朝の5時55分。
こんな早くにタクシーに乗ってどこへ行くのか。
19日・日曜日。
今春東京の外資系会社に就職したばかりの孫娘
そのインスタグラムを覗いている。
3人の孫は、それぞれインスタグラムをやっており、
朝からそれを見るのが日課みたいなもので、楽しみなのである。
次の画像。
うん? ここは空港、羽田空港ではないか。
ひょっとして、福岡へ帰省しようとしているのではないか。
妻にそう話すと、「ちょっと○○(長女)に聞いてみよう」
スマホを取った。
まさに、その瞬間。
当の孫娘からLINEである。
「じいじ、おはよう。今からママにサプライズで福岡帰る。
(じいじが)インスタストーリー見とったけん、
まだママには秘密にしといてねー」
福岡へ帰ってくるという勘は当たっていた。
だが、危ない、危ない。娘に電話していたら
サプライズ計画を台無しにするところだった。
よし、こちらもこのサプライズ計画に乗ってやろう。

まず、福岡空港へ勇んで迎えに行く。
そう伝えたら、
「嬉しい。ありがとうございます」の返信。
嬉しいのはこちらだ──爺、婆揃ってお出迎えだ。
それほど待つこともなく、元気な姿を見せた。
「お帰り」「ただいま」と交わし、家へ向かう。
さて、これからだ。サプライズ計画が成功するかどうか。
この計画を知っているのは、自分の弟と従妹だけ。
この2人にもしっかり口止めしていたようだが、
秘密が漏れていないか、ちょっと気がかりだ。
マンションに着いた。
マンション入り口脇のインタホンのボタンを押す。
ほどなく「どちら様ですか」とママ。
「○○(孫娘)だよ」
「えっ何、○○ちゃんなの。本当に?」声が裏返っている。
マンションのドアが開き、エレベーターで家に向かう。
玄関を開けると、
ママが飛びつかんばかりに我が娘を抱きしめる。
何度も何度もハグを繰り返し、背中をポンポンと叩く。
爺、婆はその光景を黙って見ている。
いいなあ、親子って。
このサプライズ計画、大大成功だったな。
ちょうど昼時。出前を取り、4人のランチとなった。
すると、孫娘がもう一つサプライズを繰り出した。
「じいじ、ポポ(お婆ちゃんをこう呼んでいる)、
明日何か用事ある?」
2人とも「いや別に……」
「ああ、良かった。明日は敬老の日でしょう。
2人をランチにご招待するわ」
社会人になった孫娘がこんなことを言う。
こんなに成長したんだな。
途端にお婆ちゃん、涙がポロポロとなる。
「嬉しい。こんな幸せはないわ」
確かに。これほどの喜び、滅多に味わえるものではない。
ご同様──その感動をたっぷりいただいた。

翌20日。敬老の日。
ちょっとしゃれたレストラン。
親、子、孫の4人が幸せの、
サプライズのテーブルを囲んだのだった。