敷きかも知れない。若干出来すぎの感あり。

○(楊子)「鳶の笛」への展開がいいです。視覚と聴覚が詠みを広くしています。

◎ (多実生) 航跡を長く引き外海へ、鳶の笛が快晴の秋空を想起させ、とても明るく心を弾ませ発展的イメージが膨らみます。

〇(まきえっと)情景が目に浮かびます。

〇(ちせい)海へ繰り出せばカモメや鳶が待って居る。秋天の高さが鳥籠に見えてきます。

◎ (アゼリア) 秋天へ出て行くー晴れ晴れとした気持ちになりました。

◎(宙虫)景色の広がりと耳から伝わる空気感がいい。

 

被災地の川健やかに薄紅葉    あちゃこ

〇(カンナ)映像が浮かびます。

 

ドローンの越える県境秋ざくら    あき子

○(泉)ウクライナの戦争で、ドローンは一躍有名になりました。

〇(珠子)ドローンと思われるテレビ映像の多いこと。未知の世界がこのスピードで暴かれていくのはいいことなのでしょうか。今、コスモスが美しい。 

〇(春生)地球上空は一枚ですね。県境も国境もありません。

○(楊子)県境を上からみてみたくなりました。県境の一面の秋ざくらは眩しそう。

〇(めたもん)ドローンからの視点が新鮮な「秋ざくら」です。ドライブに出掛けた道路沿いの景でしょうか。 

◯ (アゼリア) 県境も国境もドローンは越えて行くのですね。善用のみにお願いしたいですよね。

 

海辺まで背高泡立草の花    アネモネ

○(仙翁)本当に、泡立ち草は蔓延ってきていますね。

 

鳥たちの空へ背高泡立草    幹夫

○(あちゃこ)鳥と泡立草の互いに呼応する自然の姿。

〇(珠子)「鳥たちの空へ」が魅力的です。

〇(あき子)限界を知らない泡立草は空へ。すっきりした句の姿が泡立草らしい。

〇(春生)背高泡立草は空を独り占めしています。それほど高く育ちます。 

〇(宙虫)多くを言わずに空と地上を繋いだ。

 

コスモスや平和な日本に感謝して   泉

○(アネモネ)つくづくそう思います。

〇(藤三彩)いろいろ問題はある国だがまあまあそこそこ暮らしてゆける国ではある

◯(道人)こういう気持ちはとてもよく分かる。ウクライナやパレスチナに何も出来ないもどかしさ。

〇 (多実生) 戦争の時代を生きた私は切実です。

 

淡々と放出それから秋の海     藤三彩

○(泉)「淡々と放出」するしかないのですが、風評被害が心配です。

○(アネモネ)ほんとこれでいいのかなあと思います。

○(餡子)汚染水排出・・検査の結果無害との報告ですが、地球を汚している事に変わりはありません。「淡々と」が効果的です。    

〇(まきえっと)確かに淡々ですね。

 

野球少年団が駆ける紅葉のうらおもて   宙虫

〇(まきえっと)海と野球少年団って合いますね。

◯ (アゼリア) 爽やかな風が吹き抜けて行くようです。

 

濡れ衣を着せられた海斑雲   カンナ

 

浮雲へ枝の先よりもみづれる     道人

○(あちゃこ)静かな自然の営み。

〇(あき子)「浮雲へ」が「もみづれる」と響きあって、独特の雰囲気を感じました。

〇(カンナ)上手い句だと思います。

 

秋桜嘘つくことの怖き空    まきえっと

○(アネモネ)そんな空の色に得心です。

○(あちゃこ)美しき秋の空。中七に共感。

〇(藤三彩)天に唾するのはやめよう

○(楊子)逆の嘘つかぬ詠みもできかもしれませんが、これもまた納得の詠みです。秋桜が下句を和らげています。

◎(めたもん)「秋桜」と澄み切った空。確かに嘘をつくことが怖くなるようなものを感じますね。

〇 (多実生) あれ程晴れると嘘はつけません。

〇(宙虫)秋はたしかに・・・。

 

世迷い言捨てて没入できる秋    多実生

〇(ちせい)集中できる秋。世迷言が消えて、空きが大きな器に見えてきます。

 

(選外)(卯平)世迷い言を捨てると言う措辞はなるほどとは思う。但し「没入」する対象をこの句から観賞するには至らない。句意としては「○○の秋」であると言う事であろうか。

 

船にしよか電車にしよか広重忌    春生

◎(卯平) 特選を迷った句。上五中七の景から広重の有名な浮世絵へワープ出来る。その時空を超えた感覚に最終的に特選とした。

○(餡子)今の世に広重がいたら、大喜びでこんな風に思うのでしょうね。そして、日本千景等を、残したでしょう。    

〇(宙虫)人間が足を必要とすることがなくなる時代が。そんなこと考える。

 

熊鈴と熊鈴出会う紅葉晴れ   めたもん

○(泉)今年は熊の被害が甚大です。夏の猛暑のためでしょうか。

〇(瞳人)今年は異常ですね、怖い紅葉狩り

◯(道人)情報化社会の時事句。全国至るところに熊の出没情報。熊がいないところので紅葉狩でもつい熊鈴をつけたくなる。つい先日も....

〇 (多実生) 山で熊よけ鈴の人とのすれ違い経験は有りますが、私の使用経験は無しです。

◯ (アゼリア) 以前山男から山で出会う一番怖いのは人と聞きましたが、熊が一番怖そうです。

○(宙虫)今年の秋を象徴する句。

 

罪科を捨て去りに行く秋の海    仙翁

〇(瞳人)キッシーさんみたいですね

 

(選外)(卯平)選を迷った句。「罪科捨て」までは許容出来る。しかし「捨て去る」では「罪科」を発見した位置が陳腐ではないか。「秋の海」でも「冬の海」でも「夏の海」でもそれなりに観賞出来る。「春の海」となると少々屈折した詠み手の心情に入り込まざるを得ない。

 

道なりに風を導く秋桜     楊子

○(アネモネ)コスモスにはやはり風。

○(幹夫)道なりに野生化して生えるコスモスが美しい。コスモスには風が似合う。優しい風だ。

○(卯平)素直な句。平凡であるが故に惹かれる句。例えば「道なりを導く風や秋桜」であればまた別の趣があるかも知れない。

〇(あき子)無理がない力まない秋桜の姿が、的確に伝わってきます。

○(仙翁)コスモスは揺れているのが自然ですね。

 

憂きことを誰につたへむ枯蓮    瞳人

〇(めたもん)季語「枯蓮」への独り言のような句。「憂きこと」の中味は老いについてでしょうか。

 

(選外)(卯平)上五中七は常套措辞。ましてはこの季語では上五中七の景が消えてしまうのでは。

 

有り余る水と電気や秋高し   泉

○(餡子)この句のようだと良いのですが・・・。パロディーですね。   

 

(選外)(道人)水道代も電気代も随分高くなった。「秋高し」のアイロニー。

 

秋桜の多彩多様な宇宙かな     仙翁

 

(選外)(卯平)秋桜(コスモス)は宇宙であろう。確かに秋桜は多彩多様だ。

 

咲き満ちて西の虚子忌の秋桜   アネモネ

 

(選外)(卯平)西の虚子忌の絶対性が伺えない。吟行句としては成り立つかも知れないが、その場合でも少々この季語に対する上五と下五は緩いのではないだろうか。

 

秋風をゆく亀に名をつけにゆく    宙虫

〇(瞳人)泥亀ですね、きっと

◎(あちゃこ)こよなく自然を愛する作者の姿。亀が効いています。

◯(道人)こういうナンセンス俳句も楽しい。

〇(春生)詩情豊かな世界ですね。  

〇(ちせい)亀も人も動いている。「ゆく」の繰り返しに亀と人の一体化が感じられます。

 

(選外)(卯平)面白い句で選を迷った句。秋風と亀から何と観賞するか。この二つを中心に措辞を多様に提示されると、鑑賞者としては更に読みを深める事ができた。惜しむらくは「名をつけにゆく」と言う結論の言い切り。鑑賞の膨らみを排除している点が勿体ない。

 

沈黙に溶けぬひと言ちちろ鳴く   めたもん

○(卯平)不思議な句。「沈黙に溶けぬ」をどう読み解くか。「沈黙を溶けぬ」であれば二つの意味。沈黙からお喋りに転じたと言う意味とある「ひと言」で沈黙が続いていると言う意味。ここでは「沈黙に」。この「に」で沈黙の深さが伺えると鑑賞出来よう。「沈黙を解かざる言葉ちちろ鳴く」「沈黙をほどく言の葉ちちろ鳴く」でも少々複雑な句の構成かも知れない。迷いながらの選。

〇(カンナ)上手い句だと思います。

 

つづく

 



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1 コメント

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Unknown (瞳人)
2023-11-09 09:55:31
命の果ての薄明り、というのが何処かでありましたが、どこでしたかしら。
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