余桃之罪、もしくは電光朝露

関西フィル、日本センチュリー、京都市交響楽団、大阪フィルの定期会員です。アイドルやら声優やら。妄想8割、信憑性皆無。

関西フィルハーモニー管弦楽団 第220回定期演奏会 [高貴なる熱情]

2010年05月27日 | 関西フィルハーモニー管弦楽団
10.5.27(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
関西フィルハーモニー管弦楽団 第220回定期演奏会 [高貴なる熱情]
指揮/尾高忠明
ピアノ/仲道郁代
コンマス/ギオルギ・バブアゼ(関西フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)
曲目:
ワーグナー/歌劇「リエンツィ」序曲
シューマン/ピアノ協奏曲イ短調op.54
ウォルトン/交響曲第1番変ロ短調

メインが知名度に劣るプログラムですが8割に届くぐらいは入ってる感じ。
ソリストの力かな。

信じられぬことだが、長らくトロンボーンの首席を張ってきた石川さんが先月の定期直後に脳出血のため49歳の若さで亡くなられた。新入団の若手に首席を譲って、豊かな経験を次の世代に受け渡そうとし始めた矢先の出来事で、楽団の損失と楽員の喪失感は極めて大きい。
プログラムには1ページを使って追悼の言葉とたくさんの思い出の写真。

プレトーク。
協奏曲がシューマンならばタンホイザーではなくリエンツィ、前回共演したときに関西フィルのトランペットが好印象だったし、今回は4本用意出来るというのでリエンツィ。ワーグナーの毒という言葉があるが、リエンツィは若書きなのでそれほど毒が強くない。関西フィルの飯守泰次郎先生はワーグナーの毒にのめり込んでる方なのでおわかりいただけると思う。仲道さんとは久々の共演。素晴らしい曲なので期待してて欲しい。
ウォルトンはイギリスで初めて出会った作品、とにかく難しいがオケのやる気もすごいし頑張りたい。
(関西フィルに一言)4つのオケを一つにしようとかいろいろありますが、とんでもない話。それぞれ特色のあるオーケストラなわけなので。何かご意見のある方はあとで来て下さい。僕が掛け合いますから。

リエンツィ。
飯守先生&関西フィルのワーグナーを聞き慣れていると、曲の違い以前に飯守先生がどれだけワーグナーに入れ込んでるのかを感じる。尾高さんが曲の変化をざっくりと捉えて演奏しているように聴こえちゃうもの。飯守先生ならこういう序曲でももっと微細な起伏を随所にしかけて、心理の変化を追求する。単なるオーケストラピースに終わらない。楽しく大きく盛り上がった演奏だったけど、飯守先生のワーグナーが聴きたくなった。

シューマン。
高音はなかなか華麗、低音になるにつれて豪快に叩くだけで音が潰れて聴こえる。始終そういう感じで聴くのが辛かった。協奏曲向きの人ではないんでしょう。リサイタルなどに家人が足を運びますがサロンマナーも含めて大変素敵な時間が過ごせるそうだし・・・。

ウォルトン。
プレトークでは関西フィルとしては2度目、尾高さんが関西でやるのも2度目ということでしたが、おぢさんはイギリス音楽マニアなのでそのどちらにも当然足を運んでいる。関西フィルは2002年の第152回定期で湯浅さんと(その前の回がフルネ唯一の関フィル客演だった)、アンサンブルがまとまりきらないところがあったが面白い演奏だった。尾高さんは1999年に大フィルの第324回定期。武満の鳥は星形の庭に降りるとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(独奏/清水和音)という掴み所のないプログラム、ウォルトンでは客の反応も鈍くて哀しかった。

関西フィルハーモニー管弦楽団 - 5月27日開催、「第220回定期演奏会」情報!
http://www.kansaiphil.jp/modules/news/index.php?page=article&storyid=81

5月27日開催の第220回定期演奏会「英国が生んだ大交響曲!激情渦巻く45分!」に向けて、この公演を指揮するマエストロ・尾高忠明氏からメッセージが届きました。

【マエストロ・尾高忠明氏からのメッセージ】
 『僕は釣りが大好きだ。だからウォルトンと言えば「釣魚大全」のアイザック・ウォルトンだった。でも、英国で仕事を始めてウォルトンを演奏する機会が増えてきた。
 はじめて、ウォルトンの交響曲第1番を指揮したのはプロムスでだった。超難曲だがめちゃくちゃに面白い。エキサイティングな所、綺麗なところ、映画音楽みたいな所……。しかし、本当に圧倒的に難しい。日本のあるオーケストラで練習を始めた時に、第2バイオリンが倍の遅いテンポで始めた時にはびっくりしたが、それも良い思い出だ。その初めての演奏はBBCミュージックマガジンの付録CDになった。
 今でも、先輩の英国人指揮者から「何日練習したの?」「怖かっただろ!」などのお言葉を戴く。その日は何か総てがよい方向に向かってくれた。
 ここまで、素晴らしい演奏を続けている関西フィルとのウォルトン。絶対に総て良い方向に向かうと信じている。
 久しぶりの仲道さんとの共演も楽しみだ。』


この文中のCD(BBCMM123)には第1楽章の壮大な終結に思わず拍手が起こる瞬間が記録されていて面白い。カップリングになっているのは武満のフロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイムのイギリス初演(A・デイヴィス指揮BBCso)。これの微妙な客の反応も楽しい。
弦楽器とホルンのざわめきの中から聴こえるオーボエの呼び声から始まる第1楽章、これが書かれたのは1934年~1935年。ヒトラーの政権奪取・日本の国際連盟脱退が1933年だから世界の空気というのは想像できますわな。石川さんを喪った金管のテンションが異常なぐらいに暗く熱く・・・。第2楽章はPresto con malizia(プレスト・コン・マリーツィア)という珍しい発想記号、「悪意を持って」の意味らしい。そろそろサッカーワールドカップですけど、日本でしか使われていないサッカー用語に「マリーシア」というものがありますね。反則ギリギリのラフプレーのようなものを指すやつ。あれと言葉は同じです。意味はもう少し幅広いようですが。そんな発想記号ですから、激しい上下行に急変するデュナーミクとリズム、強烈な全休止で終結と見せかけて再発進して短いコーダが付け加えられるといった有様で大変難しい。大フィルは御大晩年の時期でとにかく鈍重だったし、前回の関フィルも金管キズ多しだったが今回は違った。尾高さんの巧みな整理と導きの賜物。
第3楽章はショスタコーヴィチの緩徐楽章に似た味わいの音楽、静謐な祈りと苦悩の悶えが交錯して第1楽章同様、書かれた時代の雰囲気が伝わる。フルートが聴きもの。演奏も良かった。終楽章は合唱のいない合唱曲のような雄大な賛歌。波のように寄せては返すオケのうねりが場内全体を揺らして充実の終結だった。

大成功といっていい。

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