特定非営利活動法人精神医療サポートセンター

発達障害、統合失調症、アルコール依存症、ベンゾジアゼピン系薬剤の依存等々、精神科医療についての困りごとに対応いたします。

不眠を訴える患者への対応

2009年02月10日 | 看護論的経営論


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精神科では通院、入院を問わず不眠を訴えてくる患者さんはよく見かける。
そこで、眠れない人に対して頓服薬(追加眠剤)を与薬することがしばしばある。



・眠れない人で、薬を希望する人にはすぐに薬をあげるべきだ


このような考え方もあるだろうが、まず考えてほしい。

1、眠れない原因は何だろうか
2、不眠を訴えてきた時間は何時か
3、頓服薬の種類は何か
4、患者さんの表情はどうか

眠れない=薬という単純な対応に出るのはひとまず待ち、これら1~4のことを最低限のものとして考えるようにしてほしい。

訴えがあれば、まずゆっくりとした態勢で話を聞く姿勢を見せる。そして、頓服薬を渡すことは問題ないという前提で、患者さん本人には自分で睡眠を獲得することの重要性を小難しくないようにコミュニケーションをとりながら軽く説明する。そして、本当に眠れないのかということも含めて訴えてきた時間をみて考える。
それが22時や23時ころであるなら、私は頓服薬の必要はないと思う。もちろん、頓服薬の種類と患者さんの体格や頓服薬を飲んだ時の特徴もあらかじめ知っておくべきだとおもう。薬の種類というのは、単に軽い薬やきつい薬という見方ではなく、それに加えて、薬物の血中半減期や最高血中濃度を考慮して考えるという意味である。それと、患者さんの病態にもよるが不眠時の頓服薬でレボメプロマジンやリスペリドンなどが出ていれば気軽に渡すようなものではない。
特に、通院患者であれ入院患者であれレボメプロマジンやリスペリドンの液剤、はたまたベゲタミンAなどの合剤を習慣化させたとしたら今度はそれが常習化してしまい、
「とりあえず眠れないから薬をください」
この言葉が聞かれるようになる。
飲むことでとにかく心地よい睡眠が得られると思っている患者には非常に罪な話である。

これは、
※その患者に対して、無責任に処方し、日常化した頓服薬として医療者側が長年作り上げてきた“不眠”である。

ここまで来たら、ゆっくり話を聞こうとしても患者には効く余裕はないし、イライラ感や焦燥感を表すものもいれば、それが21時であっても
「眠れない」
と訴えてくるようになる。
そうなれば、看護側も渡すのを渋ると患者はただ苦しいだけになってしまう。


こういう常習化してしまったケースとは別だが、早くから頓服薬を希望してきた患者に対しては、一度考えてみてほしい。我々成人は、21時から寝る人はほとんどいないということ。もちろん生活習慣や体質によってはそういうケースもあるだろうが、その患者自身が発病前、あるいは入院前はどうだったかということを考慮すべきであろう。その説明で安心して床に就く患者もいる。その間隔を忘れないでほしい。

また、薬については、患者が眠れないと訴えたときに医師がどのように処方するか、それを我々が医師とどのようにコミュニケーションをとるか。
対患者に関しては、頓服薬の内容を患者の状態と時間等と照らし合わせ与薬すべきかどうかを熟考しなければならない。もちろん、その時のだけのことを考えるのではなく、こういう状況が毎日続くことを想定して考えなくてはならない。特に患者が内服を始めた初期のころの対応が非常に重要になってくる。

常習化してしまった頓服薬は、それが当たり前になるためいずれ効きにくくなる。毎日飲むようになり、それが定期の薬として組み入れられるようになり、やがて別口で頓服薬を処方しなければならなくなる。繰り返しいうが、それがレボメプロマジンのような部類の薬なら錐体外路症状も出るだろうし、未だ絶えない抗パ剤の処方につながる。

日常、何気なく手渡している頓服薬の考え方をもう一度見直してほしい。

間違ってはいけないのは、頓服薬を渡すことそのものが悪いということではない。
大事なことは、これらのことを踏まえ、看護者としていかにその状況に合わせて対応するかということである。
もちろん、目指すべきは患者に苦痛がおきないようにしたうえで、頓服薬をわたさずに気持ちよく寝てもらうことであろう。














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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一般的に (pita)
2009-02-10 16:16:31
こんにちは。

私は、入院を4回したことがあります。
1回は精神科です。

入院っていうのは、それ自体、もう非日常なんですよね。やっぱり。

越智さんの言われるように、

>我々成人は、21時から寝る人はほとんどいない

ですよね。

家では24時まで起きていても別に普通なのに(本当はもっと早寝がいいですが・・・)、
病院にいて、22時半ぐらいまで目が覚めていると、何だか自分が悪いことをしているみたいに思えてくるんですよね。何も悪いことしていないのに・・・。

病院は集団生活だから、「ほら、今がねむれるタイミング」という時に、人がくしゃみをしたり、トイレに立ったり、看護師さんが来たりしたら、目が覚めてしまったりもします。

ただでさえ、枕が変わって眠れないとか、病状のことで不安があるとか、体とか心の苦痛があるとか、不利なのに。


精神科に入院した時は、朝昼晩の薬もなし、眠前薬もなし、あるのは、頓服の精神安定剤と不眠時の眠剤のみという状態だったので、毎晩不眠でした。

「ねむらなくちゃ」と思って努力はしても、他の患者さんがうるさくて(と言っては語弊があるけれど、正直なところ・・・)眠れませんでした。それは薬の力を超えるぐらいだったので、本当は22時まで眠れなかったら薬を取りに行くというきまりみたいなのがあったけど、「どうせ今薬を飲んでも眠れない」と思って、ずいぶんねばって取りにいかなかったりしました。
他の患者さんが薬の効き目で眠ってくれたところでようやく薬をもらいに行ったりもしました。

しかし、ひとつ問題は、みんながばらばらに薬を取りにくると面倒なので、22時と23時に渡すというようにだいたい決まっていたみたいで、それ以外にナースステーションに行っても、だーれもいなくて、薬がもらえないことがありました。

人手不足のせいだったんじゃないかと思います。
返信する
相互リンクのお願い (HIRO)
2009-02-10 16:28:40

「インポ@研究所」を運営しておりますHIROと申します。

この度、貴サイト様を拝見させて頂きもし可能であれば
是非私のサイトと相互リンクをお願いできないかと思い
ご連絡させて頂きました。

こちらからは勝手ながらリンクを張らせていただきました。
(こちらのURLからご確認いただけます。)
http://www.recycle-guide.net/link05.html

もしよろしければ、相互リンクをお願いできないでしょうか。


もし、相互リンクを頂ける場合は下記の内容を
お使い頂ければと思います。

■ホームページ名
インポ@研究所

■URL
http://www.recycle-guide.net/

■説明文
様々な原因により男性に起こる勃起不全について
そのメカニズムや対処法など詳しく解説するサイト!
(ご自由に編集されて下さい)

■リンク用タグ
インポ



ご検討のほど、よろしくお願いいたします。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

インポ@研究所
URL:http://www.recycle-guide.net/
E-MAIL:nishi0487@yahoo.co.jp
運営者:HIRO

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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Unknown (私も援助者ですが…)
2009-02-11 01:22:04
 確かに、安易に薬を渡しすぎる傾向を感じます。
 時に、医師も「眠れないと言っているのだから、薬を渡したらいいじゃないか!」と過去に叱られたこともあります。

 越智先生の4点の視野は非常に重要だと私も賛同いたします。
 表情や声のトーンは心理的な変化も読み取れますし、薬理動態…即ち、血液中最高濃度や半減期になる時間なども頭に入れておけば乱用は避けることが出来ると私も信じております。
 あと、情緒的な問題、眠れない時間に考え事が出て苦痛に感じていないかなどなど…
 さまざまな、病理や環境因子を分析しつつ、リラクゼーションや時には対話に時間をとり、安心と安全を言葉で処方したりします。
 手は掛かり、確かに知識なども要求されますが、薬を安易に渡してしまうより、信頼関係も築きやすくなります。
 睡眠剤…悪いものではありませんが、安易に使用するのも越智先生の言われるとおり、恐ろしいものです。
 医原性の薬物依存症…依存症の専門病院も経験してきましたが、確かにありましたね。
 身体依存だけでなく、精神依存も含めて…

 こういったアプローチ…他のスタッフから、鬱陶しがられたりしてしまうことが多いですが…ご無理をなさらず、活動がんばってくださいね。 陰ながら応援しております。

 それと…インポ研究所ですか…
運営も大変でしょう…
性に関連する障害は中々理解を得ることができないことがある社会現象というか…文化歴史、背景がありますね。(宗教など過去において性を固く禁じるような文化背景がそれを物語っていますよね)
 私は、以前、カプランやマスターズとジョンソンンなどの性医学についても多少文献に目を通したこともありますし、フロイトなどの精神分析は「性」と心理が密着していたりします。
 私にとっては興味のある分野でもあります。
 また、覗かしていただきますね。
返信する
Unknown (村祐)
2009-02-11 03:09:55
ご無沙汰しております。
考えさせられる内容です。
しかし、眠れない原因は何か…
静養や安静、鎮静効果のある薬剤の投与、
入院生活を想定すると、入院治療前の生活環境と活動と休息のバランスは異なるはず。

不安が増強しやすい夜間帯
休息確保を最優先と自分は考えています。
発症からの期間や、急性期、慢性期、様々な状況によるとは思いますが。

万年変更されない頓服薬。
中には看護者を安心させるために処方していると話す医者もいます。

何の為に処方されているのか再考することが大切なような気がしますね。
返信する
Unknown (もっさん)
2009-02-11 18:18:36
>pitaさん
いつもぴたさんの体験談はためになります。われわれ医療従事者からの立場ではどうしてもきづけないことがあったりで、いつも刺激されます。
刺激を受けるだけではなく、本当に当事者の気持ちを考え続けることを怠らないようにしたいと思います。
これからもよろしくお願いしますね。
返信する
Unknown (もっさん)
2009-02-11 18:20:30
>私も援助者ですがさん

いつもコメントありがとうございます。
言われることすべてに反論はありませんね。本当にそうです。
自分だけ主張してもチームで対応しなければ意味がありませんし、それを短時間で導入するには複合的に要素がからみすぎて単一でない。
しかし、人の命をあずかっていますから、そうもいってられませんからね。
的を射たコメントありがとうございます。
これからもよろしくです。
返信する
Unknown (もっさん)
2009-02-11 18:35:17
>村祐さん
眠れない原因を探るために患者さんの表情や会話から情報を得ることは大切ですよね。

それと患者さんの活動と休息のバランスを
・本来はどういうものであったか、
・入院によってどうかわったか。何によって変わったか、変えざるを得なかったか、
薬剤によってコントロールされているのか、それが本人にとって苦痛であるか、
・本人は自覚できていないがQOL的にどうなのか

これらをアセスメントして休息をとってもらうことは重要だと考えます。
ただし、薬剤の知識なくDr.の指示だからと鎮静があるものだからとベゲAなどをいっているとしたら、それは患者さんにとってほぼ有害だと考えます。ただし、これが医療従事者側によって作られたリズムだとして、突然それを断つことは患者さんにとって苦痛ですし、それを我々がワンマンプレーでしているとしたら大きな勘違いですよね。ですから、そのリズムを本来あるであろう状況に持っていくには、やはりカンファレンスなどを開いて方向性を議論しなくてはならないと思います。

つまりこの人にとって、「休息とはなにか」を議論することが重要ではないでしょうか。
日々問題なく頓服を飲むことで休息できている患者さんも長期的に見れば治療・療養ではなく、極論ですがじわじわと悪化するための材料を口にしているということもいえます。

ここで説明しておかなければいけないのは、それら私が挙げた薬も選択肢としてはゼロではないということです。
伝えておかないと誤解される方もいると思いますのでここで伝えておきますね。
返信する
睡眠薬ユーザー・・として (まーぶるちょこ)
2009-02-12 20:49:24
確かに睡眠薬の種類や用量については気にしているのに、他の内服薬との関係や生活習慣の内省となると無頓着になりがちですね。
同じ服用するなら、効果的に使用したいですね。
返信する
端から睡眠パターンがおかしい人の場合 (ミナ)
2009-02-21 00:41:59
看護師の職業柄、毎日の睡眠パターンが一定でなく、未だに効果的な睡眠法が見つかりません

日勤終了後、自宅に帰った瞬間、眠くて眠くてコート着たまま床で眠り、起きた時には体中痛いのに、どうにかしてまた床で寝てしまう、、もしくは

危険なお風呂。
もう、本当にぎりぎりです。
耳まで浸かって目が覚めます。。
この前は深く眠り過ぎて
明け方気付いた時は、自分が今どこにいるのか 一瞬サッパリわからなくなった、という事がありました。
昼でも夜でも平均4時間から5時間お風呂に入ってます。が
誰も起こしてはくれません、。そして、何処も洗てない。。感想は、

とっても フラフラします
かと 思えば 明日も日勤なのに 寝なきゃ 寝なきゃ、、、 眠れなかった、
どうしようもなく耐え難い眠気か、ほとんど眠れないかの、どちらかに偏るのです


返信する
Unknown (もっさん)
2009-02-26 03:46:03
>まーぶるちょこさん
いつもありがとうございます。

本来の睡眠とはなんなのか、

入院している患者さんだけに限りませんが、長年睡眠薬を服用していると自然の睡眠を忘れてしまうのかもしれませんね。その感覚をどのようにかして、取り戻せるようにすることも我々看護者の仕事なのかもしれませんね。
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