毎日新聞2007年4月27日朝刊での、ミャンマー・北朝鮮国交回復に関する記事は以下。興味深かったのは、ラングーン事件の主犯としてヤンゴンの刑務所で服役中の元北朝鮮工作員についての報道があったことだ。カン・ミンチョル受刑者がいまだに24年間生きつづけて服役中だったことは知らなかった。
北朝鮮:ミャンマーと国交回復 ラングーン事件、政治決着 受刑者身柄で火種も
【北京・堀信一郎】ミャンマーとの26日の国交回復合意により、北朝鮮は韓国閣僚らを暗殺したラングーン事件(83年)を政治決着させた。同事件を受けて断交されたミャンマーとの関係を改善することで、北朝鮮には、米国による「テロ支援国家指定」の解除に向けた環境を整備する狙いがある。だが、ラングーン事件の主犯としてヤンゴンの刑務所で服役中の元北朝鮮工作員、カン・ミンチョル受刑者の身柄の取り扱いは決着していない。韓国の一部にはカン受刑者の身柄引き渡しを求める声もあり、韓国、ミャンマー、北朝鮮3カ国の火種になる恐れがある。
ラングーン事件では韓国の全斗煥(チョンドゥファン)大統領(当時)一行がラングーン(現ヤンゴン)のアウンサン廟(びょう)を訪問中に爆弾テロが発生し、韓国の副首相ら21人が死亡した。ミャンマーは北朝鮮工作員3人の犯行と断定、北朝鮮との国交を断絶した。
工作員のうち、カン受刑者は犯行を自供したため死刑にされず、24年間、服役している。だが、北朝鮮はカン受刑者を含む北朝鮮工作員の存在を認めず、爆弾テロを韓国側の自作自演と主張してきた。国交回復によってカン受刑者が送還されることになれば、北朝鮮は受刑者が実行犯だったことを認めることになる。韓国ではカン受刑者の身柄を引き受け、事件の真相を解明しようという動きもある。
タイを拠点にするミャンマー関係情報誌によるとカン受刑者は「韓国、北朝鮮のどちらにも行きたくない」と話しているという。これは韓国に送られれば、爆弾テロの罪に問われる可能性があり、北朝鮮に戻っても「罪を自白した裏切り者」と扱われる恐れがあるためだ。
世界で最も貧しく、国際社会から孤立している北朝鮮とミャンマーの国交回復は、天然資源や食糧などの貿易を促進するためという側面もある。
だが、核問題を抱え、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の資金問題解決が遅れている北朝鮮にとっては、ミャンマーとの復交は米国との関係改善のためのステップという見方が有力だ。
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■北朝鮮・ミャンマーを巡る近年の動き■
1983年10月 ラングーン事件発生
11月 ビルマ(現ミャンマー)が北朝鮮工作員3人の犯行と断定、北朝鮮と断交
12月 ビルマが工作員2人に死刑判決。北朝鮮がビルマ非難声明を発表
00年 7月 北朝鮮が東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に参加
06年春 北朝鮮とミャンマーが事務レベルで国交回復に合意
10月 北朝鮮が地下核実験実施
07年 4月 北朝鮮の金永日外務次官がヤンゴンで国交回復合意文書に調印
北朝鮮:ミャンマーと国交回復 ラングーン事件、政治決着 受刑者身柄で火種も
【北京・堀信一郎】ミャンマーとの26日の国交回復合意により、北朝鮮は韓国閣僚らを暗殺したラングーン事件(83年)を政治決着させた。同事件を受けて断交されたミャンマーとの関係を改善することで、北朝鮮には、米国による「テロ支援国家指定」の解除に向けた環境を整備する狙いがある。だが、ラングーン事件の主犯としてヤンゴンの刑務所で服役中の元北朝鮮工作員、カン・ミンチョル受刑者の身柄の取り扱いは決着していない。韓国の一部にはカン受刑者の身柄引き渡しを求める声もあり、韓国、ミャンマー、北朝鮮3カ国の火種になる恐れがある。
ラングーン事件では韓国の全斗煥(チョンドゥファン)大統領(当時)一行がラングーン(現ヤンゴン)のアウンサン廟(びょう)を訪問中に爆弾テロが発生し、韓国の副首相ら21人が死亡した。ミャンマーは北朝鮮工作員3人の犯行と断定、北朝鮮との国交を断絶した。
工作員のうち、カン受刑者は犯行を自供したため死刑にされず、24年間、服役している。だが、北朝鮮はカン受刑者を含む北朝鮮工作員の存在を認めず、爆弾テロを韓国側の自作自演と主張してきた。国交回復によってカン受刑者が送還されることになれば、北朝鮮は受刑者が実行犯だったことを認めることになる。韓国ではカン受刑者の身柄を引き受け、事件の真相を解明しようという動きもある。
タイを拠点にするミャンマー関係情報誌によるとカン受刑者は「韓国、北朝鮮のどちらにも行きたくない」と話しているという。これは韓国に送られれば、爆弾テロの罪に問われる可能性があり、北朝鮮に戻っても「罪を自白した裏切り者」と扱われる恐れがあるためだ。
世界で最も貧しく、国際社会から孤立している北朝鮮とミャンマーの国交回復は、天然資源や食糧などの貿易を促進するためという側面もある。
だが、核問題を抱え、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の資金問題解決が遅れている北朝鮮にとっては、ミャンマーとの復交は米国との関係改善のためのステップという見方が有力だ。
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■北朝鮮・ミャンマーを巡る近年の動き■
1983年10月 ラングーン事件発生
11月 ビルマ(現ミャンマー)が北朝鮮工作員3人の犯行と断定、北朝鮮と断交
12月 ビルマが工作員2人に死刑判決。北朝鮮がビルマ非難声明を発表
00年 7月 北朝鮮が東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に参加
06年春 北朝鮮とミャンマーが事務レベルで国交回復に合意
10月 北朝鮮が地下核実験実施
07年 4月 北朝鮮の金永日外務次官がヤンゴンで国交回復合意文書に調印