歌:城之内早苗
作詞:たきのえいじ:作曲:杉本真人
あなたと別れた あの日から
はじめて気付いた 部屋の広さを
埋めるものなど 今更なくて
おもいでを 飽きもせずなぞってるだけ
※好きやねん うちは今でも
忘れへん あなたの事を
秋の移ろいに 心乱れる日は
くちびるが 淋しがる※
抱きしめて 抱きしめて
うちの体を あなた
韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・征旅再び
「大宛討伐は朕がすでに決定事項としていることだ。しかし
それが小国であるにも関わらず降伏させられないとあっては、
大夏などの輩は漢を軽侮し、大宛の良馬も決して漢に来る
ことはないであろう。
また烏孫や輪台なども漢を侮り、使者を苦しめるに違いない。
やがては漢は諸外国の物笑いの種となり、その威光を世に
示すこともできなくなるであろう。
そうなってしまっては、匈奴を征伐することも不可能となるのだ」
かくて皇帝は西域撤退を主張した公卿たちを罰したうえで、
獄に繋がれている者たちに大赦令を出した。
一年かけてこれを兵として養成することにし、装備や馬牛も
補充された。限りなく多い予算が、この事業に計上された
のである。
※「皇帝陛下がまだ西域を諦めていないことは明らかに
なったのですね。これで……将軍さまに命令が下れば
万事思惑通り、ということになるのでしょうか」
欣怡は思慮深い表情で李広利に問いかけた。その顔には、
戦いの場などという危険な現場などに行ってほしくない、
という感情が見え隠れする。
「君のお父上のこともある。つまりこれは……君のためでも
あるのだ」欣怡はこのとき驚いたようであった。
「知っておいででしたのね。お父様から将軍さまに直接の
依頼がございましたか?」
「いや……。しかし、お父上が私に期待してくださっていること
は自然にわかった。ほら、以前に私は人の気持ちに忖度する
と言っただろう。
お父上が敦煌を離れて長安に行きたがっていることは、
すでに君から聞いて知っていたことだ。
あの方が長安に戻るためには、軍功をあげた私が君を娶り、
その親族として上洛への道に同行するしか方法がないだろう、
と考えたのだ」
「厚かましいお父様の望みまで叶えようと……ご心労を
おかけしてすみません。それで……それが私のためでも
あるとは?」
李広利はこのとき、赤面したようだった。
「あらためて言わせるのか……?君を娶りたいのだ。
もちろん、軍功をあげたうえで正式に……以前のような
無粋な言い方はしないつもりだ。そのときは、受けて
くれるであろうな?」
欣怡は優しさに満ちた微笑みをみせながら、これに答えた。
「将軍のお気持ちにお変わりがなかったら。
ほら、人は功績を挙げると性格が変わると言うでしょう?
だから……」
「変わらない。大丈夫、変わらないさ」 二人はそのとき、
砂漠に浮かぶ月の明かりを受けながら、抱擁を交わした。
再度の大宛遠征の命令が皇帝より下され、我々はその
準備に忙しかった。李広利は再び指揮官に任じられ、
彼はこれを快諾した。
その裏には妹の死に対する恨みの感情があったが、
それを表情に示そうとはしない彼であった。
「兵員は、どのくらいだ」問われた李哆は、即座に答えた。
「六万ほどです。
かつて漢の建国に関わった歴史上の英雄たちは二十万や
三十万の兵を統率した、と言われていますが、今回の旅程
は砂漠を横断するものですのでこのくらいが適当か
と思われます。
六万という数は、西域の小国を脅すに充分な数ですし、
輜重部隊を別に編成すれば、食わせていくにも難しくない
数です」
「輜重部隊が、別にあるのか?」
「この敦煌を拠点にして、順次補給が可能なように部隊が
集結するとのことです。各地の辺境の守備隊を動員して、
その数は十八万にのぼる予定です」
その十八万は、罪ある役人、亡命者、あるいは入り婿など
が中心となった部隊で、要するに、この任務に成功すること
によって名誉を得ることが目的の者たちである。
李広利は、そのような彼らの思いにも応えなければなら
なかった。かくして我々は、再度西域の地へ足を踏み入れる
こととなった。
以前とは異なり、充分な装備・人員を確保し、後方支援の面
でも憂慮はない。
出発を前に蝗害に襲われるなどという突発的な災難も訪れず、
多くの敦煌の住民たちに見送られながら、我々は進撃を
開始した。
「無事に戻ってきてくれたらいいけど……」
欣怡は不安そうに軍団の後ろ姿を見つめた。
彼女は確かに李広利の成功を願って、その帰りを待つ
つもりだったが、
よく考えてみると一方の成功は他方の失敗につながることに、
改めて気付いた。漢の成功は西域の不幸につながるのでは
ないか、だったら遠征などしない方がいいかもしれない、
などと考えてしまうのであった。
「我々としては、匈奴に支配されている西域の現状を変える、
と考えるべきであろうな。あくまで漢人としての我々の主観だが、
それは西域を救うことになるのだ」
父親の尹慈は、そういって娘を慰めた。それは、戦いに
赴く李広利も同じ気持ちであったことだろう。
玉門を抜けると風景は砂ばかりである。敦煌では木や草など
の緑が点在していたが、当然のことながら砂漠には
それがなかった。
そして砂漠には、誰もいない。無人の地を行く六万を越える
兵団は、事実上無敵であった。たとえ砂山の影に匈奴が
隠れていたとしても、何のことがあろう、我々はそれを容赦
なく打ち砕く兵力を有していたのだ。
「多大な兵力を以て敵陣の中を行く……
これが自らの身を守る最大の方法だな。威圧することで
お互いに傷つけ合わずに済む。
こちらも無益な殺生をしなくて済むから、精神的にも安定した
状態で軍旅を続けられる。
たしか孫子は戦わずして勝つ、という内容の言葉を残して
いたと思うが、私は今その本当の意味を知った」
天山南路を威風堂々と進軍しながら、李広利はそのような
ことを言った。軍団は西に向かい、諸国はそれをひれ伏して
迎えることになるのだった。 ・…
……
アンテキヌスはオーストラリアの有袋類
彼らは何のために生きているのだろう?
アンテキヌスという動物を知っているだろうか。
アンテキヌスは体長が10センチメートル程度しかない。
彼らは小さなネズミのような有袋(ゆうたい)類である。
有袋類というのは、カンガルーのように袋の中で子どもを
育てる仲間だ。 有袋類は未熟な胎児を産み、袋の中で
子どもを育てる。
一方、一般的な哺乳(ほにゅう)類は、有胎盤類と呼ばれ
ている。有胎盤類は胎盤が発達しており、母親のお腹の中で
子どもを十分な大きさにまで育てることができるのである。
有袋類と有胎盤類とは、もともと共通の祖先を持つが、
1億2500万年以上前に枝分かれして、それぞれの進化を
遂げたと言われている。
世界では有胎盤類が多様な環境に適応して、多様な進化
を遂げたが、 オーストラリアでは、有袋類がさまざまな進化
を遂げた。
たとえば、有胎盤類のネコのように、有袋類ではフクロネコ
が進化した。また、有胎盤類のオオカミに対して、有袋類の
フクロオオカミ、 有胎盤類のモグラに対して、有胎類の
フクロモグラ、有胎盤類のモモンガに対して、有袋類の
フクロモモンガというように、その進化はよく似ている。
有胎盤類も有袋類も環境に適応してよく似た進化をして
いるのである。 ちなみに有袋類のカンガルーは、有胎盤類
ではシカ、有袋類のコアラは有胎盤類のナマケモノに相当
すると考えられている。
アンテキヌスは、有胎盤類ではネズミによく似ている。
ネズミは弱い生き物で、 さまざまな動物たちの餌にされる。
そのため、ネズミは1年程度の短い寿命の間に、たくさんの
子どもを産んで生き残るという戦略を選んでいる。
アンテキヌスもネズミと同じ戦略である。 彼らの寿命も短い。
アンテキヌスのメスは寿命が2年程度である。
オスの寿命はさらに短く、1年に満たないとされている。
彼らの一生は忙しい。アンテキヌスは生まれて10カ月で成熟し、
生殖能力を持つ。つまり、大人になるのだ。
人間が20歳で大人になるとすれば、それまでに240カ月
かかっている計算になる。アンテキヌスは、この24倍もの
速さで大人になるのだ。
アンテキヌスは冬の終わり頃の2週間程度が繁殖期になる。
そして、大人になったアンテキヌスのオスは、メスを見つけては、
次々と交尾を繰り返していくのである。
哺乳類のメスは、オスを選り好みする例が多く見られる。
1回に産むことのできる子どもの数が限られている
哺乳類では、いかに優れたオスの遺伝子を子どもに託すか
が重要なのだ。
そのため、交尾相手のメスをめぐって、オスどうしが戦い、
強いほうのオスだけがメスと交尾をするというルールを
持つ動物も少なくない。
ところが不思議なことに、 アンテキヌスのメスは、どんな
オスでも受け入れるという。おそらくは、それだけ繁殖をし、
子孫を残すことが難しいということなのだろう。
選り好みをしている余裕がないのだ。 交尾に明け暮れて
オスのほうもメスを選ぶことはない。
手当たり次第に、と言えば言葉は悪いが、オスも出会った
メスと次々に交尾を繰り返していく。
強いオスだけが子孫を残すことができるというルールであれば、
オスたちは体を大きくして闘争能力を高めていく。しかし、
アンテキヌスにとっては、強いことには何の意味もない。
どんなオスでもメスは受け入れてくれるのだから、少しでも
たくさんのメスと交尾したオスが、より多くの子孫を残すこと
ができる。そうなれば早い者勝ちだ。
アンテキヌスにとっては、 他のオスと戦っているような
暇はない。他の動物たちは、ライバルと競い合ってパートナー
を選び、甘い鳴き声やスキンシップで愛を育みながら、
愛の結晶を宿す。
しかし、 アンテキヌスのオスは、恋だの愛だの言うことは
一切なく、ただ交尾相手を探しては交尾をし、また次の
交尾相手を探すことを繰り返す。
それも無理のない話だろう。何しろ、 アンテキヌスに許された
繁殖期間はわずか2週間しかない。
それが、アンテキヌスにとって生涯で1度にして最後の
チャンスである。この期間を過ぎれば、オスは寿命が
尽きてしまう。
そのため、アンテキヌスのオスは、この間、不眠不休でメス
を探し続け、ひたすら交尾を行っていくのである。
「メスと次々に」と言えば、軽薄で浮ついたプレイボーイを想像
して、 うらやましいと思うかもしれないが、その実態はそんな
に甘いものではない。
アンテキヌスの性生活は壮絶なのだ。
アンテキヌスのオスは、あまりに交尾ばかりを続けているため、
体内の男性ホルモンの濃度が高くなりすぎて、ストレス
ホルモンもまた急激に増加する。
そのため、体内の組織はダメージを受け、生存に必要な
免疫系も崩壊してしまうという。
それが原因で、毛が抜け落ちて、目が見えなくなることさえある
と言うが、自分の体をいたわることはなく、オスは交尾を
繰り返す。
もう、彼らの体はボロボロだ。それでも、彼らは交尾をやめる
ことはない。命ある限り、 彼らは交尾を繰り返すのだ。
やがて、2週間という繁殖期間が終わる頃、オスの
アンテキヌスたちは精根尽き果てていく。
そして、次々に命を落とし、短い生涯を終えるのだ。
何という壮絶な死だろう。何という壮絶な生涯だろう。
一方のメスは違う。出産しなければならないメスは、交尾を
繰り返したとしても、子どもの数が増えるわけではない。
そのため、命を賭(と)してまで、不必要に交尾を繰り返す
ことはない。 メスには出産をして、子育てをするという
大切な仕事が残されているのだ。
生物の進化を顧(かえり)みれば、オスという性は、
メスたちの繁殖をより効率的に行うために生まれた
と言われている。
「男」というのは、生まれながらにして悲しい生き物なのだ。
しかし、アンテキヌスの男たちは、その運命を受け入れ、
全うして息絶えていく。
性に溺れた生き物とさげすむこともできるだろう。
交尾をしすぎる動物とバカにして紹介されることもある。
しかし、天地創造の神さまだけは知っている。
生物学的には、彼らこそが、男の中の男なのだ。
自分の死と引き換えに、「未来」という種を残すアンテキヌス。
「何のために生きているのか」と思い悩んでいる私たち
人間に、・・・
アンテキヌスは「次の世代のために生きる」という
シンプルな意味を教えてくれている、そんな気がする。 ・…
俺が小学生の時、事故で両親が死んだ。
その後、親戚中をタライ回しにされた。
俺が「高校入学を機に一人暮らしを始めたいんです」と言うと、
親戚のヤツは「好きにしろ」と二つ返事で文字通り俺を
放りだした。
金ももらった。
300万。俺の家を売ったし、貯金とかもっとあるはずだが、
俺は何も言わずにそこを飛び出した。何よりその場所が
耐えられなかった。
そして、一人で暮らし始めた。高校2年で知り合った友だち
の家に、初めて遊びに行った時のことだ。
時間が遅くなって晩ご飯をごちそうになることになった。
友だちの家は、親父さん、お母さん、友だち、弟の
四人家族だった。
俺をいれて五人の食卓には、ご飯、味噌汁、肉じゃが、
あとよく判らない煮魚みたいなものが並んだ。
俺は「うまい!うまい!」と連発して食べた。
友だち 「そうか~?こんなん普通だよ」
俺 「何いっとるんだ。こんなん毎日食べれるなんて
羨ましいて!」「炊きたてご飯なんて、すっげー
ゼイタクだて!」
それを聞いていたお母さんが「○○くん、いつもどんなも
の食べてるの?」と聞いてきた。
俺は「いつもバイト先でまかない食ってます。
あと家だとおにぎりとかパンとか、ラーメンとかです」
と答えた。
お母さん 「お母さんはいらっしゃらないの?」
俺 「あ、オレ両親いないんすよ。昔事故で…。ハハッ(笑)」
なるべく気を使わせないように、サラッと言ったつもりだった。
お母さんの顔色がサッと変わるのが分かった
あまり人に気を使わせるのはよくないから、いつも、親の
ことを聞かれたら、サラッと言う癖が俺にはついていた。
ところが、お母さんは、いきなり俺の手を両手で握ってきた。
俺がビックリしてると、涙目になって「○○くん、困ったこと
があったらうちに来るのよ」って言った。
なんだか分からないけど、俺も涙が出てきた。
家族なんて欲しいとか思ってなかったけど、
その時に初めて、その友だちが本当に羨ましかった。
このときの飯の味が今でも忘れられない。
それからもそいつの家には、バイトの休みの日にご飯
を食べさせてもらいに行った。
いつもタダ飯じゃ悪いから、一度お金を持っていったら、
逆にすごい形相でお母さんから怒られた。
「子どもが余計な気を使わなくていい」って。
でもうれしかった。・…
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