月夜の記憶

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バジリスク~甲賀忍法帖~第2巻

2011-02-17 | 感想
バジリスク、第2巻の感想です。


甲賀卍谷で弦之介の安否を気遣う甲賀の忍者達。陽炎は弦之介と朧の祝言に反対のようです。伊賀に対する恨みもあるのでしょう。
左衛門は妹のお胡亥を物見として伊賀に向かわせたとの事。

その折、伊賀から甲賀の里に忍者達が足を踏み入れます。天膳は幼い頃甲賀に来た事があると語ります。それがなんと170年、180年前だとか・・・。天膳には謎があるようですね。
凶気の5人の気配にいち早く気付いたのは豹馬。

甲賀の地で、伊賀と甲賀の忍者達が血塗られた戦いを演じる事となります。人別帖に名前を書かれるだけあって、甲賀に乗り込んだ伊賀者達は強い。小四郎の鎌いたち、蛍火の蝶・・・甲賀の忍達はまさに惨殺されます。
不戦の約定が解かれた事を未だに知らない甲賀の忍者達から見れば、伊賀者たちが戦を仕掛けて来た事がにわかには信じがたい事だったでしょう。

対峙する伊賀と甲賀の精鋭達。弦之介が伊賀の里で人質同然となっている事もあり、豹馬たちはうかつに手が出せません。


伊賀へ向かっていたお胡亥も、甲賀の精鋭達の帰りに出くわして捕らえられてしまいます。お胡亥は朱絹や陽炎とはまた違ったタイプの色っぽさを持っている女性ですね。でもまだ大人ではなく少女の面影を残しているようにも見えます。そう言う意味では蛍火、朧はまだ少女と言えるかも知れません。そんな女性達もこの戦いに巻き込まれていくのはとても辛いものがあります・・・。


甲賀では伊賀者たちが襲って来た事についての話し合いが持たれます。豹馬、左衛門はやはり頭が切れるようです。不戦の約定が解かれたのかも知れない・・・と考えが及びます。
思えば、不戦の約定が解かれた事を知っているのはまだ伊賀者のみ。ここまで9対6と人数に開きが出たのも、先制攻撃に成功したからと言えそうです。


そして刑部と左衛門の二人を駿府への道、東海道へと向かわせると・・・そこには、愛する蛍火の事を想いつつ道を駆ける夜叉丸の姿がありました。夜叉丸は涙を浮かべています。自分に課せられた任務を果たせなかった事に対する責任感からでしょう。あれだけの術を持つ立派な忍者であっても、夜叉丸はまだ少年なんです・・・。


夜叉丸を待ち伏せる刑部と左衛門。天膳の術の秘密を夜叉丸の口から少し聞く事も出来ましたが、それ以上に大事なのは不戦の約定が解かれた事をとうとう甲賀者も知った事ですね。
そして刑部の手によって夜叉丸も命を落とします。絶命の瞬間・・・夜叉丸は蛍火の事を想ったでしょうか・・・。描かれていませんでしたが、きっと想ったでしょうね・・・。
これで伊賀は8人、甲賀は6人となります。

伊賀者と甲賀者がお互い策略を張り巡らせる中、伊賀の里で雨の中夜叉丸の無事を想う蛍火の姿が描かれています。その表情は忍者ではなく、少女でした・・・。
左衛門は夜叉丸に姿を変えて・・・伊賀へ乗り込みます。弦之介と妹のお胡亥の身を案じながら。蛍火が夜叉丸を想う気持ちと、左衛門がお胡亥を思う気持ち、そんなに違いはないはずです。でも争わないといけない。悲しみの渦に巻き込まれていく忍者達。

左衛門が伊賀で真っ先に出会ったのはその蛍火でした。蛍火は疑う事もなく夜叉丸の姿をした左衛門に抱きつきます。
「・・・よかった、ご無事で・・・」恋する少女の可愛らしい顔、そして将監にとどめをいれた事を笑顔で伝える蛍火の顔。少女でありながら忍びでもある、そんな蛍火の背負った宿命をあらわしていた場面だと思いました。


伊賀に捕らわれたお胡亥が単身戦っている時、天膳はとうとう朧に真実を伝えます。
そしてお胡亥が蝋斎に敗北した直後、兄、左衛門はその変わり果てた姿を目にするのです。まだかすかに息のあるお胡亥と手を取り最後のやり取りをする左衛門は愛する妹の手を強く握り締めます・・・。お胡亥の最期の思い「あにさま・・・」はその手を通じて左衛門に届きました。
その時の左衛門の悲しみは言い知れないものがあったと思います。でも左衛門は感情に揺れる事なく自らに課せられた任務を果たそうとします。左衛門もまた立派な忍びでした。


天膳から真実を聞いた朧、それでも甲賀と戦う事は考えられません。弦之介と結ばれる事を信じているからでしょう。捕らわれの身となっていると聞いたお胡亥を解き放とうと左衛門達の前に現れます。
そこで朧の瞳術が左衛門の忍術を解いてしまいます。甲賀者に囲まれた左衛門、とっさに投げた刃は朧めがけて飛んでいきます。左衛門は朧を狙ったのでしょうか?妹が伊賀者に殺されたという恨みが、頭領である朧に向けられたのでしょうか・・・。
その刃は天膳が身をもって防ぎ、小四郎に巻物を拾うよう指示します。ですが、そこで小四郎は巻物ではなく朧の身体を守る事を優先しました。
「姫様!」と朧を受け止め、そしてすぐに手を離します。小四郎と朧の関係もまた・・・何か特別な思いが隠されているようです。


巻物は刑部の手に渡り、その内容は弦之介の知る所となります。
朧達が駆けつけたその眼前で、弦之介は自らの瞳術を使い自らを狙って来た伊賀者達を返り討ちにするのです。
天膳が口にする「この場で弦之介を討てる見込みがある者はただ一人・・・」それは小四郎の事でした。
天膳が言葉にする前に弦之介の前に単身立ちはだかる小四郎。
天膳は続けます
「朧様!弦之介の目を見るのです!」
朧は弦之介と小四郎の間に割って入ります。でもそれは、弦之介を倒すためではありませんでした・・・小四郎を止めるためでした・・・。
そして弦之介に対して術を仕掛けようとした小四郎は、朧の瞳を見てしまい・・・自らの術で自らを傷付けてしまう・・・。

ここで僕が気になったのは、小四郎はとっさの時には朧の事を「姫様」と呼びますが、普段は「朧様」と呼んでいる事です。小四郎が朧に対して持っている想いはどういう物なのでしょう・・・。


弦之介達は伊賀の里を去っていきます。
見送る朧は泣き崩れます。
「弦之介さまが・・・行っておしまいなされた・・・」


甲賀と戦う決意を朧に求める天膳達。しかし朧の決断は・・・伊賀の秘薬、七夜盲で自らの目を塞ぐ事でした。
それは・・・甲賀とは・・・弦之介とは戦えないと言う朧の決断だったのでしょうか・・・。



人別帖に残された人数は、甲賀5人、伊賀7人。

第三巻へ続きます。

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