Myselves

言葉と音楽に隠された魔法を探して放浪中。
そんな『自分自身』たちの旅の様子は?

スウィーニー・トッド

2008-02-24 19:43:32 | 映画
映画『スウィーニー・トッド』を見てきました。
なにげに今年初の映画。

一言で表現するなら、残酷。
もちろんスウィーニーの殺し方も残酷だけど、それ以上に人の心にある【残酷さ】ってのを感じました。
愛ゆえ、欲望ゆえ、純粋さゆえ、ひとはここまで残酷になれるんだなあと……。

以下、ネタバレあり。


スウィーニー役のジョニー・デップはびっくりでしたね。「ミュージカルを楽しみたい」って人には物足りないかもだけど、「ジョニー・デップ歌えるの?」って思っていたので。結構うまいんだ。それにしてもひと癖もふた癖もある役が上手。残酷さの裏に潜む孤独とかそういうのが伝わってきました。
ラヴェット夫人役、ヘレナ=ボナム・カーターもすごいなあと。『チャーリーとチョコレート工場』のお母さんとは感じの違う【母性】みたいなものを感じました。スウィーニーに対する報われない愛も悲劇的だなあと。夫を亡くし、子供もいないからスウィーニーだけは自分から離れてほしくなかったのかなあ。
ターピン判事役のアラン・リックマンは圧巻の一言ですね。ただも『ハリー・ポッター』のスネイプの影がちらつくが(笑)。この人は自分の恋に忠実だったんだろうなあ……。ルーシーが独身だったらここまでの悲劇にはならなかったかも。ジョアナが好きだったと言うよりはルーシーを忘れられなかったんだろうね。
バムフォード役のティモシー・スポールは“怪演”でしたね。すげー俳優さんだよ。まあ『ハリー・ポッター』のピーターのイメージは確かに強いけど。それにしても、こういう役人きっといる。
サシャ・バロン・コーエン演じるピレリは……なんというか、典型的な「胡散臭い人」だなと。そしてこういう人はたいてい裏がある(笑)。『マウストラップ』のパラビチーニは『三人ガリデブ』のガリデブさん(犯人の方)を思い出しました。
アンソニーは正直「え、マリウス?」と思いました(結局それか)。映画ではそんなに重要な役じゃないっぽいですが、舞台版は出番も多いようで……。ちょっと見たい。演じたジェイミー・キャンベル・バウアーは美しい俳優さんでした。外見はアンジョルラスなんだよな(こら)。
ジェイン・ワイズナーのジョアナもポジション的にはコゼットだよね(だーかーらー!)。美人さんで声もすごく綺麗だな、と。ただ演技は?なところもちょっとあったかな。籠の中の鳥は自由になったとき、最初はとまどうのね、と思いました。
トビー役のエドワード・サンダースは可愛らしかったです。しかしガヴローシュにかぶる(いい加減にしろ)。でも一筋縄ではいかない、みたいな。こんな小さな子がこき使われてる&酒で憂さ晴らしするなんて……。うーん。
ルーシーと物乞いの女性を演じたローラ・ミシェル・ケリーも素敵でした。ルーシーと物乞いでは全然感じが違うけどね。もうちょっと歌の多い役でもよかったような気がするんだが、まあこの作品ならこの役でしょう。

内容は、まあわかっていたけど残酷ですね。
スウィーニーはルーシーとジョアナを愛するがゆえに殺人を犯すわけだし、ラヴェット夫人はスウィーニーを愛していたから殺人に手を貸すしパイを売るわけで。アンソニーだってジョアナのために精神病院の院長に、間接的にとはいえひどいことをするわけだし。
ターピンは欲望からルーシーを辱めたり、ジョアナを監禁したり、ジョアナに恋する男達にひどい仕打ちをするわけで。バムフォードがジョアナに恋する男達に暴力を振るうのは壊したい、自分の強さを誇示したいという気持ちがあるのでは、と思いました。
トビーは純粋なゆえに残酷で。ラヴェット夫人を慕うが故に最後はあんな行動に出るわけですよね。

映画について。
色の使い方が巧みですね。暗い色調に赤い血が映える映える。色鮮やかな過去や空想(?)との対比も良いと思いました。
あとは音楽が素晴らしいですね。さすがソンドハイム。ちなみに歌うなら『ジョアンナ』か『僕がついている限り』が良いです。『緑の鳥』も素敵な曲だけど、音域が高い……。
ストーリーについては、やっぱりホラーというよりは悲劇だなあと。スウィーニーがルーシーに気づいていたら悲劇が起こらなかったかといえばそうでもないだろうし、ラヴェット夫人がルーシーが生きていることを教えていたところで何かが変わったとも思えない。スウィーニーが物語の前半でトビーを殺していたとしても、やっぱりスウィーニーは死んだと思う。
1人だけ、殺されなかったお客さんがいましたが、あれは家族連れだったからでしょう。もしルーシーとジョアナが生きていたら……とスウィーニーは自分と重ねていたのかもしれません。


あ、そういえば途中で展開が読めました。
物乞いの女性がルーシーなんだろうな、とかピレリやバムフォードは殺されるだろうな、とか。アンソニーも殺されるんじゃないかと思いましたが、それは違ってたね。
あと最後はスウィーニーは自殺するもんだと思ってました。ラヴェット夫人を殺し、その仇を討とうと出てきたトビーを殺し、自分で自分の首を切ってからルーシーの亡骸を抱いて息絶える。まあ実際はトビーに殺されるわけですけど。
最後のトビーのメイクがスウィーニーに似ていたのが印象的でした。このあと彼は成長して第二のスウィーニー・トッドになるのか、それとも切り裂きジャックになるのか……(あれ、時代が違うか??)



総じて。
誰もが楽しめる映画ではないけど、ずいぶん深い映画でした。
ぜひ一度舞台で観てみたいものです。上手い役者で。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ザ・プロデューサーズ | トップ | ウェディング・シンガー »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事