目指せジェネラリスト(牛の獣医師)DIY

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寄生虫検査における簡易迅速ショ糖浮遊法によるオーシスト定量と臨床的有用性 4

2020-04-28 14:49:23 | 診療
簡易法を用いたコクシジウム対策事例を紹介します。

はじめに、対象農家はコクシジウム症の予防としてバイコックスをやっていまいた。

が、が!、がっ!です。やってるのにちょこちょこ発生するという話をうけました。

「だからもうバイコックスやめよとう思うんだよね」

それならやめてもいいけど、コクシジウム虫卵のOPG推移を見せてくれないだろうかと持ち掛けました。

管理方法は

単房で分娩後、母子一緒に自然哺乳で1ケ月程度で10ペアの親子の群編成し管理していました。

そこで、群編成後3頭のOPG推移を簡易法でモニタリングしました。



結果は、



OPGのピークは30日前後と判断しました。

そこで、農家さんにコクシジウムは免疫を獲得後に駆虫すると発症しないんだ、予防効果抜群なんだと説得し理解をえました。(再感染抵抗性の獲得)

半信半疑な農家さんに、次は群編成後20日にトルトラズリル(TZ)を投与する群としない群で比較してみましょう。これで効果がわかるはず!と



次の結果は、



TZを投与した群が下痢せずに発育もよかったことがわかりました。日増体量の単位は㎏/dayです。

ちょっときつめの下痢となるzuerniiとbovisは下部消化管に寄生します。なので血便となります。
しかし、alabamensisは小腸寄生で下痢することもありますが、消化不良となり発育不良となると考えられています。

なのでこの農家では、下痢の予防だけでなく、発育にも影響したのだろう。

今後は継続して群編成後20日目でTZを投与してくれています。

試験のデータ


ちなみに、サンプルを提供してくれた、元バイエルのOカモトさんありがとう。

※画像やデータは著作物にあたらないそうで転用してもいいみたい、でもその場合は一言メッセージなど連絡もらえると嬉しいです。

寄生虫検査における簡易迅速ショ糖浮遊法によるオーシスト定量と臨床的有用性 3

2020-04-27 21:56:21 | 診療
コロナウイルスの市中感染が減ってきていますが、芸能人の訃報をきいてショックが隠せません。コロナで亡くなられた方皆様にご冥福をお祈り申し上げます。

うつらない、うつさないですね。とにかく辛抱の時、少しでも自分が世の中に何か役に立つことやっていきたいです。

という気持ちを持って始めます。

「寄生虫検査における簡易迅速ショ糖浮遊法によるオーシスト定量と臨床的有用性 1」では、

クリプトスポリジウム症を診断するには、IC法と同じような検出感度とするなら100倍で10視野の鏡検で可能だといいました。

「寄生虫検査における簡易迅速ショ糖浮遊法によるオーシスト定量と臨床的有用性 2」では、

その検査のために糞便を10㎎にするためには、一度定量して感覚的にやってもそこそこ10㎎前後にできるということでした。

次は、コクシジウム症を診断するには!ではありません。

コクシジウム症は月齢と血便などの症状により診断的治療で終わることが多く(そんなことはない!ちゃんと検査してるぞって声もあると思いますが)

実際のところ顕微鏡検査されていないことが多いと思います。今回は診断的治療にではなく、

コクシジウム症を予防するには!で用います。

はじめに、コクシジウム症について説明します。
1000倍の写真です。クリプトスポリジウム虫卵の大きさが5μmに対して、コクシジウム虫卵は20μm~40μm(種類で違う)でみつけやすいです。100倍で検査して素人でもすぐにわかります。

丸いのがE.zuerniiで楕円形がE.alabamensisだと思います。大きさとミクロパイルという蓋の有無で簡易判断しています。

1.感染後、虫卵を排出するまでの期間をプレパテントピリオド
2.感染後、虫卵を排出している期間をパテントピリオド
その2の期間で下痢をしますが、時折2の期間ではなく、1の期間の後半から下痢する子もいます。

予防するにはどこで駆虫薬を投与すればいいのか考えてみましょう!
縦軸に糞中の虫卵の数、横軸に生まれてからの日齢です。

感染した後、じょじょに虫卵が増えます。赤い色の線を越えたら下痢、越えなければセーフ
同じ環境でも発症する子いれば、しない子もいます。でも、発症したら発育不良になったり、下手したら死亡や淘汰されることもあるので予防が大事ですね。
①、②、③どこで投与するがの一番いいのだろうか。答えは②です。

①では、まだ十分な免疫が獲得できていないため、のちのち発症するリスクがあります。
③では、発症していることがあり、予防というより治療になってしまします。

免疫を獲得し、まだ発症していない期間に投与することです。かっこよくいうと再感染抵抗性の獲得!!です。

その期間をみつけるにはコクシジウム虫卵の排出量の推移を把握しなければいけません。

通常はショ糖遠心浮遊法(Oリング法などもあり)を用いて定量します。

そこで簡易法を使ったらいいのでは?ということです。前置き長かったですね。

では、本題に、


結果は、

虫卵の排出ピークを同じようにみつけることができました。

というか、ショ糖遠心浮遊法の方が少なくでているので、実はロスがおおいのかもしれません。

ちなみに、ショ糖よりもロスがやや少ないという塩類を使う方法もありますが、結晶化により鏡検が難しくなるという報告がありますので基本はショ糖を使った方がいいと思います。塩類使ったことないのでどういう状況か説明できませんが。

今日はここまで、次回は実際に対策の効果を紹介したいと思います。

※画像やデータは著作物にあたらないそうで転用してもいいみたい、でもその場合は一言メッセージなど連絡もらえると嬉しいです。

寄生虫検査における簡易迅速ショ糖浮遊法によるオーシスト定量と臨床的有用性 1

2020-04-20 20:32:24 | 診療
なんだかわかりにくいタイトルですねー、顕微鏡で寄生虫の卵をみつけるいい方法はこれだ!って感じです。

コロナウイルスの影響もあって、これまでやってきたことをまとめて、科学的といはいえない部分も多々ありますが、情報提供になればと思い腰を上げました。

家畜診療(主に牛、馬、山羊、羊)を13年やってきました。(現在は牛の繁殖専門に特化してやっていますが)

診療していて得意不得意や好き嫌いが獣医師に少なからずあると思います。

苦手なところはやりたくない、また、めんどくさいなどの後ろ向きな気持ちが出てくるのではと思います。

まじめな人は、そういう状況でもルーチンとされていることをこなしていくものです。

自分みたいなめんどくさがりな人も少なくないはずです。

子牛の下痢の診断で、寄生虫検査はやっかいなやつの一つで、寄生虫の有無だけではなく、集卵による定量的診断いわゆる1g中に何個虫卵があるかというOPGやEPGが大事だと言われています(今度そのデータものせますので)

現場ではこれがめんどくさくってやってられんという意見が多数を占めています。いや実はそんな意見はないけども実際にルーチンにやっている人をほぼ見たことがないっ!という個人的見解です。

これをうけて実際に診療したカルテをひっくり返すと、3ケ月齢以下の子牛の下痢において、腸炎の治療カルテ件数における寄生虫検査の実施率は

な、なんと6.5%(3391/52328)でした。

俺もやってないし、みんなもやってないんだ、ほっ。てちょっとなりました。でも、これではだめですね。なんでこんなに低いのかというと、方法の煩雑さが一つあると思います。

遠心浮遊法という方法やOリング法というのがありますが、糞便を処理して遠心分離がまー、めんどくさいんですよ。

顕微鏡みたらすぐ、おぉ、虫卵みーっけた!で終わるのですが。(クリプトスポリジウムはちょっと熟練が必要)

そこで、簡単にできる方法はこれだと思っている自分がやっている簡易迅速ショ糖浮遊法(以下簡易法とでもいいましょ。)を評価して報告してみました。



クリプトスポリジウムの診断において、簡易法とめんどくさがりが大好きな方法のイムノクロマト法(IC法)を比較しました。IC法とはこちらです。



これはほんと簡単でいいんですが、ちょっと高い、高いというのがネックですが、使いやすく簡便でほんとにいい商品です。ちなみにロタやコロナや大腸菌の接着因子も検出できるものもあります。でもこれも追加でみると更に高い、高いんです。

話はそれましたが、結果は



推定OPG500以下でIC法は陰性となり、推定OPG4000以上で陽性を示したことろから、推定OPGによるIC法の検出感度を10³OPG以上としました。この結果はChartierらの報告と一致しました。というかIC法より俺の顕微鏡を見る力が上なのかっという驚きと優越感にひたりました。この結果からIC法と同程度の検出感度を得るには100倍で10視野みるだけでいいということになります!1分もかかりませーん。(先ほども言いましたが、クリプトスポリジウム虫卵は5μm程度の大きさなので100倍でみるには熟練が少し必要です。)

余談で見え方を写真にのせますね。
顕微鏡の1000倍のズームから100倍まで写真でいきますねー。100倍は写真でみてもこんな感じに見えるとは説明しずらいですね。ピンクに輝くんですよね。酵母とにてますが決定的に見え方はことなります。説明できん~。まずは1000倍のデジタルズーム、オーシストの中にスポロゾイトが4つみえますねー。コクシジウムと違ってスポロシストはありません。

次は1000倍

次は400倍

次は100倍(画像に→で示しています)

だめだ、これではうまく説明できません。ここに関しては上司や大学などで習ってください。

次に、クリプトスポリジウム症発生農場で3頭の子牛をこの方法をもって下痢発症前または当日から推定OPG推移をモニタリングをしてみました。横軸に生後日数の日齢、縦軸に推定OPG(虫卵は指数関数的な増減をしますので指数表示しています)



赤、緑、青の3頭とも下痢している間は、推定OPGが10³個以上でした。簡易法は100倍10視野の鏡検で診断方法として有用であると示されたと思います。

続きありますが、次回!

※画像やデータは著作物にあたらないそうで転用してもいいみたい、でもその場合は一言メッセージなど連絡もらえると嬉しいです。

体外受精卵の外科移植

2019-04-05 15:42:04 | 診療
久しぶりの投稿です。

まだ、投稿3回目なので練習として

人工授精三回以上実施したが受胎しない牛、子宮や卵巣に異常がなく、いわゆるリピートブリーダーに対してのアプローチは

〇シダーシンク
〇子宮内薬剤注入
〇子宮洗浄
〇受精卵移植
〇追い移植(人工授精後に受精卵移植)

などを検討します。



今回紹介する牛は

三回以上人工授精したが受胎しない牛。

正確に言うと人工授精が上手く出来ない牛なので、リピートブリーダーではないですね!(最初の導入要らないな)

全国各地の授精師の猛者なら俺こそできるといわれるかもしれません。

頸管拡張棒やYTガンなどを使用しましたが、無理でした。恥ずかしいばかりです。

この間、K畜事業団の移植ベテランのK先生と一緒に仕事をした時に、「受精卵移植で今まで通せなかった牛はいない」と言われ自分の未熟さを痛感させられました。

そこで考えた方法が

〇精液ストロー10本分を頸管にかける
〇受精卵外科移植

前者は以前受胎させた経験あり勧めましが、いらない精液がたくさんないとのことで却下

後者の受精卵外科移植を実施しました。

術前の準備は四変と同じで割愛
黄体側の右ケン部の尾側を切開
子宮を術創に引き出し



子宮角先端を鈍性に穿孔しました
ストローを入れて受精卵を移植



結果は、な、な、なんと!

胚死滅でした。

発情から35日で3~5ミリ程度の胎子様構造物が確認できましたが、妊娠していれば15ミリ程度の胎子が確認でき心拍も見えるのですが、7日後再診しても変わらずでした。

めちゃくちゃ残念です。

コクシジウム症

2018-09-21 15:21:00 | 診療
ブログ始めたばかりでテスト投稿

およそ1ヶ月齢のF1子牛の緑色下痢(血液なし)

生後にハッチで飼養されていたみたい

寄生虫検査実施しました。

形態は小さめ、卵型、ミクロパイルなし

E.alabamensisと思われます。

数ほおよそ10000/gありました。

イムノクロマトでロタウイルス陰性

コクシジウム症という診断

トルトラズリル製剤投与!