こんにちは。
ここ最近、何故か貿易事務の仕事まで処理していた法務屋です。
『難しそうなことはとりあえずアイツだ』判断に、もはや笑うしかない今日この頃です。
ある種、仕事なんて属人化し易いもので、それこそ『上位から20%の営業マンが売上げの80%を上げる』や『2割のサイト訪問者が総訪問者のうち、8割のアクセスを占めている』というような2:8の法則(パレートの法則)的に『2割の人間が全ての仕事の内の8割をやっているんだ』と自分に言い聞かせて誤魔化す毎日です。
と言いながらも、総務の一グループとして法務が存在すれば、周辺業務(人事や経理)を手伝うことは少なくないと思うのですが、余り関与しないセクションの仕事をやってみると案外新鮮で楽しかったりします。
法務と貿易事務の方との絡みといえば、インコタームズや支払方法(「T/T(電信送金)で?」とか…)、保険関係、商流の調査ぐらいが主だと思いますし。
積極的に新しい世界に触れていくのもおもしろいものです。
さて、今日は90年代の半ばぐらいから流行った『カンパニー制』についてのお話です。
私のイメージとしては、カンパニー制はどばっと広がって、ささーっと引いていき、現在ではあちらこちらでちらほらと残存しているという感覚があります。
カンパニー制を導入した企業はお世辞にも成功したとは言いえないものが多いようで、その多くは、最終的に弱体化した本社機能の復権とそれに伴うグループの統率力回復に辟易しているという実態があります。
失敗や予想外こそ宝の山。消極的な部分を研究すると、照り返しのごとく、採るべき道も見え易くなります。
『事業部制』と『カンパニー制』は非常に良く似ており、中には完全に同一視していらっしゃる方も居たのですが、一般的にこの両者の違いは『権限委譲のレベルの違い』にあると言われており、下表の様に捉えられています。
ちなみに上記区別を理解するための予備知識として補足も付け足しています。
どちらも本社の下に事業ごとに編成された組織を配置するという点では変わりなく、社内に事業ごとの擬似的な会社を作り上げ、権限委譲することで市場のスピードに対応させようという意図が読み取れます。
事業部ごとに綺麗に意思決定や業務執行から最小単位の実務までズバっとぶった切ると、細分化されたために意思決定が早くなり、権限委譲してしまえば権利責任も見えやすくなります。
そして、それぞれに独立して稼動する事業が利益を最大化してくれれば、その総和であるグループの利益も自ずと最大化されるという仕組みです。
ヒト、モノ、カネを事業ごとに分配し、大幅な権限委譲を行うカンパニー制は、人事制度などもカンパニーごとに違うものを採用するなど、完全にその事業にあわせた形態をとることになります。
つまり、本社機能とは別個の管理セクションを持つことになります。
この辺りから考えると、単なる事業部制は管理セクションを各事業部で共有していることが多いので事業部制とカンパニー制の差異となっています。
また、BS(『Balance Sheet』貸借対照表。)に関する部分を委譲している・いないということは、借入れ等つまり資金調達に関する一連の権限や、事業用資産の取得や売却といった権限の委譲の有る無しを意味するので、カンパニー制はまさしく独立採算制という言葉がぴったりと当てはまります。
結果、その事業の範囲内において、長となるものは擬似的な社長に他ならないので、本社機能によるサポートを得ることができるという可能性を残しつつも独立採算にできるというその特性を活かして事業部長の育成に利用されたりもします。
ここからが本題ですが、グループを統括する最高責任者、つまり社長(ここではあえて職制上の役職名を使用します。)の意図するところはあくまでもグループの利益であるので、それぞれの事業間のシナジーを重要視するはずです。
企業会計が連結決算主体にシフトして依頼の社会的要請という背景も無視できないでしょう。
しかしながら個々別々に完全に権限委譲された事業部は、事業内においてのみナレッジ(データ、情報、ノウハウ、知恵など組織の知的資産全体)が蓄積され、独立採算による先鋭化が進めば進むほど、別事業部との間の色合いがはっきりし始め、比例して各事業間との共通の部分が減少し、それぞれの市場という局地に適応し始めます。
ここではっきりと気付く事になるのですが、カンパニー化が進むということは、多くの経営者や数々のビジネス書が唱えるジナジー効果(相乗効果)を求めるための下地とは間逆の道に進むことに他なりません。
相乗効果の種となるために共有されるべきナレッジが、局地化のためにいつしか他事業にとっては利用価値のない知的資産に先鋭化してしまうのですが、ここの間を埋める、つまりこれらを統合してグループ利益を最大化する宿命を本社機能が帯びることになります。
本社機能にとって、「間を埋める」作業は正直なところ簡単な話ではありません。
まず、先鋭化・専門化した情報を分解して利用可能な要素を取り出す作業を、一事業を恒常的に受け持っていない本社機能が行うことは非常に困難です。
そもそも、先鋭化が進むほど、どっぷりと当該事業に腰を浸していない本社機能は、各事業への影響力が弱まっていくのは容易に想像の付くところです。
単に影響力が弱くなるだけではなく、各事業部が本社機能の働きに対し懐疑的になり始めると情報さえ拾えるかどうかわからなくなります。
一旦、完全に分権化してしまうと、技術革新等により事業事態が陳腐化し始めても、意思決定者の牽引無しに本社機能の再介入による再編は非常に難しくなり、必要あるレベルの権限委譲を行った後も、本社機能は常時密接な関係構築が必須になります。
ここで重要な視点として、「本社機能がその意義を全うするためには、各事業部に対し価値を提供することである」という見解があります。
確かに私自身「自分以外はお客様」という考え方があり、管理部として他者全てにサービスを提供するという意識はありますが、こうなると本社機能は社内において組織的なコンサルティング行っているだけの話で、そもそも合理的な経営ノウハウを提供できるだけの高度な知識とスキルを持ったものを容易に獲得することが可能なのか?という疑問が残ります。
それこそ本当に経営コンサルタントに任せてしまえば良いと言えなくもなさそうです。
こう考えると、よくある事業部制を採る企業は、一般的な形として本社機能が全事業の管理を受け持つことにより、それぞれの事業部の活動を本社機能の管理の枠に止めるコントロールが一応可能であり
、影響力と共にその意義は残り続けることになります。
これにより、現在、残存するカンパニー制主体の企業では、上記の事業部制のように分散した各機能を再度集約しているものも多く見られるのであろうと判断します。
事業活動と資本が各事業間で別個に動き、多角経営前提で統率も難しくなるカンパニー制は、『選択と集中』を要する現在においては経営資源を分散するというその根本的な前提から非効率なものと見ることができます。
最近の潮流として『いくつかのスモールビジネスを持つ』ということが効率的であると言われますが、これは、選択で隙間を狙い、いくつかの事業の規模を拡大し過ぎないことでコストを削り投資に集中するというものです。
ある種、管理の手を伸ばし易い一定の規模の事業を、当該規模において最小化されたコストと最大化された利益で個々の事業の運営するという形の是非は、カンパニー制から演繹的に学ぶところも多いように感じます。
本来、一つの事業の競争力という点では、カンパニー制は一点集中ではなく多角経営を前提としているので、総体的な企業価値という観点からは非効率です。
しかし、どのような形であってもメリット・デメリットは確実に存在するのですから、しっかりとデメリットも頭に入れた上で意思決定を行わなければ、とてもバランスが取れるものではありません。
本当に色々なところから学べるものですねぇ。(しみじみ)
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『法務屋経営大学院』
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管理人:法務屋(mailto:legal-affairs-shop@hotmail.co.jp)
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