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鳥と子猫とそれから私

2015-11-03 07:25:52 | 滋賀

先日、ある人に誘われて滋賀県に行ってきた。
滋賀と言えばやはり琵琶湖。
あまりにそのイメージが強すぎて、土地の半分は琵琶湖だと思い込んでいる人も多いが、実際は1/6だったりする。

そのほとんどは山で、その日最初に訪れたMIHO ミュージアムも「こんなところに!?」という場所に建てられていた。

また、あまりに大きいので、琵琶湖に行くとつい「海じゃないだろうか」と思いがちだが、実際は海ではなくて川だったりする(一級河川琵琶湖)。

学生の頃、練習でぐるぐると琵琶湖を回っていたので、人よりは多く琵琶湖トリビアを知っているつもりだが、今回また一つ見つけた。

ご存じだろうか?
琵琶湖には島があるのだ。
しかもそこには人が暮らしている。
なので、陸からは割りと簡単に渡れてしまうのだ。

沖島。
それが陸の孤島、いや湖の孤島の名だ。

島には港があって、小学校がある。
小さなカフェもある。
でもそれだけだ。

車は一台も走っていないし、道はまっすぐ一本だけ。
自販機はあっても中身は空っぽだ。
もちろん、観光案内所もない。

それでもいいんじゃないか。

素直にそう思った。

どこもかしこも観光に力を入れて、似たようなガイドブックを作って、推奨ルートを決めて、名産品を作って、その裏で一儲けしようとする会社があって、、、という構図は何だかつまらない。

別に否定はしないんだけど、商品が画一化されて、遊び方が決められて、みたいなのはあんまり好きじゃない。
ディズニーランドじゃないんだからさ。

だからこういう何にもなくて人の気配があるところは逆に珍しいし、騒々しくなくて僕は好きだ。
何より湖の上にあるなんて、それだけで面白いじゃないか!


島に着いて、最初に迎えてくれたのは猫だった。
地図もなくフラフラしていた僕らに擦り寄ってきて、可愛く鳴いている。
歩き出すとついてきて、島を案内してやろうと言わんばかりに先頭に立つ。
その弱々しさと逞しさを兼ね備えた感じが何とも言えなくて、結構癒されてしまった。

山に登ると湖の上にあることをすっかり忘れてしまう。
思ったより道が長くて、誰一人としてすれ違わないので、ちょっぴり怖い。
一人だったら多分登れなかっただろうな。

頂上からの眺めも、しみじみと良かった。
自分たちのはるか上を飛ぶ鳥たちを眺めながら、でも今は琵琶湖のてっぺんにいる。
そんな状況が可笑しくて、面白い。

その日は話が尽きなくてずっと楽しくて気づかなかったけれど、後になって文章に落としてみると結構色んなことを考えていたみたいだ。

僕は今、鳥を見て格好いいと思う。
上に上に行って世界を見渡したいと思う。
格好つけた言い方をすると、それが自分に課せられた使命だと思っている。

けれども、最後は猫のようになりたいとも思う。
猫のように同じ目線で人に寄り添えるようになれたらいいなと思う。

言葉で表現するのはちょっと難しいけど、とにかく何をする時も目立たずしれっとしていたい。
それだけは心に決めている。

ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

ふと、宮沢賢治の言葉が脳裏をよぎった。

彼は鳥と猫、どちらを目指したのだろう。

あるいは、そのどちらでもないのかもしれない。

沈みゆく太陽を見ながら、賢人の言葉に思いを馳せてみる。

今日は文化の日です。