花粉はスギからヒノキに。桜も満開ですね。
兼題:永
春菊の青きを噛める永久歯 幹夫
水温む長き廊下の永平寺 泉
○(幹夫)引き締まる永平寺の長い廊下・・・季語「水温む」がいい塩梅に詠まれています。
○(アネモネ)いいですねえ。いかにも永平寺。
◯(ルカ)永平寺、大好きな場所。春が待ち遠しい場所
〇(藤三彩)曹洞宗本山は雪深いのでしょう。
○(あちゃこ)触感を通して、永平寺の冷たさを残す春のはじめが蘇りました。
〇(多実生)埃一つない廊下に修行僧の厳しさが見え、水温むにほっとされている事でしょう。
◯(アゼリア) 映像が浮かんできます。水温むーでほっとします。
寛永の結び目ほどく古雛 ルカ
○(敏)いわゆる古代雛は、18世紀半ばに「古今雛」としてそれ以前に作られていた古雛を模して作られたといいます。寛永は17世紀前半ですから、まさに古雛のたたずまいが今まさに現れてきたことでしょう。
〇(宙虫)いろいろな思いがこの結び目にこもっているようです。
永き日を永きとしらず夕雀 道人
〇(瞳人)知っているのは人だけですねえ
〇(仙翁)スズメが春を感じ取っているのかいないのか。
○(ちせい)季語は「永日」。夕雀の可憐さがほの見えます。
永き日に入らむ侍二匹がな 吾郎
変哲のハモニカ真似る日永かな 瞳人
〇(藤三彩)変哲が小沢昭一さんの俳号と思うのでございます。「ハーモニカブルース」を吹けたらいぶし銀。
(選外)(道人)俳優小沢昭一、俳号「小沢変哲」、ハーモニカの似合う、正に昭和そのもののような方でした。
永吉の真似する男春の風 餡子
○(泉)何となくユーモラスな俳句だと思います。
吹き返す春の嵐や永田町 敏
○(泉)最近は安倍内閣への逆風が強いですね。
(選外)(幹夫)森友学園書き換え問題・・・予断許さない近頃の国会攻防です。果たして証人喚問では何が語られるのでしょうか。
水口に急ぐ水音風光る アネモネ
◎(多実生)米作りの基本で、米の品質は水の良さです。
○(敏)春田に水を引き入れるために畦に穿たれたのが水口。そこを目指すかのような水音。光る風が春を呼んでいるようです。
〇(まきえっと)まだ冷たい水が勢いよく流れていて、透明感を感じます。
永いこと会わずの友と花見酒 多実生
永き日や鍬を担いだ老農夫 仙翁
○(泉)この様な西洋の絵画を見た記憶があります。
◎(アゼリア)青木繁の漁夫の絵の農夫版のようなー絵になっています。
桜散る永六輔の深夜便 藤三彩
〇(瞳人)うん十年、深夜便、聞いていますけど、永六輔、うーん
○(ちせい)季語は「桜」。固有名詞の出し方は難しいと思いますが、適所を得たと思いました。
(選外)(道人)永六輔の俳歴は、先の小沢昭一と同じ句座「東京やなぎ句会」の創業メンバー。俳号「六丁目」
永き日の生春巻きに透ける海老 珠子
○(アネモネ)これは美味しそう。
○(餡子)25年くらい前に、初めてベトナム春巻きとかを買ってきて、油で揚げようとしたら娘に驚かれたのを思い出しました。永き日のできごとでした。
◯(道人)「生春巻き」が良い塩梅。
◯(アゼリア)取り合わせが絶妙、美味しそうです。
◎(宙虫)生春巻きの持つ質感と季語が水を含んでいい感じです。そして海老の赤が浮かびます。
春泥を永遠へ蹴飛ばす九段下 あちゃこ
○(ちせい)季語は「春泥」。東京都千代田区の地名に少し惹かれました。
久能山永遠なれば蝶の舞ふ ちせい
劇場出うつつに返る日永かな アゼリア
○(幹夫)上句~中句に納得です。眩しい外、明と暗の対比が季語「日永」で上手に詠まれています。
〇(瞳人)どんな演しものかしら
永き日のピアノに映る己が顔 春生
◎(幹夫)窓から晩春のおだやかな陽光を浴びながら黒いピアノの蓋が開けられた。顔が映るほどぴかぴかに拭かれた白と黒の鍵盤を叩く作者・・・「永き日」の季語が心地良く詠まれている。
〇(藤三彩)熊穴を出でるよう。どんな顔をしているのかな。
〇(珠子)決して爽やかな若い顔ではないのでしょう。季語がアンニュイ感を出しています。
沈丁花言葉が水を含む朝 宙虫
◯(吾郎)乾いた言葉は傷つけやすいのです
○(餡子)言葉が水をふくむとは、良い状況と取りました。しっとりした感じでしょうか。沈丁花のあの白くてすべーっとした感じ。
◎(仙翁)言葉が水を含む、面白い表現ですね。春らしい。
〇(まきえっと)「言葉が水を含む」という切り取り方が良いですね。
恋猫の永遠を誓って鳴らす鈴 まきえっと
○(あちゃこ)まさにウェディングベル。
永遠はなし醍醐味忘る初雲雀 瑠璃
テーマ:木
剪定の枝の強がり煙管吸う まきえっと
◯(吾郎)実際枝を払ってみると、その頑固さに悩まされます。しかし植物は強い!
(選外)(藤三彩)高鋏というより足場を確保した鋸切除にするのかを考え中のひとコマ。キセルは古くてやりすぎの感じ
はくれんや梢のうえの昼の月 道人
○(アネモネ)絵画的で景が鮮明に浮かんできます。
三月の林は声を淡くする 餡子
◯(ルカ)詩的ですね、
◎(あちゃこ)少しばかりの温もりと芽吹きがそちこちに感じられる林と淡い声の取り合わせがぴったりです。
〇(仙翁)声が淡くなる、そんな感じもしますね。
◯(道人)3月の林は、花の色や葉の緑など視覚だけでなく「声を淡くする」にも納得です。
◎(まきえっと)きれいですね。芽吹きの頃をこうやって詠むのは素敵です。
山椒の芽胡麻擂る植木等ごと 藤三彩
指ほどが九百と五六白木蓮花 瞳人
春風に木々の葉きらり笑うかな 仙翁
◎(ちせい)季語は「春風」。「笑う」には花々が咲き誇るニュアンスも含まれていると思いました。
接木師の耳に両切り煙草かな 敏
◯(吾郎)やはり煙草は似合うのだなぁ──植木職人とか接木師は
〇(珠子)接木師という言い方をするかはわかりませんが、接木を仕事としている方はいるはずです。昔、父が吸っていたのはむろん両切りの煙草、卓の上でとんとんとしてから銜えていたのを思い出します。耳に挟む煙草は両切りが似合います。
〇(多実生)接げ木は今がその時期で、こんな姿も見えそう。
◯(アゼリア)地下足袋の職人肌、煙草にもこだわりがあるんですね。
〇(宙虫)今では懐かしい景色になってきました。
(選外)(藤三彩)接ぎ木の果樹はあるが、この句の場合は盆栽、庭木の感じ。煙草はイコイかな。
百町歩田畑の村に辛夷咲く 多実生
雪解やコーヒー熱きログハウス 泉
○(幹夫)雪解に飲むブラックコーヒーが美味しく、ログハウスという場所設定がいい。
◎(アネモネ)まったり感があってお邪魔したくなるような。
○(敏)木製の屋根からのしずり音を耳にしながら、熱い珈琲を口にして近付く春を実感しているのでしょう。まさに至福の一時です。
天草を望む桜木海の青 瑠璃
〇(藤三彩)天草砥石(白)を入手した。ブラタモリ的な地形観察の天草旅も面白そう。
〇(多実生)天草五橋はこんな時期に行きたいものです。
〇(仙翁)情景が浮かびます。綺麗ですね。
林を抜ける道見当たらぬ藪椿 宙虫
湯の谷のうす紫に芽吹き山 アネモネ
○(泉)絵葉書のように美しい俳句だと思います。
○(瑠璃)これから華やかな春が来て。山々の花も咲くうきうき感が感じられます。
〇(珠子)母校の校歌を思い出しました。「駒ヶ岳~朝日~に映えて~紫に~明けゆ~くところ~」私の記憶では山脈がうす紫に煙るのは秋ですが、芽吹きの季節も複雑な淡い色に煙ります。
匂い立つ堀の水色木の芽風 あちゃこ
◯(ルカ)木の芽風がきいてます。
馬酔木咲き少女の日々のよみがへる アゼリア
○(アネモネ)上五が「花馬酔木」なら特選でした。
○(瑠璃)人は音楽やある風景で色々な場面がフィードバックします。作者は馬酔木で少女の日々がよみがえったのですね。甘酸っぱいおもいででしょうか?ロマンチックですね。
(選外)(道人) 馬酔木には少女がよく似合う。
百人の園児らの声木の芽山 春生
○(アネモネ)どんな景かは不明ですが「百人の園児ら」がいいですね。
○(ルカ)既視感はありますが、やはり声が聞こえてきていいですね。
○(敏)芽木に溢れた山中にこだまする園児らの声。生き生きとした一景です。
○(ちせい)季語は「木の芽」。声の概数だと思いますが、山が笑って居る様な。
閉じられし木箱の匂い雛の家 ルカ
◯(吾郎)嗚呼、何世代にも渡って継がれるものの風情
○(瑠璃)木箱にしまわれた雛人形を雛の家と表現したところが効いています。
木々に日が当たれば春の目覚めかな ちせい
○(泉)春が来た、という感じが良く表現されています。
蘖や百年先へ送る負荷 珠子
◯(吾郎)自分の世代で残務処理ができないエネルギーは要らない
◎(瑠璃)私たちは百年先の未来のことをもっと考えなくてはならないと自戒の念を持ちました。
◎(敏)この負荷を、廃炉にしても消滅しない放射能汚染ととれば、そんな土地にも芽生えた蘖の瑞々しさが奇跡のように思われてなりません。
◯(アゼリア)子供達を見ると心が痛みます。
蝌蚪住まう庭木の際に生ますとか 吾郎
〇(宙虫)もう少ししたら、にぎやかになります。
鶯の木々に睦める夕まぐれ 幹夫
詠題
ぽっぽやの表情難し春立ちぬ 瑠璃
持ち遊び可能な記憶涅槃西風 まきえっと
○(餡子)記憶は自分の頭の中に有るのですから、持ち運びは可能でしょう。拙い事は捨てて良い記憶のみ持ち歩くのがいいのですね。
甘やかな春日てくてく日本橋 あちゃこ
○(幹夫)お江戸日本橋七ツ立ち・・・行列そろえてあれわいさのさ♪なんて、春日がいい気分で詠まれています。
〇(宙虫)リズム感がいいです。日の匂いも伝わる。
〇(まきえっと)日本橋に勤めていた者としましては、良い街ですよ。
検査果て花菜土手行く路線バス アゼリア
誤配信蹴飛ばす兜太二月尽 瞳人
(選外)(藤三彩)まだ生きているのに裏を取らず殺してしまった文屋は更迭されたそうだ。ブンヤを左遷ス死セル荒凡夫
甲冑の昂ぶる構え花樒 珠子
○(敏)いわれのある展示甲冑の傍に活けられた樒の花。その可憐な白さが、今にも敵を前にしたかのような武人の昂ぶりを鎮めているかのようです。
荒海や海女の真白きふくらはぎ 泉
○(幹夫)リズム佳し。桶を浮かべて潜る海女さんと遠くは日本海・・・双方の眩しい景がよく思い浮かびます。
○(あちゃこ)最近では、ウェットスーツを着ていますが。ふくらはぎを敢えて真白きと強調して、リアル感が出ました。
◯(アゼリア)美しすぎる海女を思い出しました。海のお仕事でも日焼けしないのですね。
なぜ石を持ったのだろう花いばら 宙虫
◎(吾郎)五月革命が想起される──
◎(珠子)当季でないのが気にはなりましたが、この感覚にはこの季語しかないと思われたのでしょう。無意識に石を掴んでいたのですから、勝手読みですが、「春風や闘志いだきて丘に立つ 虚子」の、「ある日の弱気版」のような気がしました。
〇(多実生)石を投げるのも遊びの一つでした。
◎(餡子)金子兜太の「霧の村石を投らば父母散らん」をふっと、思い出しました。花茨の季語も的確。
◯(道人)少年の頃の後悔と「花いばら」の構成の妙。
〇(まきえっと)子供の頃は舗装されていなかったので、何かと石を握る機会が多かった。ちょっとしたことでも、武器になりました。
桜咲く華燭あれから五十年 多実生
〇(瞳人)ああ、もう、と深く思うばかりです
春型ね日没墓地に寝たがるは 吾郎
◎(泉)「春型」ですか。ユーモラスな俳句(回文)だと思います。
〇(あちゃこ)寝姿が春型?日課?
しかも、墓地?日暮れに亡き人を偲んでいるのですね。設定の発想がすごい。"
〇(珠子)墓地に寝たがるのは墓地を縄張りにする野良猫ととりましたが…。猫にとっても春が一番いい季節でしょう。
○(餡子)春型なんですか。冬型はどうなんでしょうか。面白い分類です。
◯(道人)もし夕闇の墓地に寝るなら春ですね。夏・恐、秋・寂、冬・寒。
〇(まきえっと)他の季節のことも考えてしまいました。
雛の笛失せて留めて手のかたち 敏
〇(仙翁)確かに、手が元の形に残っているのはよく見ます。
男装の麗人河津桜かな ちせい
◎(藤三彩)男装の麗人=川島芳子の構図。早咲きの河津桜が華ある男木とも見えるという見立てなのかな
着水や帰らぬことを決めた鴨 餡子
○(瑠璃)帰らぬことを決めた鴨。新しいステージの門出と古い馴染みの場所との決別と鴨の心意気を切なく感じます。
〇(瞳人)うーん、力強く決めたのだ
〇(仙翁)鴨の覚悟でしょうか、こころの隠喩でしょうか。
◯(道人)残る鴨に託した、望郷の念と異郷で暮らす決意に共感です。
(選外)(ちせい)季語は「鴨」。鴨は冬の季語ですが、ちょっと空想っぽいと思いました。空想がいいと思う事もありますが、今回はとれませんでした。
昼寝の猫いて春の日の庭仕事 藤三彩
まん丸く膨らんでゐる山桜 春生
○(瑠璃)桜の華やかな登場を待ちわびる気持ちが伝わってくるようです。
〇(多実生)染井吉野より二週間位後でしょうか。今や雑木山の王者は山桜です。
○(ちせい)季語は「桜」。花に着目したか、樹勢に着目したか分かりませんが雰囲気があると思いました。
鳥の恋盆栽村の定休日 アネモネ
◎(ルカ)定休日に目をつけたところがいいですね。人間のいない場所で鳥たちはどうしてるのか想像が膨らみます。
〇(藤三彩)鳥のつがいは忙しく、美術館か展示場のような盆栽村は静まり返っているというアンニュイな句。でもなぜ盆栽?
○(あちゃこ)盆栽村はどこに?せっかく来たのに…でも、鳥の恋が癒してくれました。
母の息かたちうしなう紙風船 ルカ
○(餡子)紙風船に息を入れる句はたくさん見るが、形を失うは意外な感じ方だと思いました。
◎(道人)中七が何とも味わい深い。
密かに土蠢いて涅槃西風 仙翁
誘惑のない道かしらシクラメン 道人
〇(珠子)ホントは誘惑を期待していますね、この方は。 シクラメンの種類は豊富で選り取り見取りですよ!
〇(宙虫)何か物足りない道。素知らぬ顔のシクラメン。
料峭の一本松に茜さす 幹夫
◯(ルカ)色々な思いが沁みてきました。
広島は、さすがに暖かくなって来ました。花見も始まった様です。もう四月ですか。一年が経つのは早いですね。私の誕生日も近づくし・・・?