地理講義   

容量限界のため別ブログ「地理総合」に続く。https://blog.goo.ne.jp/morinoizumi777

137.高米価政策の破綻  飼料用古米の横流し

2014年02月19日 | 地理講義

新食糧法の改正(2004年)
戦時統制の食糧管理法(1942~1995年)、その統制を緩和したのが新食糧法(1994年)、さらに政府の米買入を備蓄米に限定した改正新食糧法が2004年である。国産米の流通の自由化が進められ、次の3通りになった。なお、日本国内の米生産量は年855万トン、消費量は740万トンである。
(1) 自主流通米
生産者農家から農協(JA)を経由し、米穀店やスーパーマーケットなどに売られる。価格は経済学の原則に従い、需要と供給の関係で決まる。農協が米を民間倉庫に保管委託しておき、売買契約が成立したら出荷する。国産米としては最も数量が多く、年700万トン前後である。
(2) 政府米
政府の買い上げる米は100万トン、国内消費量の1.5か月分である。気候変化による米不足の時に放出する緊急保管米になる。自主流通米が大きく値下がりした場合、政府が価格を安定する数量を買い上げる。100万トンの保管米の古い方から、家畜飼料用・工業原料用として、売れる価格まで値下げし、結果的には安く払い下げる。5年前の古米ならば、新米の半値以下である。
政府米の保管は、政府管理の深川倉庫の運営コストが高すぎるため廃止し、全国の民間倉庫で低温保管をしている。古いほど味は悪くなる。また、ミニマムアクセス米としての輸入米(年30~50万トン)も、民間倉庫が保管する。輸入米は古米同様、希望卸売り業者に競売によって販売しているが古いほど安い。
(3) 農家の直接販売
農家が消費者に通信販売したり、大都市の米穀店と契約栽培をして大量に販売したりする。農家は味の信用で売る。価格が高く、ブランド米以外は売れないのが現実である。保管と販売に手数とカネがかかるが、農家の負担になる。

政府備蓄米

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※ 政府は毎年25万トンをの新米を緊急備蓄米として買い入れて、超古米を含め100万トンを保管している。緊急災害時あるいは自主流通米の価格変動を小さくするため、備蓄米を買い増したり、買い入を中止したりたりする。しかし、実際にはj大きな価格変動はなく、政府には備蓄米の増減による価格操作は必要はなかった。古米・古古米などが残って積み上がり、5年を経過した超古米は、1kgを10 円の捨て値で売却することになる。



三笠フーズ事件(2008年8月)
大阪の米卸商三笠フーズが、政府(農林水産省)から1kg10円で仕入れた輸入事故米などを、事故米であって食品に不適当であることを隠して菓子製造会社・酒造会社に30~100円で売却した事件である。三笠フーズは建前上は自社で家畜飼料や工業原料に加工することになっていたが、加工せずに転売したことが違法とされた。
三笠フーズが転売した事故米は、有毒残留農薬・発ガン性のカビの含まれたベトナム・中国などからの輸入米である。長年、広範囲に事故米・古米のうちの非食料米を安く仕入れて転売してきたのは、三笠フーズが政府米管理者との癒着があった、特別のケースと考えられた。
しかし、非食料米(有毒な事故米、特に古い古米など)を政府から安く買い、食品関連会社などに転売して稼いでいたのは、三笠フーズに限らず、全国の米穀卸業者で日常的に行われていた。
農林水産省は古米・事故米を工業原料として使用することを想定していたが、プラスチックかセメントに混合する程度の用途しかなく、全体の1%程度であった。古米・事故米の大部分を家畜飼料用に使うことを予想したものの、米には栄養分が乏しく、身体が大型化し成長速度も速まった現在の家畜には不向きであった。農林水産省の古米売却価格は、安くなった。
日本の一般食用米は1kgで400円程度だが、非食用古米や事故米ならば100円以下であった。激安の古米を食用米として転売すると、三笠フーズのような古米卸売り業者の利益は大きかった。
農林水産省は食べられないほど悪臭のある古米を、食べるとは考えていなかった。しかし、古米を食べることのできるように加工する技術開発が進み、全国の外食産業が安い古米を積極的に買い求めた。
日本では米の消費量が減って家畜飼料用が増えたが、現実には家畜飼料用の古米が外食産業で大量に使われている。日本の米消費量は1960年に一人115kg、2011年に92kgとされている(食料需給表)が、外食や弁当などには食用米以外に、飼料用古米も使われているので、一人ずつの米消費量はそれほど減っていない。


 

古米を新米とする技術
コストを最優先する外食産業では、低価格の古米を使う。食事の米飯に、古米特有の黄ばみがあったり、味が悪かったりすると、商売が成立しない。古米を新米同様の状態にする最先端技術が用いられている。
(1)  新米と古米を混ぜる古典的方法。しかし、年々、新米の価格が低下しているので、古米とブレンドするメリットは小さい。また、廃棄あるいは工業用の特に安くてまずい古米を混ぜると、新米の風味が消えてしまって売れなくなる。
(2)  古米が古いほど、米自体に脂肪酸ができ、、悪臭の原因となるヘキサテールに変化する。古米専用精米機が業務用にも家庭用にも市販されていて、古米を再精米すると米粒の表面が削られて、悪臭が弱くなる。しかし、米粒が小さくなり、多少の黄ばみも残る。新米のようなおいしさも消える。
次亜塩素酸ナトリウムを使えば、黄ばんだ古米を新米のような白色にでき、古米特有の異臭を完全に除去できる。米粒が小さく、味もないが、外見上は
新米に近い米にすることができる。精米時にリン酸塩やプロピレングリコールをふりかけ、食味低下を防ぐ精米卸売り業者もある。
(3) 無味無臭の古米再精米に新米同様の味をつけるため、食用大豆油、食塩、砂糖などを加える。
(4) 炊飯時に植物性油脂、乳化剤、ビタミンCなどを加え、食味を回復する。



おにぎり

 

※ コンビニ業界のおにぎりは、味と具と価格の競争が激しい。
添加物を大量に摂取すれば健康被害があるかもしれないが、1日2食、おにぎり5~6個程度では無害である。添加物があるからて美味しく食べられるし、食中毒が減った。消費期限も長くなり、売れ残りの廃棄量も減った。
ただし、使用している米が食用米の古米を再生したものか、非食用のタダ同然の米を再生したものか、分からない。飼料用米・事故米(カビ)などの横流しの証拠はない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。