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Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

サプライズ

2021年09月20日 16時46分27秒 | エッセイ


     朝の5時55分。
     こんな早くにタクシーに乗ってどこへ行くのか。
     19日・日曜日。
     今春東京の外資系会社に就職したばかりの孫娘
     そのインスタグラムを覗いている。
     3人の孫は、それぞれインスタグラムをやっており、
     朝からそれを見るのが日課みたいなもので、楽しみなのである。
     次の画像。
     うん? ここは空港、羽田空港ではないか。
     ひょっとして、福岡へ帰省しようとしているのではないか。
     妻にそう話すと、「ちょっと○○(長女)に聞いてみよう」
     スマホを取った。


     まさに、その瞬間。
     当の孫娘からLINEである。
     「じいじ、おはよう。今からママにサプライズで福岡帰る。
      (じいじが)インスタストーリー見とったけん、
     まだママには秘密にしといてねー」
     福岡へ帰ってくるという勘は当たっていた。
     だが、危ない、危ない。娘に電話していたら
     サプライズ計画を台無しにするところだった。
     よし、こちらもこのサプライズ計画に乗ってやろう。

           
    
     まず、福岡空港へ勇んで迎えに行く。
     そう伝えたら、
     「嬉しい。ありがとうございます」の返信。
     嬉しいのはこちらだ──爺、婆揃ってお出迎えだ。
     それほど待つこともなく、元気な姿を見せた。
     「お帰り」「ただいま」と交わし、家へ向かう。


     さて、これからだ。サプライズ計画が成功するかどうか。
     この計画を知っているのは、自分の弟と従妹だけ。
     この2人にもしっかり口止めしていたようだが、
     秘密が漏れていないか、ちょっと気がかりだ。

     マンションに着いた。
     マンション入り口脇のインタホンのボタンを押す。
     ほどなく「どちら様ですか」とママ。
     「○○(孫娘)だよ」
     「えっ何、○○ちゃんなの。本当に?」声が裏返っている。
     マンションのドアが開き、エレベーターで家に向かう。
     玄関を開けると、
     ママが飛びつかんばかりに我が娘を抱きしめる。
     何度も何度もハグを繰り返し、背中をポンポンと叩く。
     爺、婆はその光景を黙って見ている。
     いいなあ、親子って。
     このサプライズ計画、大大成功だったな。


     ちょうど昼時。出前を取り、4人のランチとなった。
     すると、孫娘がもう一つサプライズを繰り出した。
     「じいじ、ポポ(お婆ちゃんをこう呼んでいる)、
     明日何か用事ある?」
     2人とも「いや別に……」
     「ああ、良かった。明日は敬老の日でしょう。
     2人をランチにご招待するわ」
     社会人になった孫娘がこんなことを言う。
     こんなに成長したんだな。
     途端にお婆ちゃん、涙がポロポロとなる。
     「嬉しい。こんな幸せはないわ」 
     確かに。これほどの喜び、滅多に味わえるものではない。
     ご同様──その感動をたっぷりいただいた。



     翌20日。敬老の日。
     ちょっとしゃれたレストラン。
     親、子、孫の4人が幸せの、
     サプライズのテーブルを囲んだのだった。